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レポート:work with Pride 2023セミナー

11月7日開催の「work with Pride 2023セミナー」の模様をレポートします

11月7日、経団連会館で「work with Pride 2023」が開催され、AAAの與真司郎さんや、『トランスジェンダー入門』共著者の高井ゆと里さんらがゲストとして登壇したほか、企業経営者のアライネットワーク「Pride1000」の設立が発表されました。レポートをお届けします。
(取材・文:後藤純一)



 今回、総合司会を務めたのは、MSD株式会社の齋藤浩太さんと、ライフネット生命保険株式会社の桶本裕介さんでした。会場の経団連会館・国際会議場は2階までいっぱいです、たくさんのご来場ありがとうございますとご挨拶し、この会の趣旨の説明や、スケジュールの説明がありました。
  
 それから、小池百合子東京都知事からのメッセージが紹介されました。
 司会のお二人は、東京都で「パートナーシップ宣誓制度」がスタートして1年が経ち、1000人が宣誓した、これは決して小さくない数字だ、こうした取組みが広がることを期待します、とお話しました。

<キーノート:與真司郎さん
 今年7月にカミングアウトしたことで話題のAAA與真司郎さんが登壇し、松中権さんがお話を聞くかたちでキーノートのトークセッションが行なわれました。

――緊張してますか?
「そりゃあ緊張するでしょう。これだけたくさんの方を前に」
――今日はありがとうございます
「こちらこそ、貴重な機会をいただいてありがとうございます」
――今年の7月29日にカミングアウトを果たし、海外でもニュースになりました
「びっくりしました」
――職場をどう変えていくか、ということが今日のテーマなのですが、いくつか質問を。ご自身をパブリックに語りたい、語らねばと思ったきっかけを教えてください
「いろんな理由があります。一つは自分のために。なんでカミングアウトしたのって言う方もいるけど、ずっと隠していくのはつらいことでもあり、週刊誌とかSNSとかで暴露されるのとは違うかたちでファンのみなさんに伝えたかった。わかってほしいという気持ち。小さな頃、テレビで、男同士が気持ち悪いって言ってて、自分は間違ってる、世界で一人だ、誰にも相談できない、そういう思いをしてきたけど、今の若い方たちや、OUTできない方、そういう方に、独りじゃないってわかってほしかった。自分がどう生きていけばいいか悩んでいたので。勇気を与えたかった」
――カムアウトした後に、何か、こんなことが起きてしまうとか、躊躇はなかった?
「家族に言えたのは、32歳。コロナの間。悩んだ。バレたら芸能界で生きていけないと思っていた。テレビにも出られないと常に思っていた。14歳から芸能界にいるので。若い時から、いろんなことを考えていた。本当は、もっと芸能界で挑戦したかった。メンタルも落ちてた。このまま日本にいたら人生が狂ってしまう。それで米国に行く決断をしたんです」
――報道では英語を勉強、新しいエンタメに挑戦とされていましたが…
「正直、ゲイじゃなかったら行ってないです。日本で歌やダンスや演技に時間を割いていたと思う。アメリカしかないと思いました。いろんなカルチャーを知って、自分が変わった。ストレートもゲイもみんなが普通で特別扱いじゃない。それが気持ちよかった。友達になった人に『パートナーいるの?』って自然に聞かれる。年齢とかジェンダーも関係なく。そいういカルチャーが衝撃でした。カミングアウトの前は、日本に、大好きな国に、嫌われると思っていた。もしそういうことが起きたとしても、アメリカで生きていけるようにというオプションを作っていた。だから時間がかかったんです」
――カミングアウトから4ヵ月が経って、変化は?
「僕、あの次の日にアメリカに帰ったんです。なので、日本がどういう状況か、わからなくて。なんか思われたり言われたりしてるんじゃないかと思い込んでいて。考えすぎでした。もっと普通に生きていくことを日本でもしていくべきだと思いました」
――意外と当たり前に、ポジティブに受け止められた
「いまだに世界中からDMが来ます。親にカミングアウトできたとか、映像を見せて、両親がすごい前向きに変わってくれたとか。海外からも。いまだに来ます、毎日。そういう方たちのために頑張っていきたい。お母さんと息子さんが、たまたまファンで、カミングアウト後に、息子さんがカミングアウトして、お母さんがすごく理解してくれたというメールをいただいて、本当にやってよかったと思いました。お母さんも、たぶん、與真司郎がカムアウトしてなかったら、見方が違ったかもしれないって言ってくださって」
「周りはみんな、ポジティブに受け止めてくれて。スタッフは初めすごく驚いてて、どんな言葉を返したらいいかわからない様子でした。そうだったんだ、大変だったね、とか、なんでもよかったのに、気を遣って。みんなに説明をして、わかってくれて。話し合うことは大事だなと思いました。異性愛者が同性愛者のことがわからないのは当たり前だし、ジャッジをせずに話していくことが重要だと感じました。アメリカもテレビで普通に話されたり、俳優やシンガーのカミングアウトもとても多いので。アジアもそうなったらいいなと思います」
――與真司郎さんのカミングアウトでそうなっていくといいですね。職場環境を変えていくということについて、お考えをお聞かせください
「ノーマライズすることが夢です。ゲイだからレズビアンだから。だから何?って。特別扱いじゃなく。ふつうに接してほしいですね」
「会社で言いづらいっていうメールを結構たくさんもらいます。芸能界も一緒。僕はなかなか言えなかった。スタイリストやメイクさんにすら言えなかった。サポートしてくれるとは思ったけど、言ってしまうと、重荷になるし、言われた方も隠さないといけない。ゲイですけど何か?ってなればいいと思う。よく言われるのが、『初めてです』『人生で会ったことがないです』ということ。いるんだけど、言えてない環境がある。もちろんカミングアウトが正解ではないし、しなければいけないわけじゃないけど、アライのみなさんがカミングアウトしやすい環境を作ってくれると助かります」
――今日たくさんの企業の方が来られています。カミングアウトしやすい環境を作っていくために、どういうことが必要だと思いますか?
「ふつうに、『昨日LGBTQの映画を観てよかった』とか『ゲイの友達がいてさ』とか、何気ない会話があると、話しやすいんじゃないでしょうか。逆に『気持ち悪い」とか言われると、無理だと思いますよね」
――気持ち悪いとか言っちゃう人を諌めてくれると助かります?
「そういう人がいてくれると、本当に助かります。LGBTQの社員ももっと頑張れると思う。やっぱり僕は、正直、クローゼットの中にいた時はつらかった。もっと前に言いたかったけど、芸能界を追われる怖さがあって。大きい企業さんから変わってくれると、日本が、世界が変わると思います。みなさん、よろしくお願いします」
――最後に一言
「こんな機会をいただいて、ありがとう。まずは企業さんから、変わってくれると、芸能界も変わるし、たくさんの命が救えると思う」
――命というお話がありましたけど、まだまだ性のあり方で悩んだり、傷ついている方もたくさんいます。そういう方のためにも、変わっていきたいですね。今日はありがとうございました。



<経営者アライネットワーク設立>
 再び松中権さんが登壇し、経営者アライネットワーク「Pride1000」の設立について、説明しました。
 wwPは職場環境を変えることを目指して2015年にスタートし、さまざまなプロジェクトを展開してきました。ポジティブな声の可視化を目指し、実行委員会の企業とミーティングを重ねた結果、この企業経営者のネットワークという新しいプロジェクトが生まれました。経済団体や、たくさんの企業の方が呼びかけ、賛同をしてくださってます。

