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レポート:みやぎにじいろパレード2023
昨年に続き11月19日、仙台市でみやぎにじいろパレードが開催されました。天候にも恵まれ、市内中心部を200名超の参加者が晴れやかに行進しました。今回は別会場でのイベントもあって、二度楽しめる感じでした
2023年11月19日(日)、昨年に続き、宮城県仙台市でみやぎにじいろパレードが開催されました。
昨年は6月12日の14時からパレードという日程・スケジュールで、梅雨時期ということもあって集合場所の肴町公園もぬかるんでいてちょっと悲しい気持ちになったのですが(パレード出発後は雨も止みました)、今年は天候にも恵まれ、パレードも暖かいお昼12時に出発する感じで、紅葉の美しい街を気持ちよく、晴れやかな気持ちで歩くことができました。
パレード
肴町公園には明らかに昨年よりも多い、たくさんの方々が集っていました。
13時50分頃、主催団体・にじいろCANVASのしゅんさんからご挨拶と注意事項の説明があり、メディアの人たちが自己紹介し(地元のテレビ局や新聞社がこぞって来られていました)、14時過ぎにパレードが出発しました。
実行委員の方たちを先頭に、東北各地のプライドの方たち、新潟や東京のプライドの方たち、富山の団体の方、プライドハウス東京の方などが続き、清貴さんとコーラス隊のみなさん、LUSHの店員さんや(仙台でもチャリティ企画を実施してくださったそうです)、外国人の方たち、「会いに来る七夕飾り」のみなさんなど、カラフルで多様な方たちが歩きました。最後尾は撮影禁止ブロックでしたが、こちらにも10人くらいの方が歩いていました。トラックはなかったのですが、スピーカーをキャスターに乗せて音楽が流れるように工夫されていました。
肴町公園を出発したパレードは、仙台随一の大通りの一つ・青葉通に出ました。後頭部からサイドにかけて「MNP2023」という文字が浮かぶようにカットされた小野寺真さんが盛り上げ、みんなで「We have pride!」とコールし、紅葉が美しい青葉通を行進。そしてパレードは、仙台のメイン商店街であるアーケードの一番通商店街(ブランドーム)へと進んで行きました。ずっと先頭でLGBTQについて市民に理解を呼びかけるようなメッセージがマイクで語られていたほか、商店街では、信号待ちで止まっている間に清貴さんが「あなたにスマイル」「WE ARE ONE」などを歌ってくださる場面もあって、とても素敵でした。
広瀬通を渡り、三越の横を通って、定禅寺通りを左折して、国分町(東北一の繁華街。ゲイバーも国分町にあります)の元鍛冶丁公園に帰着するという、にぎやかな場所を行くコースでした。
昔仙台に住んでいて、今は他の地方に住んでいるゲイの方が(ふだん着ないのに)スーツ姿で参加していたり、今回生まれて初めてパレードに参加したという東北在住のゲイの方が勇気を出して撮影禁止エリアを歩いていたり、いろんな方が、それぞれの思いを胸に、仙台の街を歩いていました。スタッフの方たちも、小野寺真さんが参加者のみなさんを鼓舞して盛り上げていたり、小さな赤ちゃんを抱っこしながら写真撮影をしている方がいたり、当事者の方もアライの方もそれぞれにパレードへの熱い思いを持っている様子が伝わってきてジーンときました。
参加者のみなさんの楽しそうな笑顔や、沿道の人に一生懸命手を振ったり、「We have pride!」と大きな声でコールしたりする、元気のよさが印象的な、とても晴れやかで、いいパレードでした。
パレード後の集会
元鍛冶丁公園にはステージがあり、(用事があってお帰りになる方もいらっしゃるかもしれないので)先に集合写真を撮ったあと、エンディングイベントが行なわれました。
最初に、東北各地のパレードの主催者の方がご挨拶しました。
◎青森レインボーパレードの方
「今日こうやって歩けることがとてもうれしいです。地元の方の勇気を尊敬します。遠方から来られた方の行動力にも、スタッフの方の志にも拍手を送ります。青森は来年は6月30日にパレードをやります。一緒に歩きましょう」
◎虹をかける会の方
「9月に庄内レインボーマーチを初開催しました。私は19歳から国分町で働いていて、戸籍変更もしました。思い出の仙台をみなさんと一緒に歩けてうれしいです。酒田市ではパートナーシップ制度ができました。来年も庄内レインボーマーチを開催予定です」
◎やまがたカラフルパレードのみなさん
「去年初めてパレードを開催して、今年も開催できました。少しずつ、多様な性を尊重することができるようになってきています。東北のみなさんのおかげです」
◎秋田プライドマーチのみなさん
「参加できてうれしいです。秋田も広いですが、宮城も広く、多様です。そんな宮城を愛しています。胸がいっぱいです。楽しんで歩けました」
◎いわてレインボーマーチのみなさん
「みなさんと歩けたこと、誇りです。宮城に近い一関で学生時代を過ごしていて、悩んでたのですが、唯一の友人が仙台にいて、仙台に通った思い出があります。みなさんの地域地域でいろんなつらいことがあると思いますが、仲間がたくさんいるということに胸がいっぱいになります」
◎ふくしまレインボーマーチのみなさん
「今月パレードをやりました。宮城やいろんなところからたくさん来てくれて、ありがとうございました。みやぎにじいろパレードのなまってるスローガンが大好きです。福島だと「なんだっぺ」になります。これからも力強く、堂々と社会を変えていきましょう」
