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レポート:はままつレインボープライド2024

今年も6月9日(日)、静岡県浜松市ではままつレインボープライドが開催され、300名を超える方たちが参加しました。昨年同様、関連イベントとして「OUT IN JAPAN」写真展なども開催されました。レポートをお届けします

「OUT IN JAPAN」写真展

 6月9日(日)、ちょっと前までは天気予報は晴れマークだったのですが、残念ながら小雨がパラつく日となってしまいました(梅雨ですし、こればっかりは仕方ないですよね…)
 パレードの前日の夕方と、当日の午前中、浜松市福祉交流センター小ホールで「OUT IN JAPAN」写真展が開催されました。厳選された20人くらいの写真のパネルや「OUT IN JAPAN」写真集などが展示されたほか、ボードを使って性の多様性についての基本的な事柄が説明されていたり、婚姻平等の実現を求める「岸田総理にお手紙を書こう!プロジェクト」のハガキも置かれていました。ステージ奥には、プロジェクターを使い、LGBTQ関連の映画も映されていました(私がおじゃました時はショーン・ペンの『ミルク』でした)。参加者のみなさんは、お菓子を食べてくつろいだり、写真集のページをめくったり、ハガキを書いたり、スタッフの方とお話したり、思い思いに過ごせるようになっていました。
 
 私は新幹線の時間の都合で参加できなかったのですが、8日(土)の15時〜16時半には「結婚の自由をすべての人に」東京一次訴訟の原告の小野春さん、同愛知訴訟の弁護団の水谷陽子さん、にじいろ安場in浜松代表の大畑智矢さんが登壇し、「Marriage For All Japan -結婚の自由をすべての人に」の後援で同性婚の法制化をめぐるトークイベントも開催されました。会場がいっぱいで立ち見が出るくらいだったそうです(盛況で何よりでした)





はままつレインボープライド
 
 小雨が降るなか「OUT IN JAPAN」写真展の会場から大急ぎでパレード会場の新川モールに向かいました。
 レインボーカラーで飾り付けたフォトコーナーやいろんな出展ブースが並んでいます。DJ機材を積んだ、音楽を流せるようになっているフロートも2台あって、ワクワク感を高めます。





 そして今回は、昨年にはなかった立派なステージが設置されていました。
 11時にステージイベントが始まり、「日本で2番目に背が高いドラァグクイーン」加藤アゴミサイルさんと(すみません、お名前を聞きそびれたのですが)女性の方がMCとしてステージの進行をつとめていました。
 最初に、昨年も来られていた浜松市市民部長のしんやさんが、市長のメッセージを代読しました。「優しい街」「誰もが自分らしく」「互いを尊重し」「ダイバーシティ&インクルージョン」「多様性」「努めていく所存」といった言葉の後、はままつレインボープライドの尽力に感謝し、最後に「多様性の輪を広げていきましょう」と語られました。代読の後、しんやさんは個人的なメッセージとして「ありのままの自分でいましょう! ハッピープライド!」と語りました。
 続いて、プライマリーケア学会理事ダイバー推進委員長の西村真紀さんがご挨拶しました。ちょうど浜松で開催されていたプライマリーケア学会で多様な性について学習会を開き、はままつレインボープライドの方にもご協力いただき、差別的事例や医療受けづらいトランスジェンダーの方などの課題について学びを深めた、当たり前に安心してかかれるプライマリーケア(家庭医、かかりつけ医)を目指すというお話でした。
 それから、ドラァグクイーンのシオン・マキシモフさんやマンドレイク・ヒサコさんをご紹介し、しずおかフィナンシャルグループ、FBM(なんと、シオン・マキシモフさんが同社の広報担当としてご挨拶してました)、チェリオ、カオリマジックの方などがご挨拶しました。



