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『超多様性トークショー!なれそめ』に出演した西村宏堂さん&フアンさんへのインタビュー
昨年、多様なジェンダー・セクシュアリティの素敵なカップルもたくさん登場したNHK『超多様性トークショー!なれそめ』。4月5日放送回には、メイクアップアーティスト・僧侶・LGBTQ活動家として世界的に活躍する西村宏堂さんとフアンさんのカップルが出演します。今回、収録現場にお伺いし、お二人にインタビューさせていただくことができました
NHKの『超多様性トークショー!なれそめ』には昨年、KANE&KOTFEさん、井上ひとみさん&瓜本淳子さん、東郷潤さん&結香さん、大奈さん&学さんといった多様性あふれる素敵なカップルがたくさん登場しました。
4月5日放送の『超多様性トークショー!なれそめ』に登場するのは、メイクアップアーティストで僧侶、LGBTQ活動家であり、米TIME誌が選ぶ世界の「次世代リーダー」21人の1人にも選ばれた西村宏堂さんと、そのパートナーのフアンさんです。宏堂さんは恋愛を半ばあきらめていたそうなのですが、旅行先のバルセロナのバルで偶然、フアンさんと出会い、意気投合し、恋に落ちました。フアンさんはコロンビア出身で、宏堂さんもボゴタのフアンさんの家に行き、ご家族にも熱烈に歓迎され、とても幸せを感じたそうです。田村淳さんだけでなくYOUさんなどのコメントも素敵で、思わず笑顔がこぼれるような回になっていますので、ぜひご覧いただきたいです。
超多様性トークショー!なれそめ
Eテレ
4月5日(金)22:00-22:29
再放送:4月9日(火)24:00-24:29(※8日月曜深夜)、4月20日(土)16:00-16:29
【見逃し配信】
本放送から1週間NHKプラスで見逃し配信
私は実は、これまでに二度、宏堂さんが直接お話するのを聞いたことがあります。最初は、2021年に初めて金沢プライドパレードが開催されたときです。宏堂さんが出発直前に「私がNYにいた時、お前はオカマなのかと詰め寄られたことがあったのですが、NYのプライドパレードに100万人もの人たちが集っていたこと、あの音や空気感を思い出し、私にはこんなに味方がいるんだと思えました。ですから今日、パレードに参加してくださる、そんな勇気につながるみなさんに感謝します」と語り、参加者を勇気づけたのです(いたく感動しました)。そして二度目は、2022年にスペイン大使館で開催された『SOMOS 多様性とLGBTQ+カルチュラル・ナラティヴ』という展覧会のオープニングレセプションで宏堂さんがご挨拶したときでした。「18歳のときにスペイン旅行をして、セルヒオという友達ができて、ゲイクラブに誘ってくれました。当時の私はゲイクラブに行くなんていけないことだと思っていて、心配だったのですが、セルヒオのお母さんが『ちょっと待ちなさい』と呼び止めて、『これを持って行きなさい』と言って、ハモンが挟まったサンドイッチを渡したんですね。セルヒオのお母さんがゲイである息子を受け容れ、応援し、愛情を示してくれていた、その様を見て、僕もカミングアウトしてもいいかもしれないという希望が芽生えたんです」というお話に、なんて素敵なんだろうと思いました。西村宏堂さんという方は、その柔和な物腰や語り口、美しいメイクやファッション、ポジティブなオーラで人を魅了し、世の中をも変えていくような素晴らしい方だと実感しました。
そのようなこともあり、今回、宏堂さんたちが出演する『超多様性トークショー!なれそめ』の収録現場に取材として入れることになったのは、本当に幸いなことでした。
渋谷のNHKを訪れるのは、以前『ハートをつなごう』を取材させて以来、15年ぶりでしたが、とても大きなスタジオで、女性の方たちが責任者として活躍していて、笑いが生まれるような温かな収録現場だったことが印象的でした。特に決まった台本がなく、ゲストの方々が自由に発言し、それでいてあのように自然にお二人のお話にリアクションしていたということも知って、素敵だなぁと思いました。
そして収録後、宏堂さん&フアンさんのお二人がインタビューに快く応じてくださることになりました。あまりお時間をとらせないようにしつつ、また、フアンさんにはスペイン語の通訳の方が話の内容をお伝えし、いただいたフアンさんのスペイン語コメントをまた日本語に訳してくださって、というかたちだったこともあり、ごく短いQ&Aになってしまいましたが(初め15分というお話だったのですが、結果的に30分くらいお時間を頂戴してしまいました)、それでも、とても有意義な、素晴らしいコメントがいただけたと思います。
(聞き手:後藤純一)
――私は今日のお話も、YOUさんもおっしゃっていたように、ストレートのカップルや夫婦なども参考になるような、本当にいいお話だったと思いました。収録を終えての感想をお聞かせくださいますか?
