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レポート:東京レインボープライド2024(1)
2024年4月20日(土)21日(日)に代々木公園イベント広場で開催された東京レインボープライド「プライドフェスティバル」が開催されました。過去最大規模で盛り上がった実り多い豊かな祭典の模様を2回に分けてレポートします。1回目は20日(土)の模様です
(大黒摩季さんのライブのフィナーレの様子。写真提供:東京レインボープライド)
強風のため1日目がまさかの中止となる悲しい幕開けとなりましたが(予定されていた「プライド30th スペシャルデイ」ステージプログラムに関しては、また日を改めて何かしらの形でお届けできるよう検討中だそうです)、4月20日(土)・21日(日)、東京レインボープライド(TRP)「プライドフェスティバル」が盛大に開催され、のべ27万人(土曜12万人、日曜15万人)が参加し、過去最多を記録しました。
日本でプライドパレードが始まってから30周年という節目を祝う特別な企画も行なわれ、また、「変わるまで、あきらめない。」を掲げ、結婚の自由をはじめLGBTQの権利回復(法整備など)を訴え、過去最高の15,000人が渋谷〜原宿の街をパレードしました。協賛団体数も314で過去最高となりました。
本当に巨大なイベントとなったTRP。あまりにも盛りだくさんで、カバーしきれていないところもたくさんあるのですが…2回に分けてレポートをお届けします。1回目は20日(土)の模様です。
広場のにぎわい
前日の荒れ模様(強風)とは打って変わって20日土曜日は穏やかな快晴。汗ばむ陽気で絶好のイベント日和となりました。
20日(土)10:45頃に会場に到着すると、すでにたくさんの人たちが来られていました。いよいよTRPが始まるんだなぁというワクワク感がありました。午後になるとさらに人が増えてきて、友人・知人にもたくさん会いました。
今年も会場には本当に大勢の方たちが来られていて、いろんなブースのアトラクションを楽しんだり(ちょっと歩いてるだけで企業系ブースの方がいろんな物をくれるので、初めて来た若い方が「こんな配布イベントだと思ってなかった」と言っててウケました)、「推し」のキャストと写真を撮ってもらったり、ステージでライブを聴いたり、飲み食いしたり、日がなお祭り(フェス)を楽しんでいました。
SNSでも当事者の方たちの「楽しかった!」という声が数えきれないくらいたくさん上がっていますが、そのことが何よりもTRPの成功を物語っていると思います。
本当は19日(金)の1日目、ステージイベントが始まる15時までの間にブースを集中的に見て回ろうと思っていたのですが、あいにくの強風で中止となってしまい…。例年、ステージイベントの合間にブースも回って、パレードもできる限り全体を見届け、2日間が終わったらしかばねのようにダウン…ということを繰り返してきましたが、今年はさらにレインボーステージが増えて、ブースもけやき並木を全部使うくらいの300以上のボリュームとなり、一人では無理だと思っていたので、長年の友人のカケジク氏に応援を頼み、レインボーステージとパレードの撮影をお任せしたのですが、プライドステージとブースは自分担当なので、土曜のうちに山ほどあるブースを見て回ることが果たしてできるのか…と心配になりました。でも、中止になった以上、仕方ない、もう、できるだけたくさんカバーするという方針はあきらめて、ポイントを絞って取材しよう、必死の形相で広場を走り回るのではなく、いっそ自分も楽しもうと決めました。というわけで、ごく一部のブースに限ったかたちになりますが、多彩な出展ブースをご紹介します(取材した順です)
LGBTQツーリズムブースは、今年は大阪観光局とスペイン政府観光局でした。こちらでお伝えしたように、今年の秋、アジアで初めてIGLTA世界総会2024が大阪で開催されます(10月23日(水)〜26日(土)だそうです)。スペインは再来年の総会開催地ということで(IGLTA世界総会は奇数年がアメリカで、偶数年がアメリカ以外での開催という持ち回りになっています)、バトンを渡す意味もあって一緒に出展しているんだそう。大阪観光局の立石さんは、「私たちがLGBTQツーリズムに取り組み始めたのが2018年で、大阪の観光事業者と連携して啓発を行なったり、ドラァグクイーンを起用したりしてきました。昨年IGLTA総会が決まり、東京の皆さんにももっと知ってほしいということで、初めてTRPに出展しました」と語っていました。スペイン政府観光局の風間さんは、「スペインはLGBTQのツーリストのみなさんを積極的に受け入れています。とてもオープンです。ぜひみなさんに楽しんでいただきたいです」と語っていました(以前バルセロナのプライドを体験しましたが、本当に楽しかったです。スペイン大好き。また行きたい!)