 続いて「Pride1000」設立記念のパネルトークが行なわれました。
 モデレータを務めるのは、オルガノン株式会社の櫻井亮太代表取締役社長、そしてライフネット生命保険株式会社の片田薫執行役員、株式会社電通グループの北風祐子Chief Sustainability Officer、パナソニック ホールディングス株式会社の三島茂樹執行役員が登壇しました。(以下、「――」は櫻井さんのコメントです)
――最初に、自己紹介を。私から。オルガノンはウィメンズヘルスの向上に取り組む会社として、多様性の尊重をコアバリューに掲げています。
片田さん:ライフネット生命はダイバーシティ専任部署はなく、部署横断でダイバーシティチームを作っています。2015年に同性パートナーを受取人にできるようにしましたが、その取組みを推進したのが現在の社長の森で、私は当時、その手続きの事務フローやマニュアル作成を担当していました。
北風さん:私は、電通日本のチーフダイバーシティオフィサーでサステナビリティも担当しています。世界のチーフエクイティオフィサーの会議があって、女性の割合を45%にという話があり、なんで半分じゃないのかと問うと、わからないの?ノンバイナリーの方がいるからだよ、と言われ、まだまだだなと思いました。自身の本質的な部分を隠さないといけない苦しさがあると、仕事でも力を発揮できない、信頼関係を築けない、話したければ話せるような職場にするために、できることを全部やろうと。同性婚法制化のBMEにも賛同してきました。
三島さん:パナソニックでDEIやCSRを担当しています。與さんが先ほど企業が変わってほしいとおっしゃっていました。当社は105年前からの古い会社ではあるのですが、2016年に同性パートナーも婚姻相当と認める福利厚生制度の改正を行なったり、LGBTQの社員も安心して働ける、心理的な安全性を感じられるよう努めてきました。
――パナソニックは23万人の従業員を抱えているので、パナソニックが変われば日本の0.2%が変わることになりますね。
三島さん:そうですね。私も経営陣の一人として発信してきてます。
――私も含め、皆さん、今回の経営者アライネットワークに参画していらっしゃいますが、どういう思いで?
北風さん:一つは、企業として、あらゆる差別を容認しないという強い意志を、約束を示したいということです。社の行動憲章にもはっきり明記しています。もう一つは、社員が100%自分の力を発揮できる基盤を整えること。BMEへの賛同、慶弔金や給付金の支給を異性と同じように与えられるよう人事制度を改革し、雛形を作って同じにしてくださいと全社を変えるチャレンジもしています。
片田さん:制度を整えていくのも大事ですし、大きいのは、制度より風土。制度は土台。会社の中で、経営者がアライであると公にすることで、社員の心理的安全も変わってくる。マニフェストでも多様性を謳い。新しい世界を作るうえで必要なものだと思っている。従業員が気持ちよく働ける環境づくりが、新しいビジネスにもつなげられる。
――制度と風土、両方大事 
三島さん:会社の中だけで変われるところと、国の法律で定められている部分がある。2016年から配偶者の解釈に同性婚を含むということをやってますが、法的に認められないことも多い。同性婚賛同のアクションも参加しています。人事としては、仕事で社員が能力を発揮できて、生産性が高くなることが人事の役割だし、個人としては、私生活でも、安全を担保してほしいと思い、法律でしっかりやるべきだと思っています。企業で誰が代表してやるべきかとなると、手を挙げる人がなかなかいないので、私がやってます。早く実現しないかな。お声かけがあれば、出て行って話しています。
――この経営者アライネットワークに期待すること
三島さん:與さんが「ノーマライズを」とおっしゃった。たぶん5年後、10年後には、そういう社会に近づいていると思う。今から、意識的に、力を入れていこう。パナソニックも一緒に。当事者がどういうふうに考えてるかということや、立ち位置は、なかなかわからない。こういう場に参画することで、先端がどれくらいのところをいってるかということもわかる。「Pride1000」は日本の未来を作っていく場だと思う。
片田さん:生保の受取人になれるという対応は、当事者の方たちがものすごく喜んでくれて、個人の問題ではなく社会の課題だと認知されたことが大きな成果だと思っています。今では、多くの保険会社が同じ対応をしています。突拍子もないことを話しますが、ネアンデルタール人がホモサピエンスに取って代わられた、なぜ滅んだかというと、ネアンデルタール人は家族単位だったんですが、ホモ・サピエンスは集団で社会をつくり、情報交換を行なっていたからだと言われています。課題を可視化していくことが、推進力になると思います。
北風さん:一社でできることは限られていて、無力感を感じるし、答えもない。「Pride1000」は、個人がアライだと示せるのが素晴らしい。そこに、より大きな解決策とかが見えてくるのでは。国の問題は、個人では太刀打ちできないと思いますが、希望を持った個人が1000人集まれば、変えられると思います。大きな夢。期待します。
――経営者アライネットワークに1000人が集まると、日本もきっと変わります。トップの方々の参加を期待します。もう一つ、今日の会場を見渡したら、女性が多いですよね。ぜひ男性も関心を持ってほしいです。日本を変える原動力になりましょう。