それから、今回来られなかった「ろうLGBTQ東北」のメッセージが代読されました。
そして、仙台の誇りである天道清貴さんが登場し、生まれ育った街をパレードできて感慨深いです、高校時代のことを思い出しましたと語り、「はじまりはありがとう」をワンフレーズだけ歌ってくれました(フルで聴きたかったなぁと200人のみなさんが思ったことでしょう)
そして、パレード実行委員会の共同代表のお二人と、パレード主催団体であるにじいろCANVASの共同代表の方々がご挨拶しました。
◎しゅんさん(共同代表)
「去年から代表を務めています。東北すべての県でパレードが開催されたこと、今日開催できるのも、長年提起し続けてきた方たちのおかげです、敬意を表します。多くの企業がLGBTQ研修をするようになっていますが、シスヘテロ(性的マジョリティ)の方が性を問い直すことができてるのか疑問です。掛札悠子さんの『「レズビアン」である、ということ』に、「私は何?と問うことはあなたは何?と問うことだった」「レズビアンと異性愛との境界はどこにあるのか。あなたはなぜ輪郭を辿ってみないのか」といったことが書かれていて、自分の性に気づくことができました。多くを持っているマジョリティの人たちが、自分を問い直すきっかけになってほしいです」
◎こぐまさん(共同代表)
「私は当事者として、それほど壁にぶつかるということはありませんでした。学生のときからLGBTQサークルに入っていましたし、メディアが期待するようなドラマチックなことは経験していません。そうではなく、平等じゃない状態をそのままにしないこと、女性差別も、日本以外にルーツを持つ方への差別も、みんながいつもマイノリティになりうるということ。“かわいそうなLGBTQ”ではなく。自分の無知や加害性にも気づくこと。不当に扱われないように声を上げていきましょう。身近なところから」
◎小浜耕治さん(にじいろCANVAS共同代表)
「LGBTQもかけがえのない大事な存在であるということのために、1982年から活動してきて、いろんな人から学んだ。掛札さんも仙台に来ました。震災の後、東北各地に団体ができ、活動が盛んになって、東北レインボーサマーというイベントを開催し、2016年には「OUT IN JAPAN」の撮影会もあって、そこで真さんと会いました。活動を始めたら協力してくれる人が現れて、でも、継続していくためには、たくさんの仲間とやることが大事だと学びました。仙台市と2年間、協働事業をやって、そのボランティアスタッフのままあひるさんがパレードをやろうと言って、それでにじキャンができた、彼女はスーパーアライです。各地の「おらほのパレード」の一つひとつが、声を上げてくれた方がいて、成り立っている。そのままでいることを大切にしよう。虹色の道を作っていこう」
◎ままあひるさん(にじいろCANVAS共同代表)
「私は結婚していたときに、姑さんから『奥さんはスポンジよ』と、夫の愚痴やなんかも何でも吸収するのだと言われました。私の理不尽は、いつしぼってもらえるのかと思いました。娘の学校に小野寺真さんが講演に来て、そこで学んで、自分にも人権があるんだと初めて気づきました。レインボーでボランティアをして、その時に『宮城でもパレードやろうよ』と言って、他のみなさんは自信がなさそうな様子でしたが、結果的に背中を押せたかな、と思います。どんな人も生きやすい社会を実現しましょう。仲間がいるから。ここに味方がいます」
◎小野寺真さん(にじいろCANVAS共同代表)
「トランス男性の小野寺真です(手話で)。プライドは日頃から頑張っているみなさんへのご褒美の日だと思います。自分に拍手しましょう。今日歩いた道は、いつもの道です。私も公園で一人泣いていました。そういう人いると思います。レインボーは多様性のシンボルですが、虹の外側に赤外線と紫外線があって、紫外線っていやな存在だと思うかもしれませんが、植物には大切だという話を聞いて、あの時泣いてた公園が笑える場所になりました。活動を続けていくことで変わっていくことがあります。私たちも、ぶつかり、支え合いながらやってこれました」
別会場の「うぢらで虹かけっぺし」のご案内があり、最後にもう一度みんなで「We have pride!」と声を合わせ、お開きとなりました。
「うぢらで虹かけっぺし」@エル・パーク仙台
今回は三越定禅寺館にあるエル・パーク仙台ホールで「うぢらで虹かけっぺし」というイベントが同時開催されていました。
東北でHIV予防啓発の活動を行なう「やろっこ」や、「結婚の自由をすべての人に」、にじいろCANVAS、県北のLGBTQ団体、東北大のサークルなどがブースを出展していたほか、性別で役割を決めつけることはせず、自身の表現したいままに踊れるバレエレッスン「irOdori」のバレエ体験会や、仙台のレズビアンバー「楽園」のみなさんによるパフォーマンスなども行なわれました。また、協賛店であるゲイバー「Tank Dump」のマスター&スタッフのみなさんも来られていました(眠いでしょうに、12時のパレード出発の時には、集合場所に見送りに来られていました)
みなさん、自由に出たり入ったり、ブースを見て回ったり、思い思いに過ごしていました。
スタッフのみなさん、パレードと合わせて、このような素敵なイベントの開催、ありがとうございました。おつかれさまでした。
仙台はとてもいい街なので、来年はぜひみなさんも!
