FEATURES
レポート:国会議員に同性婚の法制化を訴える院内集会「第6回マリフォー国会」
「結婚の自由をすべての人に」訴訟の東京地裁判決と札幌高裁判決を受けて3月22日、国会議員に同性婚の法制化を訴える院内集会「第6回マリフォー国会」が開催されました
3月14日の「結婚の自由をすべての人に」訴訟の東京二次訴訟地裁判決と札幌高裁判決を受け、3月22日(金)11:00から衆議院議員第一会館大会議室で、一日も早く同性婚の法制化を!と国会議員のみなさんに求める院内集会「第6回マリフォー国会」が開催されました。
この日、会場は満席で、記者も多数。熱気が感じられました。
左側の原告のみなさんが並んでいる席には、東京や札幌の原告の方たちだけでなく、仙台で家事審判を申し立てた小浜さんや、各地で「結婚の平等にYES!」キャンペーンに賛同して活動しているさっぽろレインボープライドの柳谷さん、金沢レインボープライドのダイアナさん&直海さん、松岡宗嗣さんのお母様、虹色ダイバーシティの村木さん、九州レインボープライドののぶゑさんなど、見知った方たちがたくさん来られていて、胸が熱くなるものがありました。
はじめに「Marriage For All Japan」代表の松中権さんが挨拶し、「札幌高裁の「何より同性間の婚姻に定めることは、国民に~(中略)早急に真摯な議論と対応をすることが望まれる望まれる」との判決文に勇気をもらいました。先日の参院の予算委で岸田首相は「引き続き、この判断も注視してまいりたい」と発言されましたが、本当にこのままでいいのでしょうか。時はすでに来ているのではないでしょうか。心の中でYES!と思う方も増えていると思うのですが、可視化されていないのでは。もっとみんなで「結婚の平等にYES!」と言っていきましょう」と語りました。
東京二次訴訟弁護団の沢崎弁護士から、東京二次訴訟地裁判決についての解説が行なわれました。
ポイントとして、
・24条2項に違反する状態だと認定
・現状は憲法上許容されないと明確に指摘
・判決は国会での法制化を強く期待している
といったことが説明されました。
そして、東京一次訴訟の高裁での審理は4月26日に結審し、今年の夏か秋に判決が出る見込みで、かなり踏み込んだ判決になることが期待されると語られました(期待しましょう)
二時訴訟の原告の方がコメントしました。
山縣真矢さんは、「気持ちとしては、期待もしていたのでちょっと残念。消化不良なところが残った。しかし、同じ日に札幌高裁で判決が出て、24条1項でも違憲と言われたのには感動した。中継を見ながら一緒に涙した。家に帰って、判決文を読んで、これが欲しかった、これを待っていたと思いました。一方、首相は相変わらず注視してまいるとの発言でとても残念。我々は待っていられません。早く同性婚を実現させてください」と語りました。
ケイさんは、「私はカミングアウトしていませんが、人生の伴侶としか言いようのないパートナーと暮らしています。マジョリティの価値観に合わせて嘘をつき続けることに労力を注ぐ偽りの人生を送ってきましたが、これからの世代に私のような思いをしてほしくありません。制度ができることによって社会も変わると思います。時間は有限です。パートナーが同性であっても尊厳を持って生きられるよう、婚姻平等を一日も早く実現してください」と語りました。
北海道弁護団の皆川洋美弁護士が、札幌高裁の控訴審判決について解説しました。
裁判長から2年という計画審理の提案がなされ、期限が守られ、早く判決が出たということ、それから、14条1項(法の下の平等)だけでなく、24条1項(自由な結びつきとしての婚姻)についても、同性間の婚姻も異性婚と同程度に保障しているとの判断が出たことなどを説明し、「愛のある判決だと思った」「言い渡しの時に、難しい言葉を使わず、わかりやすく言ってくれた」「「人として、同じく人である同性パートナーを愛し~」というのは口頭弁論での原告の言葉を採用してくれた」と語りました。
こちらやこちらのTVでも報道されているように、北海道訴訟のみなさんは最高裁に上告する方針です。「闘いの場は最高裁に」移ります。