<基調講演:高井ゆと里さん
トランスジェンダー問題: 議論は正義のために』の訳者であり、『トランスジェンダー入門』共著者である高井ゆと里さんが、「トランスジェンダーについて知っておくべきこと」と題した基調講演を行ないました。
 トランスジェンダーのリアリティや直面する困難、社会的課題について、目の醒めるような解説をしてくださって、素晴らしかったです。このお話が多くの企業の方に届けられたことの意義は計り知れないものがあります。







 企業との関わりで言うと、「これは面白くない話ですが」と前置きして、米国のマスターカードの「True Name」という取組み(IDの性別が見た目と違うことでトラブルになったりするため、法的登録上の性別ではなく「本当のあなたの名前」をマスターカードに書けるというもの)について、当事者は「シラけている」「しゃらくさいと感じる」という話が紹介されました。なぜなら、トランスジェンダーの方たちは安定した職に就くことが難しく、貧困状態にある方も多いため、そもそもクレカの審査に通らないからです。当事者の実態と乖離があるのです。会場のビジネスパーソンの多くが、ハッとさせられたのではないでしょうか。
 高井さんは、働きやすい職場を自社に創造することは大切ですが、安全に生きられる社会をつくる手助けをしてほしいと語りました。「アライであろうとするのであれば、現実を知ってほしい。安全に生きられる基礎のために、みなさんの力を使ってほしいです」



