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レポート:東京レインボープライド2024(2)
2024年4月20日(土)21日(日)に代々木公園イベント広場で開催された東京レインボープライド「プライドフェスティバル」が開催されました。過去最大規模で盛り上がった実り多い豊かな祭典の模様を2回に分けてレポートします。2回目は21日(日)の模様です
(パレード出発前の記念写真。Photo by カケジク)
強風のため1日目がまさかの中止となる悲しい幕開けとなりましたが(予定されていた「プライド30th スペシャルデイ」ステージプログラムに関しては、また日を改めて何かしらの形でお届けできるよう検討中だそうです)、4月20日(土)・21日(日)、東京レインボープライド(TRP)「プライドフェスティバル」が盛大に開催され、のべ27万人(土曜12万人、日曜15万人)が参加し、過去最多を記録しました。
日本でプライドパレードが始まってから30周年という節目を祝う特別な企画も行なわれ、また、「変わるまで、あきらめない。」を掲げ、結婚の自由をはじめLGBTQの権利回復(法整備など)を訴え、過去最高の15,000人が渋谷〜原宿の街をパレードしました。協賛団体数も314で過去最高となりました。
本当に巨大なイベントとなったTRP。あまりにも盛りだくさんで、カバーしきれていないところもたくさんあるのですが…2回に分けてレポートをお届けします。2回目は21日(日)の模様です。
プライドステージ(1)
TRP2024「プライドフェスティバル」の最終日、パレードが行なわれる日です。前日よりは暑さがやわらぎ、日焼け止めも必要なさそうな感じでした。人出がものすごくて、広場内を歩くのも一苦労な感じでした。
11時過ぎ、プライドステージでは、各政党政治家のスピーチが行なわれました。
まず、与党自民党から超党派LGBT議連の会長を務める岩屋毅議員、稲田朋美議員、細野豪志議員、牧島かれん議員、朝日健太郎議員が、立憲民主党からは西村智奈美代表代行、福山哲郎議員、石川大我議員、吉田はるみ議員が、日本維新の会からは高木かおり議員が、公明党からは谷合正明議員、竹谷とし子議員が、日本共産党からは田村智子委員長、山添拓議員、吉良よし子議員、伊東岳議員が、国民民主党は浜口誠議員、れいわ新選組はよだかれんさん(現在は木村英子議員の公設秘書ですが、トランスジェンダーであり、次期衆院選への出馬が決まっているということで、よださんに代表のスピーチをお願いした模様です)、そして社民党の福島瑞穂党首が壇上に上がりました。
そして、各党を代表する方1名ずつがスピーチしました(リアルタイムでとったメモを書き起こすかたちで、できる限り忠実に再現しているのですが、もし細かいところで間違いがあったらすみません)
岩屋議員は、「昨年、理解増進法を超党派議連でようやく成立させました。人が人を思う気持ちが全てです。差別する気持ちがあってはなりません。そんな社会をつくっていきましょう」と語りました。
立西村議員は、「毎年このプライドの規模が大きくなって、志を発信していることに敬意を表します。私たちはすでに婚姻平等法案を提出しましたが、一度廃案になり、めげずにまた提出しました。何とかこの国会で成立させたいです。GID特例法の要件緩和についても議論しています。国会がいちばん遅れています。何とか国際社会レベルに追いつくように頑張っていきます」と語りました。
高木議員は、「LGBTQの当事者に参加してもらって勉強会も開いています。法律に性的指向やジェンダーアイデンティティのことも盛り込まれました。異性間もパートナーシップ制度を使えるようにするなど、問題解決に取り組んでいきたいと思います」といったお話をされました。
谷合議員は、「ハッピープライド! 理解増進法ができて、国や学校、職場などで理解を深める取組みが期待されます。昨年のGID特例法についての意義ある最高裁判決、たぶん5号要件も違憲になると思います。国民の意識も変化し、司法の判断に影響してきていると思います」といったお話をされました。