LGBT-Allyプロジェクトでは、今年50以上の企業にご参加いただき、その取組みをパネルとして展示いたしました。たくさんの方々にご覧いただけたと思います(日曜のパレードの時には一緒に応援も。PART2でお伝えします)
同じREDエリアにあった性感染症専門の「プライベートケアクリニック」のブース。ゲイ・バイセクシュアル男性コミュニティへのアピールに力を入れていて、都営新宿線新宿三丁目駅から二丁目に行く途中の通路にSASUKEさん(ゲイシーンでトップクラスの人気を誇り、今年のOutAsiaTravelのスキーツアーにもご出演くださったGOGO BOYの方)の大きな広告を出展したことで話題を呼んだりしています。今回もSASUKEさんをはじめたくさんのGOGOさんやクイーンさんと一緒に写真を撮れるというサービスを展開し、待ち行列ができていました。
HIV陽性者支援団体ぷれいす東京、二丁目のコミュニティセンターakta、MSM ALL JAPAN(全国にあるHIVなど性の健康の情報発信をするコミュニティセンター・団体の活動をご紹介)の合同ブース。二丁目仲通交差点にHIV予防啓発のメッセージ看板を出展しているヴィーヴヘルスケアがスポンサーになっていました(素晴らしい取組みです)。ぷれいす東京(30周年だそう。おめでとうございます!)のブースでは、PrEPのご案内などのほか「第2回LASH調査報告書」(主にゲイ・バイセクシュアル男性を対象とした性行動・恋愛観・薬物使用・HIVへの意識・メンタルヘルスなど)の冊子も配布されていました。aktaのブースではこれまでの20年を振り返る「「GO 20’ Next!〜aktaのこれまで、これから展」がバージョンアップされたかたちで展示されていたほか、検査キットの自販機があったり、いろいろ楽しめるアトラクションがありました。(ぷれいす東京が30周年、aktaが20周年ということで、2024年という年は、パレードだけでなく、HIV/エイズへの取組みにとっても節目の年だったのだなぁと気づきました)
日本最大のゲイアプリ「9monsters(愛称:ナイモン)」のブースでは、チャペルが設けられ、タキシードやウエディングドレスを借りて同性結婚式を挙げることができ(カップルだけでなく、一人でも、何人でもOK)、二丁目で活躍するGOGO BOYのAkiさんが衣装も用意し、エスコート役もつとめ、周りでナイモンボーイズやドラァグクイーンのみなさんが祝福して「CAN YOU CELEBRATE?」を歌ってくれたりというハッピーな空間になっていました。幸せの鐘の音が場内に何度となく鳴り響いていました。
新宿二丁目ラウンジは、ワンコイン検査会とたくさんのクラブパーティによるミニイベント、そしてフード販売が一体となったユニークなブースでした。HIV陽性者やトランスジェンダーの方など一般の保険会社では断られてしまう方々でも加入できることで絶大な支持を得ている(二丁目で開催されるイベントなどにも協賛し、万が一事故が起こっても保険でカバーしてくれているという点でも素晴らしい)パートナー共済の小吹文紀さんは2022年、身近な20代の知人が相次いでHIV感染がわかったという経験を経て、昨年、二丁目に集まる人たちにもっと情報提供や検査を、との思いで、(保健所等の許可を得るために山のような書類を提出したり、いろんなクリニックとつながったりという尋常じゃない努力をして)aktaやパートナー共済事務所でのワンコイン検査会を実現しました。二丁目だけでなく、上野のお店やゲイのプールパーティなどでも行なうようになりました。そして今回、「2030年までのHIV流行の終結」という目標の達成に貢献すべく、TRPにブース出展し、史上初のパレード会場でのHIV検査会を実現したのです。これを成功させるために、ただ検査をやるのではなく、コミュニティのいろんな人たちとコラボし、楽しいお祭りとして展開、ドラァグクイーンやGOGOBOYのみなさんがおもてなししたり、ミニショーが行なわれたり、二丁目の飲食店のみなさんもフードを提供したり、いくつものクリニックの医療スタッフも一緒に待機するという前代未聞のブースが出現しました。すぐ近くのTRP救護ブースとも連携し、例えば熱中症で倒れた方の治療もできる体制になっていたそうです(わざわざ水道も引いたんだそう。スゴい熱意です)。こうしたみなさんの協力のおかげで、なんと、2日間で362名もの方々がワンコイン検査を受けてくれたんだそうです(たとえ無料でもそんなにたくさんの方が検査を受けることってなかなかないです。感動しかありません)