 
<アライに関するパネルトーク>
 休憩を挟んで、第二部は、wwP実行委員会参画企業の4名の方が登壇し、アライについてお話しするパネルトークを行ないました。

モデレータを務めたのは、大日本印刷株式会社 ダイバーシティ&インクルージョン推進室の森伸穂さん。それから、ブルームバーグ日本でD&I採用を担当する高橋弦也さん、MSD株式会社の人事グループ ディレクターの松岡裕一郎さん、NTTドコモ 総務人事ダイバーシティ推進室の小宮麻咲さんが登壇しました。
(以下、「――」は森さん)
――ポジティブな声を可視化するうえで、アライの存在は重要です。wwP実行委員会では、企業でよりいっそう取組みを進めるうえで、アライの力が大きいと考え、「アライガイドブック」というWebコンテンツを立ち上げました。3名にお話を聞き、考えていきます。会社でLGBTQへの取組みやアライ活動で感じていることについて教えてください。
松岡さん:人事の取組みやDEIの推進、LGBTQ関連の制度として社内のパートナーシップ制度、SOGIハラ禁止の明文化などに取り組んできました。トップダウンの取組みとして、DEIの推進の経営宣言の中にSOGIも盛り込んでいる、ボトムアップの取組みとしては社員ネットワーク、ERGで 啓発イベントなどを行なってきて、会社とコラボし、経営陣がスポンサーになったりしている。イベントに参加するメンバーが固定していて、まだ無関心な人もいるので、その人たちを巻き込んでいこうと。そこが伸びしろだと思ってます。 
小宮さん:NTTグループとして制度対応を行ない、そのほかにもTRPに多くの社員が参加したり、オンラインで情報交換も行なっていますが、まだ活性化には至っていないと感じています。 
高橋さん:私自身もゲイで、社内のERGのサポートをしているので、社員目線でどんなことが必要かなど、伝えることができています。印象的な事例があって、海外の社員も多い会社なので、自分の名前の後に自認性に応じたプロナウン(heとかsheとかthey)をつけられるんですが、ゲイの方が、英語で呼ぶとき、どれがいいかを自然に聞いていて、トランスジェンダーの方も嬉しそうだったということがありました。ともすると、LGBTQコミュニティの中でも、ジェンダーのマイノリティには理解のないLGBの方もいたりするのですが、ゲイもトランスジェンダーの方にとってのアライになるのは難しいことではないと思います。もう一つ、人間は一つの側面しかないわけではなく、LGBTQで障がいを持っている方、家族関係でテーマを抱えている方などもいらっしゃるということ、インターセクショナリティが重要だと考えています。
――取り組む上で何が大切だとお考えですか?
小宮さん:全ての社員が働きやすい環境。LGBTQ、障害、ジェンダー、シニア、育児をしながら、介護をしながらの方、多様なマイノリティの方がいて、LGBTQってその中の一つであって特別じゃない、個性の一つという理解です。アライとして表明する勇気がない方は、必要性を認識してほしいです。
松岡さん:「理想のアライ像」的な、いきなり100点満点を求められるとできないという話があって、敷居が高いと感じる方のハードルを下げることも大事。まずは関心持って、参加してもらうことが現実的なアプローチ。高井さんのお話は重く受け止めた。こういうことも、誰かが関心を持って、誰かが教えて言って、高め合うことが大事。
――どういう人がアライと言っていいのか、ハードルを感じるという声。アライの定義、何をすればアライか、ということについて、アライガイドブックのコンテンツを作りました。その中に定義として「LGBTQを理解したい、偏見を持たずに受け入れ支援したいという気持ちを持った方」と記してあります。この点について。