田村議員は、「昨年、ここでご挨拶して、その直後にトランスジェンダーへの攻撃を許容する理解増進法ができてしまいました。教育分野や自治体での取組み、頑張っていらっしゃいます。連帯していきたいです。札幌高裁の判決に市民社会の変化を感じました。伝統って何ですか? 家制度? 多様な家族を法の下で認めましょう」と語りました。
浜口議員は、「LGBT、同性婚のことも勉強しています。違いを尊重しあう社会になるよう、理解増進法と、差別禁止を両輪として進めていきましょう」といったお話をされました。
よだかれんさんは、「私のようなトランスジェンダーを抑制する法、差別増進法とでも言うべき法が制定されてしまい、自治体ではLGBTQを教えるなという動きも出てきています。これを廃案に、または修正をしなければなりません。国際社会で『性同一性障害』はもう使われず、『性別不合』になりました。トランスジェンダーについてのことを私たち抜きに決めないでください。私たちの手で作っていきましょう」と語りました。
福島議員は、「このハッピープライドの場に庶民の頃から参加しています。札幌高裁の判決、その通りだと思いました。最高裁が性同一性障害特例法の4号要件を違憲だとし、外観要件も判断されつつありますが、よださんからもあったように、性同一性障害という名前から変えましょう。変わってないのは政治です。同性婚、どうか立法を。頑張ります」と語りました。
会場で見守っていた方たちからは時折、拍手が起きたり、声援が送られたりしていました(ヤジなどはありませんでした)
政党によって考え方や政策に違いはあれど、こうして主要な全政党の方がプライドイベントに足を運び(特にスピーチの予定がない議員も来てくださって)、LGBTQコミュニティにアピールするようになったことには、やはり感慨を禁じえません。
この後、11時半からは「CheeRing School」のジュニアなみなさんによるチアリーディングのパフォーマンスが行なわれましたが、12時からのパレードスタートに向けて出発地点に移動したため、見ることができませんでした。
(取材・文:後藤純一)
レインボーステージ「YOUTH DAY」
この日の司会は、LGBTエンタメサイト「やる気あり美」編集長の「OT」こと太田尚樹さんと、モデル・俳優として活躍する(『片袖の魚』に主演した)イシヅカユウさん。太田さんはカジュアルに、イシヅカさんはシックな装いで登場。和気あいあいとしたトークでイベントがスタートしました。
最初のプログラムは、NHK「虹クロ」in東京レインボープライド。Eテレで放送中の、セクシュアリティやジェンダーや多様性について語り合う番組「虹クロ」のトークショーです。
虹クロファミリーのパパラビーズ じんじんさん(YouTuber)とみたらし加奈さん(臨床心理士)のお2人に加え、スペシャルゲストとして昨年7月にゲイであることをカミングアウトされたAAAのメンバーでアーティストの與真司郎さんが登場。会場の歓声が本当にすごかったです!
(御三方が登場し、挨拶をして番組のVTRを見ているところでパレードのフォトセッションのほうに移動したので、トークを聞くことはできませんでした。残念!)
この日のレインボーステージの最後のプログラムは、ユーストーク。ゲストの「午前0時のプリンセス【ぜろぷり】」を間近で観ようと、16:30スタートにも関わらず、30分以上前から会場は満席でした。さすがSNS総フォロワー数550万人超え!人気の高さが伝わってきます。
聖秋流さん、momohahaさん、JESSICAさん、脇腹が痛い大内さんの4人が登場すると、一気に会場の熱気はヒートアップ。司会のお二人も交えたとどまるところを知らないトークで、4人とも関西人なの…?というくらいテンポのよい掛け合いで本当に楽しそうに話している姿が印象的でした。
熱気が冷めやらぬまま、レインボーステージの全プログラムが終了。お客様ととても近い距離で(時には一緒に)楽しめるプログラムが満載の2日間でした。東京レインボープライドの新たな試み、ぜひ来年以降も続けていってほしいなと思いました。
(取材・文・写真:カケジク)
カケジク
オープンリー・レズビアンで、2000年代にゲイインディーズミュージックシーンで活躍したり、第1回関西レインボーパレードの集会や2005年のTLGPのアフターパーティで司会をしたり、池袋のユース向けHIV/エイズ情報館「ふぉー・てぃー」の職員を務めたり、女性向けのSAFER SEXのプロジェクトを立ち上げるなど、様々に活躍してきた方です。