JTのブースでは、PloomX Advanced(私も持ってますが使いやすくていい感じです)のスペシャルなレインボーカラーのフロントパネルを無料交換してくれたり、アメスピのサンプルももらえたり、愛煙家には本気でうれしいサービスをしてくださってました。
レインボーカラーの梱包テープを展開したことで話題のAmazonのブースでは、LEGOのミニフィギュアをはじめ、Amazonで買えるLGBTQ関連商品を展示していたり、巨大なダンボール箱に入って写真が撮れるサービスも人気でした。
SONYのブースでは、カメラマンに写真を撮ってもらってそれを加工したりコメントをつけたりできるというデジタルフォトサービスを展開。たまたまパレード名物のポケモンコスプレの方が撮影していたので便乗して撮らせてもらいました。
大人気の「Campy! bar」のブースの前で、レインボーステージで司会をしていたアロムさんにお会いしました。デイヴァインそっくりなメイクの方は「Campy! bar」のマンガリッツァさんという方です。
IKEAがフードブースを出店。サンドイッチマンならぬホットドッグマンもいたりして(他のイベントではものすごくオシャレなインスタレーションを出品してたので)意外性もあり、親しみも感じました
プライド30周年記念のブースでは、90年代のパレードのドキュメント映像が流れていたり、寄せ書きがあったり、記念冊子やグッズなどが販売されていました。1994年にパレードを初開催したレジェンド・南定四郎さんもいらっしゃいました。
毎年恒例ですが、入口付近では寄付を募るためにたくさんのドラァグクイーンの方々がフォトブースに立っています。本当におつかれさまです!
アートの持つパワーで誰もが自分らしく生きていける社会を目指し、「Beauty Blenda」というビジュアルアートエンターテインメントショーを開催しているハウスオブ外食のブース。ゴージャス!でした。
ウォルト・ディズニー・ジャパンは意外にもTRP初出展です。レインボーカラーのスティッチ、かわいいですね。来年はぜひレインボープーさんを!とお願いしてみました。
長年パレードや映画祭にブース出展している(弊社もレインボーグッズでコラボしている)Niji-depotさん。いつも明るく元気なお二人です。L&G Timpaniという名前だった頃から数えて今年で20周年だそう。おめでとうございます!(今年中にお二人のインタビューをお届けしたいと思っています)
ラジオ第一で初めてTRPを生中継したり、日頃からLGBTQサポーティブな番組を多数届けてくれているNHK。今年もレインボーどーもくんがブースに来てました。
5月19日にZepp Shinjukuでドラァグクイーンの祭典『OPULENCE』が開催されます。日曜のプライドステージにも登場した(以前「小峠英二のなんて美だ!」のドラァグ特集にも出演していた)ヴェラ・ストロンジュさんに会えました。
新宿御苑前のLGBTQセンター「プライドハウス東京レガシー」を拠点に様々な支援活動を展開しているプライドハウス東京も、ブースを出展していました。
Marriage For All Japanのブースでは、国会議員に手紙を書こうプロジェクトを展開していたほか、(仕組みはよくわからないのですが)ARとやらの技術を使ってスマホを選挙ポスターにかざすとその候補が同性婚に賛成かどうかがわかるというなんかスゴいシステムをお披露目していました。今話題の東京15区補選から実用化されるそうです。
全国のプライドイベントのネットワーク「JPN」のみなさん。遠方からこんなにたくさん集まってくださってました(おつかれさまです)。PRIDE JAPANでも今年も頑張ってできるだけたくさんの地方のプライドイベントを紹介していきたいと思っています
こんな感じで、全体から見ると本当にごくわずかなのですが、頑張ってたくさん、紹介しました。
社内でカムアウトしてブース出展に携わっている当事者の友人・知人が何人もいて、うれしくもあり、感慨深くもありました。そういう時代になったんだな…というよりも、何十年も前から、社会を変えるために、血や汗や涙を流しながらパレード運営に関わったり、声を上げたり、企業のみなさんが取組みを進め、カムアウトできるような職場になったり、それぞれの持ち場で活動してきた一人ひとりのみなさんのおかげで、そういう時代が訪れたのだと思います。
(取材・文・写真:後藤純一)
レインボーステージ「KIDS & FAMILY DAY」
今年初めて、けやき並木内にお子様やご家族連れ、ユースの方々に向けたプログラムを行なう「レインボーステージ」が設置されました。そちらの様子をカケジクさんがレポートしてくれました。
レインボーステージの特色は、客席が自由にレイアウトできることです。プログラムによってはステージと客席の間にお子様が安心して動けるマットを敷いたりしていました。
