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レポート:やまがたカラフルパレード
11月3日(日祝)に山形市で開催された第3回やまがたカラフルパレードをレポートします。天気もよく、山形の素敵な街を気持ちよく行進できました。参加者の温かさが伝わってくるような、とてもいいパレードでした
私が山形市議(当時。現在は県議)の松井愛さんに初めてお会いしたのは2022年のいわてレインボーマーチのときでした。松井さんは「山形でもぜひパレードをやりたい」とおっしゃっていて、それはてっきり、青森、岩手、宮城、秋田、福島ではパレードをやってるけど山形だけやってないから(山形でパレードが開催されたら東北六県全部で開催されることになるから)という動機なんだと思っていたのですが、第1回のときのVENさんのレポートで、山形で松井さんや池田弘乃さん(山形大で「カラフルcafé」を主宰)と一緒に活動してきた方(今回池田さんがお話していたのですが、レズビアンのひろみさんという方だったそうです)が亡くなり、彼女がずっとパレードを開催したいと言っていた、その願いを叶えたいという気持ちだったことがわかりました。松井さんは毎年、彼女が作ったレインボーカラーの衣装を着てパレードを歩いているのです。
第1回に続き、昨年の第2回もVENさんがレポートしてくれたのですが、今年はVENさんが岸和田のレインボーカフェのみなさんが主催する多様性育児を支援する「サンバ(産婆)フェスタ」というイベントに参加するとのことでしたので、それならば私が山形に行こうと思い、初参加を決めました(昨今、全国各地でプライドイベントが多数開催されるようになったので、VENさんと相談し、手分けして取材するようにしています)。私も青森、岩手、宮城、秋田、福島のパレードには行ったのですが、まだ山形だけ未体験でしたので、いい機会だと思いました。
というわけで、第3回やまがたカラフルパレードの模様をレポートします。
(取材・文・写真:後藤純一)
レポート:やまがたカラフルパレード
2024年11月3日(日祝)、山形市は(というより全国的に)台風一過の秋晴れで、11月とは思えない日差しの強さでした(またしても日焼け止めを持ってくればよかったと後悔)
13時過ぎに会場の第二公園に到着。市民の憩いの広場という感じで、子どもたちがグローブジャングル(回転式の丸いジャングルジム)で遊んでいました。
最初に松井愛さんにご挨拶し、そのあと松井さんと一緒にアライ議員ネットワークを作った(もしかしたら盛岡でお会いしてたかもしれないけどお話したことはなかった)弘前市の成田市議を紹介していただきました。実は成田市議はご家族に当事者の方がいて、そのこともあって熱心に動き、弘前市で東北初の「パートナーシップ宣誓制度」を実現した方だということがわかりました。自分も弘前市出身で、制度ができたことに驚きながら、母と喜び合ったものの、突然思い出したように母が(50年も前の話ですが)高校の同級生の親族の女性の方が女性と恋に落ち、周囲に受け容れられず、絶望し、無理心中したという話を語りだし、もっと驚いた、そういう無念の死を遂げた方はきっと東北の各地にいらっしゃると思います、今日このパレードに来られなかったそういう方たちも、きっと制度を実現してくれたことに感謝してくれるはず、私からもお礼を申し上げますとお伝えしました。
そのあと、共同代表のおっしーさんともお話させていただきました。彼女は昨年、同性パートナーができたものの、周囲の誰にも相談できず(50年前とあまり変わっていないのかな…と思いました)、一人でパレードに参加し、安心して自分のことを話せることに感激し、パレード後の集会では「来年はスタッフもやります」とスピーチしました。結果、共同代表を務めることになったんだそう。遠くに住む彼女と一緒に暮らすため、来年は山形を離れてしまうため、今年限りだそうですが、そのはじけるような笑顔は、本当に輝いて見えました。
ひさしぶりにお会いするやろっこのふとしさん(当日の午前中、山形で郵送検査キットの無料配布を行なっていました)などともお話していたところ、出発前のオープニングイベントが始まりました。
司会の方がハキハキして明るい方でした。手話通訳と英語通訳で情報保障をしているところはいわてレインボーマーチ譲りだなと思いました。
山形県の吉村美栄子県知事からのメッセージが読み上げられました。パレード開催を祝う言葉と、今年1月から県として「パートナーシップ宣誓制度」を導入したこと、今後も性の多様性を尊重し、誰もが生きやすい社会に、といったメッセージでした。
山形市の佐藤孝弘市長からもメッセージが届きました。パレード開催を祝い、成功を祈りますという言葉と、多様な性に理解を、とのメッセージでした。
共同代表のおっしーさんが挨拶。去年初参加し、胸がいっぱいになった、仲間と出会えた、「あなたの勇気のおかげでつながれたんだよ」と言ってもらえてうれしかった、このパレードが勇気をもらい与え合える場になれば、という素敵な挨拶でした。