今回の仙台訪問は(滞在時間22時間くらいでしたが)個人的に、本当に実りの多い、充実した旅になりました。
いくつか、アライのみなさんにもお伝えしたいお話もあるので、お伝えします。
パレード前夜の土曜の夜に仙台に着いて、小雨模様ではあったのですが、まずHIV予防啓発団体「やろっこ」が運営するコミュニティセンター「ZEL」に、手土産を持ってご挨拶に行きました(今年の6月半ば、仙台のAnegoさんが企画した「華杜Avenue」という定禅寺通りのケヤキ並木の緑道でドラァグクイーンのパフォーマンス&撮影会が開催され、仙台のみなさんの温かさに触れて感激し、本当にいい思い出になりました)。実はAnegoというLGBTQについての団体は、HIV予防啓発団体「やろっこ」のふとしさんが中心になってやっていたので、「ZEL」にご挨拶に行ったのです(今年亡くなった不世出の天才ドラァグクイーン、オナンさんも具合が悪いなか「華杜Avenue」に出演してくださっていました)
「ZEL」というコミュニティセンターは、HIV予防啓発を主眼としているのですが、LGBTQのみなさんが集まる日も設けられていて(パレードの日もそうでした)、東北のLGBTQ団体の方が集まるスペースとしても活用されています。
それから、ゲイバーに2店、お伺いしました。
最初のお店では、あまりそういうお話をしたことがなかったのですが、パレードの取材に来たんです、と言うと、パレードのことやパートナーシップ制度のことなどについてもお話できて、貴重な時間を過ごせたと思いました。
それから、今年6月の周年パーティ(仙台では本当にひさしぶりのゲイナイト)に全国から350名ものゲイのお客さんを集めたというスゴいお店「Tank Dump」に行ったのですが、立ち飲みの方もいるくらい、大盛況だったのですが、私がパレードの取材に来たと言うと、マスターが、仙台の活性化のためにパレードに協賛した、明日も行くつもり、と言って、お客さんにも「明日パレードだからね」と言い回ってて、ちょっと感動しました(地方に暮らすゲイの方の多くは、とてもじゃないけど地元でカミングアウトできないし、パレードも見に行くことすら躊躇してしまう、というのが正直なところだと思います。実際、地方のパレードではゲイの方の参加は本当に少ないです。そんななか、まさか東北で、ゲイバーのマスターがお客さんに「パレード行きましょ」と誘う光景を目にする日が来るなんて、考えてもみませんでした。東北で生まれ育った人間としては、本当に感慨深い瞬間でした)。パレードの開催自体も素晴らしいですが、この出来事に立ち会えたことにもいたく感動しました。来てよかった、と思えました。
そんな感じで、結構遅くまで飲んでしまいましたが、とてもいい「前夜祭」になりました。
今回、福島から来た同世代の友人と一緒に飲みに行ったりしていたのですが、翌日、眠い目をこすりながらその友達とランチをした後、大急ぎで肴町公園に向かい、彼はふくしまレインボーマーチの時は、「職場の人に見られるかもしれないから絶対に歩かない」と言っていたので、今回もパレードには参加せず、福島に帰るのかな?と思っていたのですが、一緒に来て、百均で買ったサングラスをして撮影禁止ブロックを歩いていました。パレードというものに参加したのが生まれて初めてだったそうです(そのことにも感動しました)。歩き終えて、「どうだった?」と聞いたら、ドキドキした、と言いながらも、それなりに楽しさを感じたように見えました。
もしかしたら、そういうふうに今回、生まれて初めてパレードに参加したという方たちがほかにもいらしたのではないかと想像します。
地方の当事者の方にとっては本当にハードルの高いパレードですが、ちょっと見に来るだけでも、沿道で応援してくださるだけでも(歩いてるこちらもうれしいです)、そして、さらに一歩を踏み出して、撮影禁止のところで歩くというだけでもスゴいことだと思います(「偉大な一歩」です)
東北がまた少し、「帰れる故郷」に近づいた、そんな気がしました。
仙台は、いろんなところで人々の温かさに触れることができ、感動的なドラマを体験できる街だと思います。
みなさんも来年ぜひ(牛タンを食べたり観光したりも兼ねて)仙台のパレードにお出かけください。
(取材・文:後藤純一)
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