11時に司会のアロムさんと、フリーアナウンサーの丸山裕理さんが登場。アロムさんはカラフルな、丸山さんはシンプルな(TRP2024Tシャツを着用されてました!)装いで登場。手話通訳の方も一緒に客席を盛り上げました。
ステージパフォーマンスのトップバッターはマダムボンジュール・ジャンジさん。
まずはステージのふちに腰かけて、絵本「It's Okay to Be Different」の読み聞かせ。いろんな「違ってもいいよね」をとてもわかりやすく伝えてくれる絵本です。子どもたちも一緒に「OK!」と声を出して読み進めていました。
続いて「HUGたいそう」が始まりました。自分を、隣の人を、そして地球もハグ! 最後はみんなで列車を作ってぐるっと一周。大人も子どもも一緒に身体を動かすプログラムでした。
続いて、「ねんドル」の岡田ひとみさんが登場。みんなで「レインボースイーツ」を作ります。粘土に絵の具を混ぜてこねて、思い思いのカラフルなドーナツを完成させました。
次はNHK・Eテレ「ミドリーズのツバメステージ」。子ども向けSDGs番組「あおきいろ」のこどもユニット「ミドリーズ」の1期生のうち4人が登場(あつきさん、レクシーさん、りりなさん、ゆめりさん)。YOASOBIが提供した楽曲「ツバメ」と、番組のテーマソング「あおきいろ」をパフォーマンス。最後は「ツバメ」ダンスのサビの部分の振付講座を行なった後、客席の子どもたちもミドリーズと一緒にダンス。一生懸命踊っていました。
次は体験ワークショップ「虹の羽制作」。スチロールの枠に6色のセロファンを貼って虹型の羽(ちゃんと背負えます!)の出来上がりです。
最後のプログラムはインフルエンサートーク「LGBTQ+と家族~私たち、親になりました~」。レズビアンカップルYouTuber「エルビアンTV」のREYANさんとUさん、トランス男性でBAR「2’s CANIN(トゥーズキャビン)のオーナーのMASAKIさんが登壇。親になることについてカップルの間でどんな話し合いをしたのか、家族にはどう伝えたのか、などの経験談を語ってくれました。
一緒に楽しめる形のプログラムが多く、子どもたちが夢中になって参加している姿がとても印象的な、レインボーステージでした。
(取材・文・写真:カケジク)
カケジク
オープンリー・レズビアンで、2000年代にゲイインディーズミュージックシーンで活躍したり、第1回関西レインボーパレードの集会や2005年のTLGPのアフターパーティで司会をしたり、池袋のユース向けHIV/エイズ情報館「ふぉー・てぃー」の職員を務めたり、女性向けのSAFER SEXのプロジェクトを立ち上げるなど、様々に活躍してきた方です。
プライドステージ
プライドステージ(代々木公園イベント広場の野外ステージ)では、ベビーヴァギーさん(ドラァグクイーン・タレント)と山田なつみさん(TRP共同代表理事)がMCを務め、12時から18時頃までステージパフォーマンスが繰り広げられました。どのパフォーマーさんも素晴らしくて、何度も目がうるんだ瞬間がありました。
司会のお二人が教えてくれて「へええ」と思ったのですが、ステージ上に(ゲートにも)設置されたいろんなかたちの箱は、30個あって、パレードの30年をイメージしたデザイン(インスタレーション)なんだそうです。
12:15から行なわれた「PRIDE CHOIR TOKYO」の合唱。初めに河津さんと北村さんが挨拶。それから(昔からの友人がピアノ伴奏だったのでちょっとびっくりしたのですが)『RENT』の名曲「SEASONS OF LOVE」のイントロが流れ、その瞬間、何度となく代々木公園のステージで『RENT』のキャストが歌ってくれたことや、四谷区民ホールの『VOICE』で歌われたときのこと(私も参加してました)、いろんな思い出が一気に去来して…30年を記念するTRPの最初のパフォーマンスが「SEASONS OF LOVE」だったことの感慨もあり…ジーンときました。メンバーのみなさんは、かしこまって並んで入場してくるのではなく、2人とか3人とか、友達どうし笑いあったりしながら連れ立って入場し(素敵演出)、みなさん揃ったところで歌が始まりました。続いてピンクドット沖縄でも歌われた、心に沁みる森山至貴さんのオリジナル曲。最後に、昨年の金沢レインボープライドでDJ五十嵐ゆりさんがかけていてとても励まされたことから歌うことになったABBAの「ダンシングクイーン」が披露されました。生まれ持ったセクシュアリティを(紆余曲折や苦労はあったにせよ)恥じることなく肯定し、喜びに変え、生き生きと全身で表現する様が本当に素敵でした。拍手!