高橋さん:偏見なしということは大事。松中権さんが実行委員会の中で、日々の行動は無意識のカミングアウトに溢れている、男性用のトイレに入り、週末、奥さんとどこそこに行ったという話をしている、という言葉があって。私の過去を振り返ると、そういうことを言えない時代があって、暗闇のようでした。つま先から進んだ先が崖なのか、道なのか、確認しながら過ごしていた。ただ、手帳や何かにレインボーのシールが貼ってある、ネックストラップがレインボーカラーになってると、暗闇に1本のろうそくが立ったような気持ちがした。わざわざレインボーに変えるところにあたたかさを感じた。小さなろうそくになろうという気持ちが積み重なることで、生きやすい環境になっていくのではないか。
――小さな光を積み重ねていくというお話について
小宮さん:LGBTQの理解はしてないけど、表明していない人に知ってほしいこと。アライとしての行動で、誤った発言をしたら謝罪、対話しましょうということがガイドブックに書いてあって。間違ったらいけないと思っていたけど、ホッとした。大事なのは、一人ひとりと誠実に向き合うこと。ぜひ、一歩を踏み出せない方には、自信を持って、足元を照らす灯りになってほしい。
松岡さん:共感しました。いきなり100点を取ろうと思うと話せない。間違いに気づいたら、お詫び・訂正し…不意に、20年前の出来事を思い出しました。人事、セクハラの研修をやってた時に、コミュニケーションに気をつけるという話をしたら、そんなだったら喋れなくなっちゃうよ、とよく言われた。気づくということ、直していくことが大事。ここから私の紹介したいお話なのですが、アライに可視化を期待したい。ジェンダー、年代、障害の有無、人種などは比較的見えやすいですが、性的指向は見えにくいんですよね。難しい問題。同じように、アライかどうかも見えにくい。自分がアライである、なろうとしているという気持ちを持ってることを見せていくことです。自分はアライなのだと表明する。ファッションみたいに「なんちゃってアライ」と言われる、知ったかぶりをして当事者が不快感を覚える、ということもあるかもしれませんが、まず表明して、失敗はするけど、より理解し、さらに知ろうとする努力をしてほしいと思います。
高橋さん:意思表示は大事。当事者は、カミングアウトしたらどんな反応をするか、全て崩れるんじゃないかと不安を抱えている。小さな部署の10人のうちの7人がアライだとしたら、この場では安心して過ごせるな、と思う。アライシップの表明をぜひ。
――企業での取組みの課題。コミュニティはあるけど、活性化ができてない、興味を持つ人を増やしたいというお話がありました
松岡さん:東京レインボープライドに参加してもらう。いいきっかけ。今年参加した社員が「心ふるえた」と話して、感動しいた。一気に関心を持つ方に動いたり、仲間になるきっかけになる。パレードは東京だけじゃなく、私も青森に行ったりしましたが、そのときに、もし会社の支店があれば、声かけを。地方は情報の格差があったりしますが、巻き込んでいくことが大事。経営者がERG活動を認めてると参加しやすい。希望する取組みのアンケートの1位が経営者からのメッセージだった。それが今回の「Pide1000」の第一歩になったんです。
高橋さん:LGBTQのテーマとして、自分と遠いと感じること、があると思う。お子さん が当事者で、言えずに悩んでいるかもしれない、といった親の観点でのセッションがあるとよいかもしれない。メンタルヘルスのこと、結婚、教育、ユースなど共通のテーマもある と思う。
小宮さん:全国を巻き込むうえで経営者からの発信は大きい。テーマを広げて、他のテーマと掛け合わせていくこと。
――最後に一言
小宮さん:アライも目に見えにくい。LGBTQにカミングアウトしてもらうのは難しいので、みんなが働きやすくなるために、意思表示を。
松岡さん:なんちゃっての人が混ざってしまうリスクは懸念材料ですが、例えば、「アライガイドブック」見たよシールとかがあるといいのかも。高橋さんの、当事者もまたアライになれるというお話、心に沁みました。当事者とアライは分断された関係ではないと思います。同じ職場の仲間が困っていたら、助ける、そういう思いやる気持ちがあれば。
高橋さん:私もいろんなところでアライシップを感じて、この場に立てている。私もアライになりたい。そんな難しく考えないでと伝えたい、との思いも共有して、このパネルを作り上げてきました。