プライドパレード
今年は日本のパレード30周年という節目を迎え、TRPでも30周年をお祝いする様々な企画が行なわれました。フロートが60にも上り、プライドパレードが過去最大規模となったこともその一つだったと思います。
事前に、パレード参加者の方たちの待機場所が、今までのけやき並木ではなく、代々木第二体育館となることが発表されていました。出展ブースがけやき並木エリア全体に広がった(もうこれ以上ブースを増やせないくらいパンパンになった)ことも関係あると思います。
パレード参加者の方の話によると、体育館では座席に座ることができ、エアコンも効いていて、快適だったそうです。もちろんトイレもありますし。暑かったり雨が降ったりするかもしれない屋外で立ったまま待機するよりはよさそうです。
11:30から出発地点前で恒例のフォトセッションがあり、共同代表や司会の方たち、與真司郎さんやゼロプリのみなさんが並び、待ち構えていた多くの報道陣が一斉にシャッターを切っていました。
そして正午、ほとんど遅れることなく、30周年記念のプライドパレードがスタートしました。私も最初の1時間半は、出発地点で撮影していましたが、ここではカケジクさんの撮った美しい写真をお届けします。60ものフロート…果たしてTRP終了までに全部出られるのだろうか…という心配もあったのですが、スタッフの方や警察官の方がとてもスムーズに進めてくださっていました。
以下、フロート毎に簡単に紹介いたします。たいへん申し訳ありませんが、フロートの数が本当に多く(記事の分量が限界を超えてしまう懸念もあり)、途中で雨が降ってきたこともあり(カメラが濡れると大変なことに…)全部で4時間くらいかかったパレードの全てのフロートをご紹介することが難しくなり(人間なので、お腹も空きますし、トイレにも行きますし、体力的にも限界があります)…ここでは企業様のフロート以外に絞ってご紹介させていただきます。悪しからずご了承ください。
先頭は「東京レインボープライド」のフロートで、共同代表の方たちと南定四郎さんが横断幕を持ち、日本ろうLGBTQ+連盟の方たちなども先頭を歩いていました。(たぶん李琴峰さんやみたらし加奈さんらが持った)巨大なレインボーフラッグに続いて、今年も(元SECRET GUYZの諭吉さんや山口颯一さん、東郷潤さんらが持った)巨大なトランスジェンダーフラッグもあって、素晴らしかったです。その後を、11:00過ぎにステージに登壇した議員のみなさんやLGBT法連合会の神谷さんらが歩きました。
「公益社団法人Marriage For All Japan -結婚の自由をすべての人に」のフロートは、トラックに與真司郎さんと、俳優の篠井英介さんが乗り、訴訟の原告団の方たちが横断幕を持って先頭を歩き、弁護団の方たちも大勢歩いていました。例えば金沢レインボープライドの直海さんなど各地で『結婚の平等にYES!』を展開する方たち、プライドセンター大阪(虹色ダイバーシティ)の村木さん、プライドハウス東京の前田さん、浜松の鈴木げんさん、LUSHのキャンペーンのモデルを務めたゲイカップル、そして「94歳のゲイ」の長谷忠さん&ボーン・クロイドさんなど、本当にたくさんの方たちが歩いていました。
「国際外交プライド」の先導フロート(トラック)には、ステージでMCを務めた長谷川ミラさん、ブルボンヌさん、ベビー・ヴァギーさんらが乗っていました。そしてEU、米国大使館、英国大使館、北欧各国大使館の方たちが歩きました。
「Family Pride by「一般社団法人こどまっぷ」」「NPO法人 ハートをつなごう学校」「にじいろかぞく」「ひゅっ家」の合同フロート。レインボーフラッグを飾りつけたベビーカーが本当にたくさんで、子育てをしている同性カップルがこんなにたくさんいるんだ!ということが可視化されたと思います。
TRP初期の頃から協賛してくれている「一般社団法人Get in touch」。東ちづるさん、レインボーカラーのドレスを着た三ツ矢雄二さん、マメ山田さんらがフロート(トラック)に乗っていました。車椅子ユーザーの方などもたくさん参加していました。