続いて、ジェンダークィアだったりミックスルーツだったりプラスサイズだったりなメンバーで構成されZ世代を中心にTikTokやYouTubeで人気沸騰中の午前0時のプリンセス(ゼロプリ)と、ご存じ2すとりーとのみなさんが登場。今年の「変わるまで、あきらめない。」というテーマのもと、東京レインボープライドをともに盛り上げ、次世代へバトンをつなぐ存在として「TRP2024 公式YOUTH PRIDEアンバサダー」に就任しました。ゼロプリのみなさんは昨年もTRPに参加していたそうで、「いつかあのステージに立ちたいね、と話していたので、夢がかなってうれしい。会場にお越しいただいたみなさんには自分がいちばんかっこいい、かわいい、と自信をもって楽しんでほしいです!」と笑顔でコメント。2すとりーとのお二人は「ありのままの自分で輝きながら会場を回ってくださいね!」と参加者に向けてメッセージを送りました。
長かった髪をバッサリ切ってブリーチした素敵なヘアスタイルになった中村中さんが颯爽と登場し、ギターの弾き語りを始めました。永遠の名曲「友達の詩」を(たぶん何千回も歌っていることでしょうが)思いを込めて歌い、一気にオーディエンスの心を掴んだあと、「小豆島に住んでる友人の話です。つきあってるパートナーがいて、いつか結婚式を挙げたいと言っていたのですが、結婚もできないし世間にも認められない、この関係に未来はあるのかと思い悩み、別れてしまった。結婚が認められていたらつなぎとめられたはず…この国が二人の未来を奪っている。夢見る自由を」と語り、そんな友達に捧げる歌を歌ってくれました。八代亜紀さんに提供した「命のブルース」も、沁みた…というより、魂を鷲掴みにされた気がしました。「カントリーロード」でさえ、中さんが歌うと深い味わいのプロテストソングのように響きました。掛け値なしに素晴らしいライブでした。
SHELLYさんと小島慶子さんが登場しました。生小島慶子さんは金沢のパレードなどでお見かけしたことがありましたが、生Shellyさんは初めて。「Proud Ally」と書かれたTシャツを着てたのも素敵でした。Shellyさんは「頑張らなきゃいけないのは当事者じゃなくてアライのみんななんだよ〜」「ずっと応援することが大事」「選挙に行きましょう。同性婚賛成に人に投票して」「ぜひ自分事にしてほしい」と語りました。小島慶子さんは「30年前、パレードがあったのは知らなかったけど、性的マイノリティのことを知り始めました」「変わるまで。当たり前に生きていけるように。不安なく自己紹介できるように」「いろんな方法がある。半径5mから変えていこう」「同性婚を実現しよう」と語ってくれました。
星屑スキャットのみなさんが今年も歌ってくれました。カラフルで本当にオシャレな衣装に身を包んだ御三方の、貫禄のライブです。振付も素敵な「ご乱心」からスタートし、MCをはさんで「星屑スキャットのテーマ」「青い珊瑚礁」をメドレーで披露し、オーディエンスを魅了しました。
昨年もステージを大いに盛り上げてくれたENVii GABRIELLA(エンガブ)のみなさんはゴールド+ブラックのゴージャスな衣装で登場し、オネエのプライド(意地)をラップでアグレッシブに表現した「PAY ME」、高揚感あるEDMな「High Heels」、「生まれついたこのセクシャリティ」という歌詞がジーンとくる「Finally Found You」などを披露。MCでタカシさんは「ホント、ゲイでよかったと思ってる。わたしがゲイじゃなかったらENVii GABRIELLAを作れてないし、みんなとこうやって楽しめてないからです」と語りました。そして最後に有名曲「豪華ネェサン」で盛り上がりました。