<PRIDE指標>
 今年のゴールド、シルバー、ブロンズの認定が発表されました。(詳細はレポートでご確認ください)


 今年から変わった点(ベストプラクティスの廃止など)、また、今年の認定の状況についての傾向についても説明がありました。




 レインボー認定は、21企業・団体でした。審査に当たったNPO法人ETIC. 番野智行さん、つくば大学河野禎之さんからコメントがありました。
番野さん:NPOとかソーシャルセンターの支援に携わってきました。NPOだけ頑張っても世の中変わるにはすごく遠いと感じていた、そんな時に、松中権さんと知り合い、企業の皆さんがいろんな取組みをしているけど、同時に、それだけじゃない、社会を良くするために何ができるかというところで、そういう人たちをちゃんと見える化してエンパワーしたい、というお話があり、レインボー認定が生まれました。優劣があるというより、プロセスのどこにいるかという違いです。連続受賞している企業は、周りのステイクホルダーに、影響力を自覚したうえで、何ができるかを示していると思い、同時に、初めて受賞したところは、リーダー やパートナーに動きが見えた。受賞ならなかったところも、応募の向こうに「やっていきたい」という顔が見えます。素晴らしかったです。
河野さん:つくば大学でダイバーシティ&インクルージョンの研究をしています。今年、LGBT増進法ができて、今後、いろんな企業で、大学もそうですが、LGBTQへの取り組みが展開されると思います。自分たちの企業だけに閉じず、社会に影響を与えていこうとする取組みをぜひ。皆さんが社会をリードしていきます。閉じずに、いろんなステイクホルダーとともに 大きなインパクトを与えていくこと、出会ったことがないようなステイクホルダー、地域の人たち、弱い立場にいる方も誰も取り残さない、インクルージョンを。そういう企業が増えていくと、大学としても学生が活躍していく場ができることにワクワクします。ぜひ今後も取組みを続けてください。


<最後に>
 最後に、松中権さんからお話がありました。
 1月中下旬にオンライン説明会の開催を予定していて、その際、レインボー認定の取組みも紹介されるそうです。
 来年のwwPの実行委員会参画企業の募集も始まります。毎月1回定例ミーティングがあり、過酷な1年になるかもしれませんが、一緒に作っていくなかで、つながりができます、とのことです。
 また、オンライン説明会で詳しくお伝えされるそうですが、「Pride1000」の今後としては、ネットワーキングイベントをやったり、勉強会を開いたりということを考えているそうです。

ジョブレインボー
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