「work with Pride」は、ご存じのように毎年秋に「work with Pride セミナー」を開催し、PRIDE指標の発表も行なっています。フロート(トラック)には八方不美人のエスムラルダさん、ドリアンさん、ホイみさんが乗っていました。
「#UpdateHIV」では、ゲイコミュニティで人気のDJ、ドラァグクイーン、GOGO BOYが乗ったゴージャスなフロート(トラック)に先導され、昨年に続き、HIV陽性であることをカムアウトした方たちが先頭を歩くという、素晴らしいフロートになっていました。たくさんのHIV関連の団体や企業の方たちが「U=U」など様々なメッセージパネルを掲げて参加していました。
「GRAMMY TOKYO」は二丁目で長年にわたって開催されているトランス男性のクラブパーティで、フロート(トラック)はガンガン音楽をかけて、クラブ系多めな参加者のみなさんもノリよく楽しんでいました。
「東京トランスマーチIn東京レインボープライド」。3月31日のトランスマーチに続き、TRPでもフロートを出展。日出郎さんや、ゴージャスないでたちの女性がフロート(トラック)彩るフロートで、音楽もたいそうカッコよく、トランスジェンダー差別へのプロテストを基調としながらも、大きなパレスチナ旗を持ってFREE GAZAを訴える方などもいました。
「国際交流NGOピースボート」「あらさんぽ in TRP(アライなお散歩の意味)」「irOdori〜彩り×踊り〜」「山城性/別關注組(香港の学生団体)」の合同フロート。「バイセクシュアルの交流会」のみなさんなども参加していました。
「YOUTH PRIDE JAPAN」のフロート(トラック)には2すとりーとのお二人と、ゼロプリのみなさんが乗って盛り上げていました。
「JAPAN PRIDE 30th」のフロート(トラック)にはマーガレットさん、ジャスミンさん、バビ江さんというレジェンド級のドラァグクイーンが乗り、砂川秀樹さん、福島光生さん、野宮亜紀さんといった東京レズビアン&ゲイパレード(TLGP)〜東京プライドパレード(TPP)時代の功労者の方々や、レインボーマーチ札幌の功労者である鈴木賢さん、そして70年代から活動していた大塚隆史さん、2005年に大阪府議としてパレードのステージでカムアウトし、感動を呼んだ尾辻かな子さんなども歩いていました。
台湾同志遊行(台北プライド)や台湾での同性婚の実現にも貢献してきた「伴侶権益推動連盟」と、HIV団体「レッドリボン基金会」が結成した「チーム台湾」のフロート(トラック)には、ドラァグクイーンだけでなく、男っぽい感じのGOGO BOYの方たちがたくさん乗っていて、台湾らしさがありました(台湾のパレードは本当に自由なので、セクシーな格好をしたゲイの方が大勢参加します)。昨年、台湾で結婚登録した劉霊均さんと柴口征寛さんも歩いていました。
「Power of Education〜自分らしくいられる未来を作ろう〜」というLGBTQユースと教育関係者のフロートもありました。
「レインボーメディアアライズ」という、メディア関係者のアライの方のフロート(トラック)に、着物姿のWAKUWAKU♡サセコさん(二丁目で人気のクイーンさん)も乗ってました。
「JAPAN PRIDE NETWORK」のフロートでは、全国のプライドイベントや映画祭の主催者の方、LGBTQ団体の方、同性結婚式などで知られる最明寺の千田明寛さんなども歩いていました。
「Miss International Queen JAPAN」は、以前はるな愛さんが優勝したタイのトランス女性ビューティコンテスト。そのコンテストに日本代表を輩出する団体ということで、たくさんのトランス女性が参加していました。
「Medical Pride」は、医療関係者の方がたくさん歩いていました。精神疾患・発達障害を抱えるLGBTQのピアサポートなどを行なっている「カラフル@はーと」の方なども参加していました。
「パートナー共済~新宿二丁目フロート~」には、たくさんの二丁目の方たちが参加していました。LGBTQイベントも毎月開催している渋谷「アマランス」のプライド・クィーン、レジーヌさんの姿も見えました。
少し雨が降ったりもしましたが、こうしてパレード30周年を記念する過去最大のプライドパレードが盛大に行なわれました。