北海道訴訟の原告(控訴人)の中谷さんは、「3人の裁判官は私たちの訴えに耳を傾け、書面に目を通してくれた。5年間訴訟を闘い続けるのは大変だったけど、尊重されていると感じました。国会はどうでしょうか。何年も同じことを言いつづけています。自分の人生を先延ばしにされ、軽んじられているように感じます。私たちの願いを無視せず、きちんと議論してください」と訴えました。
慶應義塾大の駒村圭吾教授(憲法学)が登壇しました。
駒村氏は、今回の判決から何を読み取るのかということについて、専門的・テクニカルな解説ではなく、「国会としてこれらの判決をどう受け止めるか」に絞って話してくださいました。
・これまでの全ての判決に共通する大切なことは、「同性カップルが深刻な社会的不利益を被っていると言っている」「国会が何もしなくていいと言っている判決は一つもない」ということ
・「違憲判決」と「違憲状態」はさしたる違いはない、実刑判決と執行猶予判決のようなおかしな使い分けがなされるのは問題がある
・東京二次の地裁判決では、「婚姻と全く同一の制度を認めるべきことへの社会的承認が得られるに至ってない」ことの論拠として、世論調査では70%が支持しているのに「少なからず反対もある」という謎のデータ参照がなされている。重要なのは、婚姻は規範的に正当な人間関係を公認するもので、社会的承認とは別次元でむしろ対抗的であるということ
・LGBT理解増進法は社会的承認が過渡期であることの証左だとの主張があるが、昨年10月の最高裁判決はこれを社会的承認が進んでいることの証拠としている、制度がないから社会が未成熟なのだ、理解増進法があり続けると「まだ社会に承認されていない」と固定化されかねない
・札幌高裁判決は、予想を超えた驚くべく判決だった。24条の条文の「両性」の解釈も社会の変化で変わるんだと言っている。これを最高裁が採用するとは思ってないが、このくらいの解釈は許されてしかるべき。高裁は通例、最高裁を慮るものだが、この裁判長は少しも忖度していない、蹴飛ばされて当たり前とのスタンス。それくらい当事者にとって切羽詰まった状況であり、制度で包摂するのが最適解だという考えが見える。憲法的には(婚姻の自由という)同根の概念だ。婚姻として認める以外の選択はない。だから実定法の民法でも同性婚を認めなくてはならないとの考えだ
・総括として。何らかの法的対応をしなければいけないのは自明。何も措置を取らないのは厳しく問われる。国会は国権の最高機関であり、唯一の立法機関であるにも関わらず、最高裁が最終判断を下すまで立法府が動かないというのは、敗北ではないか。主体性はどこに行ったのか。先日、当事者の声を聞いた。こんなに苦しんでいるのに、議員は常軌を逸した差別発言を浴びせている。当事者には時間がない。苦しんでいるのは同じ生活者であり納税者なのに、何もせず、悪罵を浴びせ、尊厳を毀損している。いつからこんな冷たい国になったのか。「伝統的な家族」と言う。私自身、標準世帯に生まれ育ち、郷愁を深くするものだが、古い家族の肖像を眺めていればいつか昔に戻るなどということはない。同性婚を認めても誰も不幸にならない。ただみんながハッピーになるだけ。“同性愛者には不幸になってほしい”という歪んだ発想があるのではないかと疑う。この伝統的な婚姻制度に参加したいと言ってるのは当事者なのに、それを排除し続けるのは理解に苦しむ。みんなが家庭を築いて、社会全体の生産性を向上させるなら、そのほうがいいに決まっている。あらゆる観点から現状はおかしいと言える。立法府はプライドと意地を見せてくれ。
素晴らしいスピーチでした。この日の白眉だったと感じます。
続いて、関テレや毎日新聞でも報道があった、各政党の代表が結婚の平等に賛成か反対かを意思表明する初めてのコーナーが設けられました。議員のみなさんのスケジュールの都合もあり、全部で3回に分けて行なわれました。