協賛しているさとこ女性クリニックの井上聡子さんが、若い人たちが運営していて素晴らしい、持続可能なパレードになりますように、と話しました。
いよいよパレードが出発。フロートからは、リナ・サワヤマの「This Hell」(TRPのテーマソングになった曲)が流れはじめました。しかし、公園を出ようとしたとき、パンと音が。フロートの頂上に飾り付けられていた風船が、公園の木の枝に引っかかって割れてしまったのです。そのとき、山形と青森のパレードののぼりや旗を持っていた2人の男性が駆け寄り、木の枝を上に上げ(ねぶたのときに電線に引っかからないように木の棒で電線を上に上げるのを思い出しました)、風船が割れないようにしてくれたのです。すかさず司会の方が「いま、二人の戦士が風船を守ってくださっています」と言って、思わず笑ってしまいました。
無事にパレードがスタートし、第二公園を出て、実に広々とした通りを、青空の下、笑顔で手を振りながら行進します。
すれ違う車の中から手を振ってくれたり、沿道のカップルがてをつないだまま手を振ってくれたり、お店の中から手を振ってくれたり。
パレードは花笠まつりの会場でもある市のメインストリート(十日町・本町・七日町通りと言うそうです)をゆっくり進みます。天気のせいもあるのでしょうが、また、パレードの祝祭的な雰囲気のおかげでもあるのでしょうが、山形の街は活気のある素敵な街に見えました(実際、最近できたというおしゃれスポット「水の町屋 七日町御殿堰」には、たくさんの人がいました)
司会の方がパレードに参加している方にインタビューしながら歩いていて、とてもいいなと思いました。
山形大学の若いみなさんが横断幕を持ち、東北各地のパレードの方が続き、議員さん、irOdori~彩り×踊り~のみなさん、各地のパレードに参加している産婦人科医の藤田けいこさん、任意団体FHI Japanのゆうすけさん、やろっこのふとしさんなど、いろんな方が歩いていました。
遠くに文翔館が見えてきて、最後のアピール。文翔館の向かいの広場にゴールしました。
記念撮影のあと、クロージングイベントが行なわれ、来場した各地のプライドの方たちが一言ずつコメントしました。
みやぎにじいろパレードは11月16日に「Make Our Future みんないぎなしおどげでね、んだから変えっぺし。」(※みんな大変だから我慢しよう、じゃなく、だからこそ変えていこうという意味)をスローガンに開催されます。
青森レインボーパレードは、6月最終週(プライドウィーク)に開催。「とてもいい気候です」「東北のプライドを盛り上げていきましょう」とおっしゃっていました。
酒田市で庄内レインボーマーチを開催している「虹をかける会」さん。鶴岡市出身で『わたしたち体育会系LGBTQです』の著者、田澤健一郎さんの講演会のことを紹介していました。
先日ふくしまレインボーマーチを開催したみなさんは、お礼を述べたあと、パレード中にMCの方がインタビュー形式で参加者に話を聞いていたのが楽しかったと語っていました。
Transgender Japanの方は、今日は「ハッピープライド」というかけ声はありませんでしたが、「ハッピープライド」とは、仲間が全然ハッピーじゃないけど1日だけでも、ということだと思う、実際はトランス差別がひどくて、経産省の最高裁判決 が出たのに状況が改善されていない、一方、東京高裁で違憲判決が出た、一歩一歩権利回復が進んでいる、トランス差別を許さないというスタンスで一緒にやっていこう、11月17日は東京トランスマーチです、とスピーチしました。
irOdori~彩り×踊り~のみなさんは、性別で決められてるクラシックバレエを自分らしく思い通りに踊れるようにということで服装自由のバレエレッスンを開催したり、女性の服を買う際に同行したりという活動をしています、仙台支部もあって、福島の方なども参加しています、というお話をしていました。
その後、松井愛さん、男女共同参画ファーラの方、県や市の議員さん、松井さんと一緒にパレードを立ち上げた山形大の池田さんが一言ずつ語りました。
最後におっしーさんが、「去年、この場で実行委員をやりたいと言い、共同代表をやることに。みなさんと共に歩んだこの言葉が宝です。また来年歩きたいです」と語りました。
人数は100人くらいでしたが、晴れやかで気持ちのいい、あったかい気持ちになれるような、とてもいいパレードでした。
- INDEX
- 特集:11月20日は国際トランスジェンダー追悼の日
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- 特集:10月はLGBTQ映画が豊作です
- 【インタビュー】ゲイカップルと地下鉄にいた赤ちゃんが家族になるまでの本当にあった奇跡の物語『ぼくらのサブウェイ·ベイビー』の翻訳出版を目指す北丸雄二さん
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