みんな大好き清水ミチコさんのライブが始まると会場が超満員に。「イマジン」に乗せて桃井かおりさんや井上陽水さん、森山良子さん、美輪様、清志郎さんと次々にモノマネを披露したり、どんな悪事もいいメロディに乗せると感動的になる!?と言って中島みゆきさんの名曲「ヘッドライト・テールライト」をモノマネしながら裏金問題を風刺したりして、会場は爆笑の渦に包まれました。たくさん笑わせてくれたあと、最後に清水ミチコさんは「TRPには以前も出演させていただきましたが、その時よりもずいぶん大きくなりましたよね。それはやっぱりスタッフの方たちの努力のおかげだと思うんです。そんなスタッフのみなさんに捧げます」と言って、ユーミンの名曲「NO SIDE」を歌ってくれて…思わず感動させられました(モノマネなのに)。心からの拍手を送りました。毎年出演してほしいです。
東ちづるさんは、オランダに行ったときに現地の方に誘われて同性結婚式に参加する機会があって、式に参加した行政の方が「テーブルは、それぞれ違う形の脚で天板を支えている」と話していたのが素敵だった、同性婚への反対の運動も予想されたが、何もなく、ただ幸せな人が増えただけだった、これは人権だよね、と思った、というお話をしました。そして、『私はワタシ ~over the rainbow~』に続いて映画を撮った、これだけ世の中がLGBTQフレンドリーになっているのになぜ芸能界は変わらないのかというテーマのコメディだと教えてくれました。6月16日に映画の上映+講演のイベントがあるそうです。
そして今回、大トリとして大黒摩季さんがTRPに初登場(以前公式クラブイベントには出てくれたことがありました)。たぶんレインボープライドのために特別に作ったのでしょう、レインボーカラーをあしらった衣装+ヒールで(お客さんに「ほら」って靴を見せてたので、きっとそうだと思います)、「あなただけ見つめてる」をはじめ次々にヒット曲を歌ってくれました。そして「今が私の人生でいちばんカラフルだよ」「宝物を持ってない人なんていないんだよ」「もしいじめられたらマキ姐に言いつけて。あたしタイマンは強いから」「今じゃもう差別してるほうがマイノリティになってきたよね。でもね、彼らのことも許してあげてください」といったマキ姐らしいMCで盛り上げ、「ら・ら・ら」を全員で手を振りながら合唱し、最後にドラァグクイーンやキャストのみなさんもステージに登場し、(「ちょっと待って、お水飲むから」と言ってバビ江さんにマイクを渡すというむちゃぶりもしつつ)「IT'S ALL RIGHT」を歌い、最高に楽しかった一日を締めくくってくれました。
ライブの最中、曲の間で少し静かになったときに、Campy!barのクイーンさんの「ハッピープライド!」と叫ぶ声や、9monstersのブースの鐘が聞こえてきたりしたのもTRPらしい風情でした。
大黒摩季さんのライブがちょうどサンセットの時間で、だんだん日が暮れてきて、ステージのライトが輝いて、結構暑い日だったけど、ちょっと涼しくもなってきて。そんななかで、全員で手を振りながら「らら〜らら〜ら〜らら〜ら〜やっぱり〜今日も明日もあなたに〜逢いたい〜」って合唱した、あの一体感と多幸感あふれる光景を僕は一生忘れないだろうなって思いました。本当に幸せな一日でした。
こんな素晴らしいライブやトークを無料で一日中楽しめるなんて、最高ですよね。主催のみなさん、ボランティアスタッフのみなさん、そして快く出演してくださったみなさんや、協賛してくださったみなさん…TRPに関わるすべてのみなさんに感謝したい気持ちになりました。
(取材・文:後藤純一)
- INDEX
- 特集:11月20日は国際トランスジェンダー追悼の日
- レポート:金沢プライドウィーク2021
- 特集:11月に観たいLGBTQ映画・ドラマ
- 特集:10月はLGBTQ映画が豊作です
- 【インタビュー】ゲイカップルと地下鉄にいた赤ちゃんが家族になるまでの本当にあった奇跡の物語『ぼくらのサブウェイ·ベイビー』の翻訳出版を目指す北丸雄二さん
- 特集:大阪観光局が発足させた新プロジェクト「OPEN ARMS PROJECT」
- 【PRIDE月間企画】トランス女性を支援したいというアライとしての心意気――映画『片袖の魚』東海林毅監督インタビュー
- レポート:足立レインボー映画祭
- ゲイの劇団フライングステージが子ども向けのお芝居を上演
- 雨上がりの渋谷に虹が出ました:「0606LGBT新法制定を求めるハチ公前連帯集会」レポート