結果、公明、立民、維新、共産、れいわ、社民は賛成で、国民民主の玉木代表と自民の牧島議員が「○」と「△」を同時に掲げました。国民民主の玉木代表は「個人的には○だが、△を上げたのは、党内でまだ憲法24条の「両性」の文言も重視しなければならないとの声もあるから。しかし、駒村先生も話したように、高裁で今回、このような判決があったのは画期的。意味は大きい。党内で意思決定をしていきたい」と述べました。牧島議員は「現状、党として同性婚の議論の場設定できてない。一方、原告の話を直接聞いて、重く受け止めている。裁判しなければいけない状況、そのご苦労にどうやって応えるか、話している。裁判の結果を重く受け止めて議論進めたい決意だ」と個人としての決意表明をするに留めました。
九州訴訟原告のお二人が語りました。こうぞうさんは「札幌高裁であのような判決が出た後も、なお、首相は「注視していく」と答弁しています。以前、首相は「社会が変わってしまう」とも発言しました。前進させる意志があるなら、話を聞いてください。間に合わず、亡くなった友人もいます。僕の家族もすでに高齢です。早く同性婚の実現をと切に願っています」と、ゆうたさんは「去年、プライド月間に開催された院内集会では、来ていただいたみなさんで「ハッピープライドマンス!」と言い、「来年は心から言いたいですね」と言いあってました。早く、心から言いたいです」と語りました。
愛知訴訟原告の大野さんが語りました。「私はクローゼットで、直属の上司だけに伝えています。里子を迎えたこともあたたかく受け容れてくれたりして、裁判を始めてから世間の反応が随分と変わったことを実感しています。世の中も変わっています。もうこのような場が、これで最後になってほしいです。同性婚を法制化してくださってありがとうと言いたいのです」
関西訴訟原告の田中さんが語りました。「私たちはつきあって17年目になります。香川に暮らしています。子どもの頃、両親を見ていて、夫婦っていいなと思っていました。でも自分はこの先結婚とかないのかなと。この裁判に臨むことになり、役所に婚姻届を出したとき、受け取ってもらえなかったつらさを思い出します。でも、今回の札幌高裁判決には救われる思いがしました。一日も早く、 法制化をお願いします」
同じく坂田さんが、赤ちゃんを抱いたテレサさんの隣で語りました。「私たちは16年のパートナーで、娘は1歳7ヵ月になります。でも、男女の夫婦と同等に扱ってもらえないことが不安です。娘は、私たちが親だと思って疑いません。でも、現状は、国は家族じゃないよと言ってくる。残酷じゃないですか。子どもにわかるように説明できますか? 自治体のパートナーシップ制度は人口カバー率で8割を超えました。札幌高裁でも認めないのは違憲だと言っている。婚姻制度から私たちを締め出すのは健全じゃない。一刻も早くアップデートをお願いします」
東京一次訴訟の原告、おのはるさんが語りました。「メッセージ集に初めて子どもたちの写真を載せました。パートナーの西川と20年、子ども3人を育てました。今日は娘の大学の卒業式だったのですが、「母さん来なくていいよ。頑張って」と言ってくれました。血のつながらない娘ですが保育園の頃から育ててきて、まさかこんなに大きくなるまで結婚できないとは思いませんでした。結婚できればしなくていいはずの苦労をたくさんしてきました。子どもの入院の手続きで、私自身の入院で。家族と認められないこと、二級市民扱いされること。議員のみなさん、どうか力を貸してください」
仙台で家事審判を行なった小浜さんが語りました。「還暦を超え、パートナーはもうすぐ80です。人生の大事な局面がどんどん押し寄せてきて、法的に家族でないことの不安をひしひしと感じています。マリフォーと一緒に、各地から、一人でも家事審判に立って応援できればいいのではと思っています。議員のみなさん、よろしくお願いします」
東京二次訴訟の原告、藤井さんが語りました。「妻の理恵と一緒になって10年になります。昨年理恵がNYに出張したとき、アメリカで結婚しました。至福かというと、そうではありませんでした。もし日本で同性婚できないとしても、せめてアメリカで、と泣きながら。でも、同性カップルも異性カップルも平等に扱ってもらえることを経験できました。私たちが求めているのは特別な権利ではありません。結婚という選択肢を求めいるのです。私たちはそんなに劣っていますでしょうか。司法と世論はすでに回答しています。私たちを代表する政治家のみなさんに一刻も早く法制化をしてほしいです」