 ゴージャスな衣装に身を包んだ納言アパッショナータさんが登場し、ライブ演奏が始まりました。
 最初に、国立音大を首席で卒業し、内外で活躍する新進気鋭のサックス奏者で2021年にゲイであることをカムアウトした中山拓海さんが登場しました。中山さんは小学校の作文で、大好きな男子と一緒に世界を平和にしたいと書いて保護者会がざわついたというエピソードをMCで語ったりしつつ、納言アパッショナータさんのピアノ伴奏で「情熱大陸」をソプラノサックスで華麗に演奏し、続いてピアソラの名曲「リベルタンゴ」を披露、世界的レベルのサックスによる情熱的(アパッショナータ)な演奏でオーディエンスを魅了し、大きな拍手を集めていました。
 続いて、国立音大や桐朋学園でトロンボーンを学び、様々な賞を受賞し、現在、富士山静岡交響楽団をはじめ首都圏のプロオーケストラや東宝ミュージカルなどでも演奏している星野和音さんが登場。ご自身の結婚式の入場曲だったという平井堅『ポップスターや、トロンボーンのために書かれた素敵な楽曲を披露しました。幼少期から性別違和を覚えていたトランス男性としてのエピソードも語ってくださいました。
 そして天道清貴さんです。小学校5年のとき、好きな子に手紙を書いたけど、恥ずかしくて学校では渡せず、その子の自宅の郵便ポストに入れたところ、それを家族が見て、家に遊びに行ったときにお兄さんが「ホモが来た」と言って、初めてそれが人と違う“いけない”ことなんだと悟ったというエピソードを語りつつ、大ヒット曲「The Only One」や、MVでゲイカップルをフィーチャーした「ずっと大事な人」などを披露。そして、静岡県在住のミュージシャンとコラボし、プライドイベントでは初めてフルバンドで演奏し、会場を盛り上げました。最後にクイーンさんや実委のみなさんも一緒に、手話の振付がある「ひまわりを咲かせよう」を演奏。素敵な締めとなりました。
 このステージは納言さんがプロデュースしていたそうですが、みなさん当事者の方で、自身のセクシュアリテについてのお話もしてくださったというところも素晴らしかったですし、正直、吹奏楽部出身者としては、プライドイベントでこんなにプロフェッショナルな楽器演奏を聴けたことに心底感激しました。納言さんのピアノも素晴らしかったです。





 気づけばパレードに向けて整列する時間となりました。整列の間に、東京レインボープライドの共同代表・イージーさんと、神戸の「ハピネスお茶会」の方たちがあいさつしました。
 今回は3つのフロートに分かれ、30分おきに出発するという、なかなか珍しいレギュレーションになっていました。
 14時、アゴミサさん&納言さんが乗ったDJフロート(トラック)に先導され、実行委員の方たちが先頭を歩く第一フロートが出発しました。地元の方たち、県外の方たち、性別も年齢も様々な方たち、車椅子の方なども参加していました。静岡県出身だという東京レインボープライド共同代表のイージーさんもよく通る声で「ハッピープライド!」と言って、沿道の人たちに手を振っていました。
 パレード参加者のみなさんは、連尺の交差点を曲がり、鍛冶町通りへと入り、ザザシティ浜松やヤマハの前を通って、新川モールに帰着しました。
 実は途中、フロート(トラック)がザザシティ浜松の手前で路地に入っていき、あれ?と思ったのですが、どうやら、同じフロートが3回パレードを先導するということになっていたようで、第2の出発に間に合わせる都合でショートカットした模様です(だから出発が30分おきだったんですね)
 さすがにパレードを3回歩くのは大変だったので、駅前のヤマハの辺りで待機し、第2、第3フロートが来るのを出迎えるかたちとさせていただきました。たぶん第1が200人くらい、第2が100人くらい、第3が50人くらいで、合計で約300〜400人がパレードを歩いたと思います。足元の悪いなか、これだけたくさんの方が参加してくださったこと、うれしいですね。

















