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レポート:ピンクドット沖縄2024
2024年12月8日(日)、那覇市中心部・てんぶす館前広場で12回を数えるピンクドット沖縄が開催されました。今年もライブあり、トークありで、国際通りを華やかにパレードしてフィナーレを迎えました
ピンクドット沖縄は、もともと東京レズビアン&ゲイパレードを立ち上げた砂川秀樹さんが地元・沖縄に帰って活動をするなかで2013年に那覇市との共催で開催することになったものです(詳しくはこちらをご覧ください)。沖縄でパレードは難しいのではないかということで、シンガポールのピンクドット(公園にピンクの服を着て集まる集会型のプライドイベント)にヒントを得て、市の中心地である国際通りのテンブス館前広場でライブやトークショーなどを行なうイベントとして始められました。2016年には那覇市で「パートナーシップ宣誓制度」がスタートし、登録第一号のゲイカップルの結婚式が行なわれ、城間市長が証明書を授与し、MAXのRINAさんが祝辞を述べ、中島美嘉さんがサプライズで歌うという、感動的なイベントになりました。
しかし、砂川さんがお仕事の都合で再び東京に戻ることになったのを受け、2017年からはホテルパームロイヤルNAHAの高倉さんや、カフー リゾート フチャク コンド・ホテルの荒井さんなど、アライの方々を中心に開催されるようになり、2017年にはMAXがライブを披露したり、過去最多の3000人が詰めかけ、2018年も東ちづるさん、中沢初絵さん(山咲トオルさんのお姉さん)らが出演するなどしました。2019年には諸事情で会場が変更となり、2020年からはコロナ禍でオンライン開催や規模を縮小したかたちでの開催となりました。
2022年には第10回を記念して初のパレードが開催されました。
昨年には、もともとの会場であるてんぶす館前広場に戻ってきて、てんぶす館の向かいのホテルパームロイヤルNAHAに再び巨大なレインボーフラッグが掲げられ、さらに、パレードも開催され、祝福感あふれる、晴れやかな1日となりました。
そうして今年も、昨年同様、てんぶす館前広場でピンクドット沖縄が開催されました。
前日の夜は雨が降っていて、ピンクドットの当日は雨はやんだのでよかったのですが、風がとても強く、肌寒い日となりました(これまではTシャツ+ハーパンでも大丈夫でしたが、今年はそういうわけにはいきませんでした)。それでもイベントは晴れやかに開催され、素晴らしい1日となりました。
広場にはピンク色のテント(ブース)がたくさん並んでいました。いつもプライドイベントに協賛してくれているチェリオ、以前からピンクドットに協賛してくれているCiti、カフー リゾート フチャク コンド・ホテル、琉球大学のほか、Marriage For All Japan、ぷれいす東京なども出展していました。
正午にピンクドット沖縄がスタート。今年もブルボンヌさんと琉球放送アナウンサーの與那嶺啓さんが司会をつとめました。
ピンクドット沖縄代表でホテルパームロイヤルNAHA総支配人(髙倉コーポレーション代表取締役社長)の高倉直久さんがお子さんといっしょに登場し、ご挨拶(まだ小さいお子さんで、パパの足にくっついたり、レインボーフラッグを振ったりもして、盛んに「かわいい!」と言われてました)。ピンクドットにかかわるようになった経緯をお話して、今年のメインテーマである行政も一緒にLGBTQファミリーについて考えるトークセッションについて説明されました。
那覇市の知念覚市長が登壇し、全ての人が生きやすい那覇市を目指し、性的マイノリティの方も働きやすい職場づくりなどの取組みを丁寧に進める、那覇市はレインボーなは宣言を発し、「パートナーシップ登録制度」を導入、のちにファミリーシップ制度に拡充、現在は条例策定中である、ピンクドット沖縄が当事者と支援者のつながりを生み、多様な性を尊重する輪が広がるきっかけとなることを祈ります、といったお話をされました。