パレードに参加したみなさんは、例年通り、沿道でパレードを見送る方たちもいたことや、PARCOにレインボーフラッグが掲げられていたことや、明治通り辺りでもロゴをレインボーカラーに変えたりウインドウにレインボーフラッグを掲げたりしているお店がたくさんあったりしたことに感動したのではないでしょうか。LGBT-Allyプロジェクトでは、今年も宮下公園のところで大勢でパレードを応援していたので、きっとうれしく感じた参加者の方たちもいらしたのではないかと思います。
個人的には、やはりパレード30周年を記念するフロートの、同じ時代に苦労してきたみなさんの姿に、こみ上げるものを感じました。同時に、同じTLGP時代の功労者でも、参加できない方たち…春日亮二さん(がんすけさん)のようにすでに亡くなってしまった方や、パレードを陰で支えた(ものすごく苦労した)にもかかわらず心に傷を負ってしまい、まだその傷が癒えていなくて参加できずにいるような方たちにも思いを馳せ、祈るような気持ちになりました。
私たちがTLGPをやっていた2000年代は、パレード参加者は多くて3500人くらいでしたが、今は1万5000人が歩いています。たとえ半分以上が企業系のアライの方だとしても、こんなにたくさんの方が歩くようになったのはやはりスゴいこと。感慨深いです。企業のフロートも、ただ自社の名前が入った横断幕を持ってお揃いのTシャツを着て歩くというのではなく、フロート(トラック)を出すところも増えてきました。
ご参考までに、ですが、例えばシドニーのマルディグラのパレードでは、カンタス航空が大きな飛行機の形のフロート(山車)を出し、従業員もオリジナルの派手な衣装+パイロット帽というスタイルで行進し、拍手を浴びています。海外のパレードも参考にしながらちょっと一工夫を加えると、観客にも喜ばれるようなフロート作りが可能になるのではないでしょうか。
ストーンウォール50周年のニューヨークプライドのパレードでは、観客の方たちがLGBTQユースの自殺防止のための24時間ホットラインを長年運営してきた「トレヴァー・プロジェクト」のようなフロートに対して、まるでコンサートのスタンディング・オベーションのように惜しみない拍手や歓声を贈り、議員の方などに対しても同様で、ずっとそんなハイテンションな感じで盛り上がっていました。私たちのためにいいことをしてくれてありがとう、差別と闘ってくれてありがとう、という感謝の気持ち、敬意、賞賛がビンビン伝わってきました。そもそも何のためにパレードをやっているのか、「PRIDE」ってどういうことなのかをみんなわかっていて、そのうえでストーンウォール50周年を心から祝っていました。日本のパレード30周年を祝うプライドパレードにそのような盛り上がりがあったかというと、正直、そこまでではなかったと思いますが、それは(TRP自体の問題というよりも、フロートが連続して行進できない交通事情とか、沿道に観覧席もなく、ずっと立ちっぱなしで応援し続けることが難しいという事情もありますし)そもそも何のためにパレードをやっているのか、「PRIDE」ってどういうことなのかがコミュニティに広く浸透していないことの表れでもあると思います。パレードに限らず、パレードに象徴されるようなこと…コミュニティの結束力(連帯)をどうやってもっと高めていくかということを、もっとみんなで考え、取り組んでいってもよいのではないかと、そんなことを考えるきっかけにもなりました。
(取材・文:後藤純一)(取材・写真:カケジク)
プライドステージ(2)
史上最多の60ものフロートが行進したプライドパレード。私は「チーム台湾」を見送った後、13時45分頃に引き上げ、プライドステージに戻りました。
14時からは、MCのブルボンヌさん、長谷川ミラさんが登場し、各国駐日大使館大使によるスピーチが行なわれました。
国で言うと、デンマーク、台湾、米国、EU、ベルギー、オーストラリア、カナダ、ドイツ、メキシコ、英国、フランス、アイルランド、チェコ、ギリシャ、リトアニア、イタリア、フィンランド、ルクセンブルクの大使や公使の方などが登壇しました。