同じく河内さんと鳩貝さんが語りました。「17年、共に生きてきました。10年前、青森で女性カップルが婚姻届を提出し、24条1項を理由に不受理となりました。その24条1項でついに違憲判決が出ました。青森の宇佐美さんはもういません」「いつまで差別と不利益が続くのでしょうか。幸せな家族が増えて、次世代の子ども達も安心して暮らせる社会に」「危機感を持って議論を進めていただきたいです」
3月26日に犯罪被害者給付制度についての最高裁判断が出ますが、この訴訟の弁護団の堀江弁護士が語りました。
「最高裁で認められれば、事実婚として見なされます。同性と異性とで差がないということを認めていただければ、婚姻平等への一歩となります。当事者は、9年以上、遺族給付金を支給されておらず、5年以上裁判しています。そもそも、婚姻平等が実現してればこんなことにはなりませんでした。抜本的に平等が必要です」
最後に、東京弁護団の上杉弁護士が語りました。「2つの判決は立法を急ぐよう求めました。最高裁もきっと違憲と判断するでしょう。本来、国会は、裁判所の判断を待って動くものではありません。国民の代表です。世論の多くも支持しています。この瞬間にも当事者は不利益を被り、尊厳を傷つけられています。それを無視しないでください。今すぐ、立法に動き出してください。それがたくさんの人の願いです」
※割愛させていただいてますが、たくさんの国会議員の方々のスピーチもありました。MFAJの公式Xアカウントで紹介されています。
なお、こうしたみなさんの訴えをよそに、同日15時頃、参院法務委員会での石川大我議員の「札幌高裁で違憲判決が出た。同性婚の制度検討を」との問いかけに対し、小泉法相は「国民の関心、議論が高まっていると感じている。札幌高裁判決も承知している。同性婚制度の導入は我が国の家族の在り方の根幹に関わる」「国民的なコンセンサス、理解が必要でないとは言い切れない。国民各層の意見、国会における議論、地方自治体におけるパートナーシップ制度等の取り組み、またさまざまな国民の議論も受け止めながら注意深く状況を見守っていきたい」と答弁したそうです(あーさんという方がXで報告してくださっています→こちら)
これだけ多くの違憲判決(しかも24条1項でも)と国会での法制化の議論の要請が出ていて、憲法学者も「あらゆる観点から現状はおかしい」「何も措置を取らないのは厳しく問われる」と指摘しているにもかかわらず、「家族の在り方の根幹に関わる」「注視していく」の繰り返しです。駒村教授がおっしゃるように、“同性愛者には不幸になってほしい”という歪んだ発想があるのではないかと疑いたくもなります。国会議員は国民の代表なのに、私たちの声を一向に聞き入れてくれません。いったい誰のための政治をしているのでしょうか?
ともあれ、5年もの長きにわたって「結婚の自由をすべての人に」訴訟を続けてくれた原告や弁護団のみなさんには、感謝しかありません。本当にありがとうございます。まだ闘いは続きますが、同性婚の法制化が実現するまで、みんなでできることをやっていきましょう。
- INDEX
- レポート:「トランスジェンダーを含むLGBTQ+差別に反対する映画監督有志の声明」掲出プロジェクトに関する会見
- レポート:東京トランスマーチ2024
- レポート:みやぎにじいろパレード2024
- レポート:「work with Pride 2024」カンファレンス
- レポート:やまがたカラフルパレード
- 来年ワシントンDCで開催されるワールドプライドについて、Destination DCのエリオット・L・ファーガソンCEOにお話を聞きました
- レポート:レインボーフェスタ!2024(2)
- レポート:レインボーフェスタ!2024(1)
- レポート:IGLTA総会in大阪
- 「結婚の自由をすべての人に」東京一次訴訟高裁判決の意義と喜びの声