続いて玉城デニー沖縄県知事からのメッセージが代読されました。全ての人が自分らしく生きられる沖縄県を目指し、理解を深め、共有するためのピンクドット沖縄を開催するみなさん、企業や参加者のみなさんに敬意を評します、今年は県や那覇市が意見交換して様々な取組みを進め、当事者の不安解消につとめます、県はパートナーシップ・ファミリーシップ制度の導入を検討してきて、もうすぐ要綱案が出るのでぜひパブコメで意見を聞かせてください、沖縄県はこれからも個人の尊厳と多様性を尊重します、といったお話でした。
Pride Choir Tokyoのみなさんがステージに上り、コーラスが演奏されました。指揮はRinoさん、ピアノ伴奏は、沖縄で音楽を教えたりサックス&ピアノ奏者として活躍もしている伊藤晃さんがつとめてくれました。それぞれの曲を歌う前に、メンバーの方たちが曲の紹介をしてくれました。初めの曲はミュージカル映画『ノートルダムの鐘』の「サムデイ」。その見た目ゆえに誤解されたり肩身の狭い思いをする主人公が「僕がいつか愛を知るなら」と歌うせつない名曲で、マイノリティであっても社会に包摂され、自分らしく生きられるようにという想いが感じられました。2曲目はBEGINの「島人ぬ宝」。沖縄を代表する有名曲というだけでなく、沖縄の平和への思いも込められていたそうです。最後はABBAの「ダンシングクイーン」。だれもが自由に自分らしく輝けることを象徴するような歌で、ポップに楽しく締められました。
ピアノを片付けたり、次のシンポジウムの準備をする合間に、協賛企業などの紹介が行なわれました。
KPGホテル&リゾート(カフーリゾート)の浅田資継社長は、同性結婚式など、これまでの取組みについてお話しました。
ぷれいす東京の生島さんは、LGBTQ+ユースの性の健康の支援を中心とした「コンセント」プロジェクトについてお話。nankr(なんくる沖縄)の方や沖縄県の性感染症対策の方もいっしょにステージに上がり、それぞれの活動についてお話していました。
Marriage For All Japanの松中さんは、全国で進む「結婚の自由をすべての人に」訴訟について説明。TV番組のようにフリップも用意され、わかりやすく会場のみなさんに伝わったと思います。
そして本日のメインイベントであるシンポジウム「行政と共に考えるLGBTQファミリーの今とこれから」が行なわれました。県内で同性パートナーと子育てをする(ふふはぐというサイトを運営したり、沖縄タイムスでコラムも連載している)matoさんのお話を聞きながら、県や那覇市の方も登壇して、パートナーが法的に家族と認められないなか、行政がどのように考え、施策を実施してきたか(または検討しているか)というお話や、育児休暇が取れるのかなど、様々なことが話されました。那覇市は先進的な取組みを進めてきましたが、matoさんたちはやんばるに住んでいるため、その恩恵は受けられないです、県は美ら島にじいろ宣言を発していて今年度中にパートナーシップ・ファミリーシップ制度を実現することを目指していますが、もう一押しあってほしいよね(ブルボンヌさんが笑いをとりながら鋭く突っ込んでくれていました)、といったお話でした。当事者が声を上げていくことは大事だが、matoさんもここにくるまで10年かかったと語っていて、安心してカムアウトできないとなかなか声も上げられない、というお話も。ブルボンヌさんが1994年に初めてパレードを歩いたときの恐怖感のことを引き合いに出しながら「歩き出してみると意外と大丈夫よ」と励ましていました。
再び紹介コーナーです。
LGBTQの子を持つ親の会の方が講演の案内をしました。ドラァグクイーンのロビンソワさんも壇上に上り、そのヒールの高さに注目が集まっていました。