デンマークからは、ちょうど訪日にしていたマリー・ビエアデジタル化大臣兼ジェンダー平等化大臣がスピーチしました。「ここに来られてすごくうれしいです。愛をお祝いする日、自分らしくあること、愛する人と一緒にいる権利を祝う日です。多様性と平等、人権尊重の記念日です。LGBTQの家族と自由を守ること、全ての人が自分らしくある権利。人類は虹のように美しい多様な色を持っていますが、深刻な問題もあります。昨年は世界中でヘイトや暴力が吹き荒れ、一部、権利も後退しています。許されないことです。前進すべき。デンマークでは35年前、世界で初めて登録パートナーシップ制度を作りました。平等な権利を守る努力を続けています。さらに今年は、トランスジェンダーが手術なしで法的性別変更できるようになります。強力な市民との連携で、LGBTQの権利と自由を守るために努力することを誓います。アンデルセンの「みにくいアヒルの子」という童話を思い出しましょう。子どもの頃、他の子と違うからといじめられていた子が、美しい白鳥になりました」
台北駐日経済文化代表処の謝長廷氏は、「台湾はアジアで唯一、同性婚を認める国となってから5年が経ち、1万人のカップルが登録し、400人が国際結婚しました。愛の多様性は重要な人権の一つとして尊重されています。同性婚支持率は、以前は30%だったのが、62%にもなりました。アジアの他の国でもできることです。日本も頑張ってください。全力で支持します。祝福します」と語りました。
ラーム・エマニュエル駐日米国大使は、「そう遠くない未来に結婚できるようになります。包摂的な社会になります。札幌高裁で違憲判決が出ました。支持しています。昨年は国内法も制定されました。自治体が条例をつくったりもしています。愛に基づき包摂する世界の実現を目指し、平等のために闘いましょう」と語りました。
ジャン=エリック・パケ駐日欧州連合(EU)特命全権大使は、「ここに来て一緒に歩けたことを誇りに思います。音楽があり、喜びや愛にあふれた行進でした。みなさんが同性婚でき、性自認で差別されない平等な社会を目指しましょう」と語りました。
アントワン・エヴラー駐日ベルギー大使は、「ベルギーは2003年、世界で2番目に同性婚を実現しました。私も4年前に同性婚しています。仕事でも差別されません。みなさんも同じ意見だと思います。ホモフォビアと闘い、平等な社会を目指しましょう」と語りました。
ジャスティン・ヘイハースト駐日オーストラリア大使は、「オーストラリアは一人ひとりの人権を尊重し、安心して暮らせる社会を目指しています。昨年はシドニーでワールドプライドのマルディグラが開催されました。みなさんを応援しています」と語りました。
カナダ大使館のデボラ・ポール臨時代理大使は、「単なるお祭りにとどまらず、強く連帯していくことに重要な意味を感じます。社会から取り残され差別される人の希望の光となるよう、LGBTQの権利を守ることを重要な優先課題とし、協力して活動していきましょう。カナダは2025年の万博でもパビリオンで多様性を取り上げます。これからも強く変えていきましょう」と語りました。
メキシコ大使館のサウル・サンブラーノ首席公使は、「メキシコでは性自認などに関わらず誰もが自分らしくいられ、愛し、LGBTQに対する差別や力と闘い、婚姻平等を推進しています。メキシコはドイツと共同で2026年までERC※の議長国を務め、LGBTQの権利擁護に努めています」と語りました。
※ERC=Equal Rights Coalition。LGBTIQの人権確保を目指す国際的な政府間組織で世界42ヵ国が加盟しています。日本は未加盟です。
お昼ごはん&トイレ休憩のため、いったんステージを離れ、その間、雨が降ってきて、広場にいたみなさんもテントの中に避難したりしていました(傘なしでパレードを歩いていた方も多かったと思います…)