フアンさん:初めてこのような取材を受けたので、印象的でした。日本社会で、ゲイコミュニティがまだ(法整備の面などで)進んでいないところがあると思いますが、もう少し前に進むことができるよう、力になれたらと感じています。日本では、こういう番組があって、LGBTQの媒体もあって、存在を知らしめていくような活動があることがわかってうれしいです。コミュニティのみなさんが幸せになれるよう、少しでも何かしらのことができたらと思っています。日本は、いろんな文化を受け入れることができる社会だと信じていますので、今後、変わっていくことができたらいいのではないかと思います。
宏堂さん:私は、男性どうしで結婚した人がいるんだということが伝わり、そういう人が多ければ多いほど、他の人たちの希望になったり、他の人たちが歩く道を作っていけると思っています。今回、出演にあたってフアンに、私はテレビに出て有名になりたいんじゃない、希望を与えるためなんですと説明しましたが、まさにそういう気持ちなのです。また、コロンビアのことを知ってる人はなかなかいないと思いますが、いろんな隔たりを乗り越えて仲良くなってる人がいて、家族になることが可能なんだと伝えられたらいいと思いました。番組をご覧になるさまざまなみなさんに伝わるように、おもしろおかしいところもバランスよくご紹介しました。(あまり同性婚に理解のない人とも)わかりあえたらいいなと思っています。
――素晴らしいコメント、ありがとうございます。あまりお時間をとらせないよう、簡単に3つだけ質問させてください。「PRIDE JAPAN」は主にビジネスパーソンに向けてLGBTQの情報をお届けし、アライを増やそうとする趣旨のサイトです。日本でもっとLGBTQが生きやすくなるために、アライとしてできること、大切なことは何だと思いますか?
宏堂さん:いろいろな会社が、研修やオリエンテーションの中で、どんな時も、会社に属している人を尊重します、セクシュアリティ、家族のかたち、出身地、障がい、家柄など全てにおいて差別を許さないコミュニティです、安心して自分らしさを出せることが大事ですということを、意図的に度々言うこと、しっかり声に出すことではないかと思います。例えば私がLAのメイク学校に行ったとき、まず最初に、どんな差別も許しませんよということを言ってくれました。もちろんそこにはトランスの仲間もいたし、すごく効果的だと思いました。
フアンさん:企業にとって、そういうコミュニティをサポートすることは、ある意味、投資だと思います。信頼にもつながります。宏堂が言ったようなことを規則として掲げ、差別をしないことを明らかにし、従業員へのサポートをしていくようなことを、アライとして一生懸命取り組んでいっていただけたら。
宏堂さん:社内で実際に差別者を解雇できるような力を持った人が、声に出して言うことが大事なのではないでしょうか。ただそれは、差別したら解雇されてしまうということじゃなく、みんなが学ぶ姿勢が大事で、たとえ間違ったとしても、謝って、改善していけるような、そういう環境が安心につながると思いますし、上の人がそういうことを理解したうえで発信していくといいと思います。
――日本ではまだ差別禁止法がないということもあり、SNS上でトランスジェンダーに対するヘイトが横行しています。“男性器がついたトランスが女湯に入ってくるようになる”といったデマを、政治家も鵜呑みにしているような深刻な状況です。だからと言って、悪意を持って攻撃しているような人たちをすぐに変えることは難しく…法的な規制もなく…。自ら命を経ってしまう方もいらっしゃいますし、当事者の方たちが絶望してしまわないよう、何か希望を持てるような、エンパワーメントにつながる言葉をいただけたらうれしいです。
宏堂さん:他のトランスジェンダーの方たちとつながること。あなたは独りじゃない。私も同性愛者として差別を受けたり悩んだりしていたとき、同じような人たちとつながって救われました。一人でも仲間がいて、寂しさを感じずにすんだり、感情の通行口ができたりするといいですね。
フアンさん:そうですね。助け合うこと、コミュニティのサポートにつながることはとても重要です。
宏堂さん:それから、歴史や世界を知ることにも意味があると思います。ドキュメンタリーや映画でも知ることができますし、こんなに活躍しているトランスジェンダーの人たちがいるんだ、とわかると、気の持ちようが変わっていくのではないでしょうか。自分の身を置くコミュニティをしっかり選ぶことも大切です。Twitterがつらかったらやめてもいい。自分を大事にしてくれない場所から逃れましょう。例えばタイではトランスの方たちが生き生きと働いていますし、LAで私が行っていたジムの受付もトランスの方でした。歴史や世界のことを知ると、攻撃している人たちがなぜそういうことをするのか、自分自身がつらいのかな、今までの考えが崩れるのが怖いのかな、と俯瞰して見れるようになって、被害者のポジションから抜け出す糸口になると思います。
――なるほど。深いですね。最後に、日本のLGBTQコミュニティにひとこと、メッセージをお願いします。
宏堂さん:「日本は変わらない」「日本の政治家はダメだ」「古い人の考えは変わらない」と言わないでください。そう口に出すと、それが現実になってしまいます。「日本は変われる」「私たちが政治家を動かしていく」「古い人の中にも応援してくれる人はいる」というポジティブな面を信じて口に出すことで変わっていくと思います。
フアンさん:希望を持ち続けること。自分を愛してあげること。我々は同じ人間であるということ。自分の場所を見つけること。もしそれが難しいのであれば、日本を出て、見聞を広めて帰ってくるというのもひとつの方法だと思います。
宏堂さん:今回の番組で、私たちが幸せそうである姿を見て、自分も幸せを感じられるはずだと思っていただけたらうれしいです。自分自身の未来を創造する材料にしてほしいと思います。
――素晴らしいお話、本当にありがとうございました!
【追記】2024.4.2
公式サイトにインタビュー記事「『胸を張って生きる僧侶の彼と彼を誇りに思うコロンビア人の彼』国際同性カップル」が掲載されました。当日の番組でも語られるお二人のなれそめのことや、コロンビアでの結婚のこと、なぜ日本で暮らしているのかといったお話が詳しく語られています。読んでみてください。
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