 
 3つのフロートが帰着した後、しばらく休憩をとって、16時からクロージングイベントがスタートしました。
 TransgenderJapanの畑野とまとさんがスピーチし、今日来れなかった人たちがいます、りゅうちぇるさんや林先生…亡くなった理由はいろいろだけど、小さいことが溜まっていて、ある日突然糸が切れることがあります、というお話や、パレスチナ問題に触れて、平和や平等がないと私たちのプライドは達成されません、と、1年間生き延びてまたプライドでお会いできることを祝いましょう、と語りました。
 共同代表のよっちゃんとすーさんがご挨拶しました。すーさんは「今期代表になって、ステージやブースの規模を大きくしましたが、お祭り事ではなく意味があってやっていることです」「まずは当事者がいるんだよと知ってもらって、アライの協力を得て」「LGBTQもそうじゃない人もコミュニケーションが大事だと思います」と語り、よっちゃんが「みなさん楽しかったですか? よかったです。いろんな人に支えてもらって開催できたことに感謝。一人じゃないって伝えたいです。ここに来られなかった人たちもいます」と語り、最後にすーさんが「来年もまた開催します」と締めくくりました。
 続いて、会津里花さんという静岡在住のトランス女性のミュージシャンが登場。BEGINが開発したギターと三線をチャンプルした夢の楽器「一五一会」の弾き語りを披露してくださいました。「一五一会」の伝道師でもあり大会で優勝したこともあるという会津さんの演奏や歌に聴き惚れましたが、なかには「女になりたいの?って言われたけど、「なりたい」って何なの?なりたいのは自分です」といった歌詞の、トランスジェンダーのことをダイレクトに歌った歌もあって、グッときました。掛け値なしに素晴らしい、魂のライブでした。
 最後に、今日出演したみなさんがステージに上がり、清貴さんの「虹の向こうへ」(私が無条件に泣いてしまう曲です)をフルバンドで演奏しました。完璧なフィナーレでした。







 天気は微妙で、それだけが残念でしたが、パレード中は雨もそんなに本降りではありませんでしたし、ずっとハッピーな空気感で、ほんわかしてあったかくて、とてもいいイベントでした。ライブのクオリティの高さには本当に感銘を受け、さすがは音楽の街だと思いましたし、納言さんのプロデュース力もスゴいと思いました。毎年このライブを聴くために浜松に行きたいと思ったくらいです。
 来年は時間の都合がつけば前日の企画やアフターパーティにも参加できたらいいなと思っています。
 
 浜松には、もう20年くらい活動しているにじいろ安場の大畑智矢さんという方がいて(彼がレインボーマーチ札幌のお手伝いをしていた頃からの友人です)、彼は3月の犯罪被害者給付金同性パートナー支給訴訟最高裁判決の傍聴にも来ていて、レインボーカラーのジャケットを着ていたのですが、職員の人に脱ぐように注意されていて、側で見ていて胸が痛みました。今回のパレードの前日には「OUT IN JAPAN」写真展&同性婚トークイベントに参加し、パレードの最中は大きく「GAY」と書いた手作りのボードを持って歩いていました。その勇気とプライドを心から讃えたい気持ちです。
 
 ちなみに今回、協賛した静岡銀行が建物をレインボーライトアップしていたそうです。
 私は「音楽を愛する人に悪い人はいない」というのを持論にしているのですが、きっとこの音楽の街・浜松で(今回も浜松に着いたら駅前で吹奏楽団がコンサートをやっていて、しばらく聴いてしまいました)この虹色の輪がさらに広がっていくのではないかと、毎年少しずつ(「さわやか」が協賛してくれるとか)新たに素敵な景色が見られるようになるのではないかと期待しています。
 
 今回はお会いできませんでしたが、鈴木げんさんが日本で初めて手術なしでの法的性別変更の権利を裁判で勝ち取ったように、浜松から全国に発信してきたこともいろいろあります。そんな浜松のLGBTQコミュニティの素晴らしさに拍手を送りつつ、また来年も参加したいし、みなさんにもぜひ浜松のプライドに参加してみていただきたいと思いました。
 
(取材・文:後藤純一)

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