15時10分、八方不美人のみなさんがステージに登場し、「パレードおつかれさまでした! 雨雲吹っ飛ばすぞー」と言って、パレードのためにつくった曲「地べたの天使たち」を熱唱。会場も大盛り上がりでした。続けて「死んで」という物騒な歌詞(しかもサビ)の「罰をくらえ、愛で」(でもお客さんはみんな笑顔)、「愛なんてジャンク!」を披露し、MCでエスムラルダさんが「私も経験しましたが、昔は命を懸けてパレードをやってました。なので、ぜひスタッフにおつかれさまと声をかけてください」と、ドリアンさんが「私はレインボーという言葉が好き。誰も否定しない。祝福しあう言葉。マイノリティが辛い目に遭う現状に心を寄せて、虹の旗の下にパレードを続けていきましょう」と、ホイみさんが「私は最初は沿道で見ていた人でしたが、徐々に輪に入っていって、今ではこのようなステージに。フロートから、かつての自分のような方たちの姿を見て、楽しんで!おめでとう!と心から思いました」と、それぞれにいいことを言って、軽快なリズムの「そこどいて!」、そして新曲の「野良の拳」を披露。会場のみなさんも大きな拍手を送っていました。
昨年に引き続いてのAISHO NAKAJIMAさんのライブは、さすがの、確固たる芯のようなものを感じさせる、クィアでクールでカッコよさが際立つパフォーマンスでした。衣装の着替えもあり(その間ダンサーさんたちが盛り上げてくれました)、TRPのステージにかける意気込みを感じさせました。
ドラァグクイーンのショーの前に、公式の催しとして、昨年亡くなったオナンさんとryuchellさんの追悼の時間が設けられました。オナンさんの映像がスクリーンに映し出されるなか、MCのブルボンヌさんがオナンさんについて、自分は初めはドラァグって派手に着飾る存在だと思っていたけど、オナンさんの「開くの。もっと開くの。そうすれば幸せになれるわ」というパフォーマンスに心を打たれ、ドラァグクイーンとは人々にメッセージを伝える存在でもあるんだと気付かされたと語りました。ryuchellさんも同様に、TRPのステージのパフォーマンスなどの映像が流れるなか、一緒にフロートに乗ったときのことや、ryuchellさんの勇気を讃える言葉が語られ、最後にお二人を追悼するTRPからのメッセージも映し出され、会場からも拍手が送られました。私たちのコミュニティにとって本当に大切な、特別な時間になりました。
「DRAG QUEEN SHOW」は、今をときめく(テレビにも出たりして実力も知名度も十分な)次世代をクイーン、Vera Strondh(ヴェラ・ストロンジュ)さんのショーで幕を開けました。キックボードに乗って颯爽と登場し、twerkやvogue femmeなどイマドキなダンスの技を次々に繰り出し、会場を熱くさせていました。
2組目は言わずと知れた、もはやレジェンドの域に達しているとも言えるバビ江ノビッチさん。これまで数々の(初めはメイリームーさんとエンジェルジャスコさんという豪華クイーンだった)2人のクイーンをバックに従えての往年の名曲ショー(ティナ・ターナーの「プラウド・メアリー」とか)を届けてくださいましたが、今回もそんな感じで大いに楽しませてくれました。貫禄のステージでした。
続くレイチェル・ダムールさんの音源はちゃんみなさんの「美人」。恭しくスイカを捧げ持って登場し、ゴージャスなヘッドセットを取ってカフィーヤをかぶり(よく見ると着物の帯に「PALESTINE」の文字や旗が描かれていました)、最後の「YEAHHHH!」のところでシャウトし、全身全霊でメッセージを伝えていました。観客席からひときわ大きな拍手と歓声が上がっていました。
世間では金融評論家としても活躍している肉乃小路ニクヨさん。新妻聖子さんの「ひまわり'SUNWARD'」という中島みゆきさん作詞作曲の名曲を心を込めてパフォーマンスしてくれました。魂がふるえるような、深い感動を覚えた方、少なくなかったと思います。
そしてトリを飾ったのは今年も枝豆順子さん。大人気のODOOJIのダンサーさんたちも参加し、素晴らしくハイクオリティなダンス・パフォーマンスでオーディエンスを魅了しました。最後にキッズ・ダンサーも登場してみんなでいっしょに楽しみましょう的なショーになったのは、新境地ですね。
毎年そうですが、ひとくちにドラァグクイーンと言ってもこんなに多彩で多様なのだということや、二丁目のドラァグクイーンカルチャーの最良の部分を世間の方たちに知っていただく機会にもなったと思います。素晴らしかったです。