チェリオのみなさんが登壇。2011年からプライドイベントに協賛、応援してくれています。今日もプライドイベントのためにパッケージデザインが施されたライフガードや天然水を配布してくださっていました。
Citiでは社内研修などアライを増やす取組みを行なってきたほか、ダイバーシティカウンシルが設けられ、今日はLGBTQピラのメンバーが来られている、とのことでした。
続いてドリアン・ロロブリジーダさんが「まつり」を歌いながら登場し、最後の「これが日本の祭りだよ」を「これがピンクドット沖縄だよ」に替えて拍手を浴びました。続いて『リトル・マーメイド』の魔女・アースラの歌を、やはりオリジナルな語りと歌詞を交えて披露しました。MCでドリアンさんは今年2月に結婚したことを報告し、パートナーがトランス男性で戸籍性がまだ女性のままだったから自分たちは結婚できたものの、同性カップルが結婚できないのはおかしい、これを説明できる人がいるのか、と語り、これまで同性婚実現をはじめマイノリティために闘ってきた方に捧げる、として中島みゆきさんの「ファイト!」を歌いました(素晴らしかったです。隣の女性が号泣し、ハンカチで顔を覆っていました。TRPをはじめ全国のプライドで歌ってほしいと思いました)
そして、高良結香さんもLAから駆けつけ、2年ぶりに歌ってくれました。軽快なポップチューン「DJ Queen」を歌いながらステージを降りた高良さんは観客席に「一緒に踊りましょうね」と促し、まず小さい女の子が踊りはじめ、それからおじいやおばあが踊りはじめ、実に沖縄らしいチャンプルーでカチャーシーな展開になりました。そして、誰も予想しなかったスゴいことが起こりました。高良さんがディアマンテスと共作した「We Are Okinawa!」という歌を歌おうとしたまさにそのとき、会場にアルベルト城間さんが現れたのです(たまたま国際通りを歩いていたら高良さんが歌っていた、とのこと)。高良さんが城間さんをステージに呼び込み、急遽、飛び入りで歌ってくれることになって、豪華デュエットとなりました。全員がびっくりするような奇跡のサプライズに大きな拍手が送られました。
感動と興奮が冷めやらぬなか、フィナーレとして3回目となるレインボーパレードが行なわれました。ブルボンヌさん、ドリアンさん、沖縄のレスペランザさん、アブラマミレさん、クロレラさんなどのドラァグクイーンの方たちや本日の登壇者の方たちが先頭を飾り、サンバ隊の奏でる音楽に合わせて国際通りを華やかに行進しました。おそらく昨年と同じくらいの300名余りの方たちが参加していたと思います。パレードは松尾の交差点で折り返すのですが、前に進む人と戻る人がすれ違うときに絵がおいでハイタッチしたりもしていました。体もあったまりましたし、心もあたたまるような、カラフルで笑顔あふれるパレードでした。
集合写真を撮ったあと、最後にもう一度高倉さんがご挨拶し、「ピンクドット沖縄は同性婚の実現を目指しています」と力強く語りました。
今年で12回(干支が一回り)を迎えたピンクドット沖縄。これまで途切れずに(コロナ禍のときもオンラインで)開催してきただけでも本当に素晴らしいことだと思いますが、本当にたくさんの名場面、たくさんの笑いや感動がありました。
今年、全国約40ヵ所で開催されたプライドイベントのフィナーレとなるイベントでもありました。
琉球新報の記事で浦添市の夫婦が「参加するたびに力をもらえる。同性婚が認められる日まで、アライとして足を運ぶつもりだ」と語っていました。ドリアンさんの歌で涙する女性の方もいました。実は当事者だけでなくいろんな方が励まされたり、そういう方がますます強いアライ(味方)になってくれたりもする、とても意義あるイベントなんだと思います。なかなか地元の当事者の方たちの参加は増えませんが、続けていくことできっと、変わっていくのではないかと思います。
(取材・文:後藤純一)
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