ステージ前の観覧エリアが超満員になって入場規制もされていたなか、與真司郎さんが登場し、MCのお二人とともにトークを繰り広げました。同性愛は悪いことだと思っていて(「そんなん言ったらわたし極悪人だよー」とブルボンヌさんがフォローしていて素敵でした)、こんなの自分一人だけだとずっと孤独を感じていて、日本では誰にも言えず、アメリカに渡るしかないと思ったこと、向こうでもオープンにできなくて友達作りも大変だったということ、でも、男どうしで道端でキスしてたりするのを見たり、それを誰も気にも留めない様子を目の当たりにして、意識が変わっていったということ、そして昨年のカミングアウトを決意するに至った思いなどを語ってくれました。優しく受け容れてくれたファンのみなさんに感謝しつつ、「あきらめずに闘っていきましょう。同性婚実現を一日でも早く」ということも言ってくれました。
そして大トリのちゃんみなさんのライブです。レイチェルさんがトリビュートした「美人」もやってくれましたし(あとでちゃんみなSTAFFアカウントがXでレイチェルさんにお礼していたのも素敵でした)、MCで「愛するフェスに来れてよかった」「花粉症で苦しんでたのですが、みなさんのおかげで元気になりました 勇気を持って声を上げてくれるみんなに感謝!」「みんなのバックにあたしがついてるからね」と言ってくれたのも素敵でしたが、何よりも、純白だった衣装を、ダンサーさんたちが手のひらに塗った絵の具でレインボーカラーに染めていくというパフォーマンスにシビれました。実に熱い、カッコよくて素晴らしいパフォーマンスでした。
最後に共同代表の杉山文野さん&山田なつみさんが登場し、ご挨拶しました。杉山さんは、南定四郎さんと歩けたこと、沿道で子どもたちが手を振ってくれたことの感慨を語り、実は会場の予約の関係でTRPは13ヵ月前から準備している、今年は本当にタフだった、とも語っていました(感謝の拍手)
そして、まさかの展開だったのですが、9年間にわたって総合司会をつとめてきたブルボンヌさんの卒業が発表されました。ブルボンヌさんは、30年前、大学生だったときにゲイ雑誌でパレードの開催を知り、正直、無理だ、正気じゃないと思ったけど、当日、パレードを見に行って、楽しそうな様子を見て、気持ちが変わった、翌年はドラァグしてオープンカーに乗って行進した、パレードは人を変えるんです、私が証明です(笑)という素敵な話をしてくれました。そんなブルボンヌさんに花束が贈呈され、あたたかなフィナーレとなりました(本当におつかれさまでした)
1日目の中止は残念でしたが、土曜、日曜のTRPのプライドステージ、出演してくださった全てのみなさんがTRPのために(LGBTQコミュニティのために)思いを込めて特別なパフォーマンスを披露してくださっていて、本当に素晴らしかったです。何度となく感動し、熱いものがこみ上げました。
図らずも2日間となってしまいましたが、こうしてTRPが過去最大規模で成功を収めたこと、たくさんの若い方たちがSNSに「楽しかった」と投稿していたこと、数々の素晴らしい瞬間が生まれたこと、本当によかったと思います。
1日に15万人もの方たちが代々木公園に詰めかけるイベントで、暴力事件などもなく、極めて平和的に開催されたということ自体、本当に奇跡だと思います。トランスジェンダーに対する殺害予告が発せられる時代ですから、アンチの人たちによるテロのような攻撃が起こらないとも限らない、そういうなかで、誰でも入れるような公園で(今年はセキュリティの人も見かけましたが)いかに安全に開催するかということは、規模が大きくなればなるほど難しい課題になると思います。(1日目の強風による中止の判断についても「英断だと思う」という声が上がっていましたが)主催の方たちの、参加者の安全を何よりも重視する姿勢に感謝と敬意を表します。
ドラァグクイーンのショーの多彩さ・多様さがまさに象徴していると思いますが、一色に塗りつぶすのではなく、多彩な色を包摂しながら開催されたTRP2024は、まさに「“性”と“生”の多様性」を祝福する祭典であり、ありのままの自分を表現できるイベントだったと思いました。これからも真の意味で豊かな社会の実現を目指す自由なイベントであり続けてほしいと思いました。
主催者のみなさん、ボランティアスタッフのみなさん、出演者やブース出展者や協賛企業などのみなさん、本当におつかれさまでした。ありがとうございました。
(取材・文:後藤純一)
- INDEX
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