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【結婚の自由をすべての人に】全国5ヵ所の判決が出揃ったことを受けて院内集会が開催
6月21日、全国の「結婚の自由をすべての人に」訴訟の原告や弁護団が集まり、国会議員に同性婚実現を呼びかける院内集会「第5回マリフォー国会」が衆議院第一議員会館の大会議室で開催されました
先日の名古屋地裁、福岡地裁の判決で、全国5ヵ所の一審判決が一通り出揃った「結婚の自由をすべての人に」訴訟。5ヵ所のうち4ヵ所で違憲判決であり、司法から、法整備に速やかにとりかかる必要性があることが示される結果となりましたが、政府は「判断を注視する」と述べるにとどまり、何ら具体的な動きを示していません。このような状況を受けて、原告・弁護団が国会議員に同性婚実現を呼びかける院内集会が開催されました。公益社団法人「Marriage for All Japan -結婚の自由をすべての人に」(以下MFAJ)が開催する院内集会はこれで5回目で(初回にはがんと闘っていた宇佐美翔子さんが「これは、命の問題です。早く同性婚を決めてください。私の命が尽きる前に」とスピーチし、涙、涙の会となりました)、毎回、参加する国会議員が増えています。
今回は、第211回通常国会最終日となる6月21日に、全国5地域から弁護団や原告の方々が集結し、司法判断の内容や、当事者の生の声を多くの国会議員の方に届けました。会場を訪れた国会議員は44名で、代理出席の秘書なども含めると71名となりました。また、ゲストスピーカーとして憲法学者である東京都立大学の木村草太法学部教授が登壇し、これまでの判決内容について目の覚めるような分析結果を報告してくださいました。
会場には(平日の昼間なのでそれほど多くはないですが)一般参加の方も100人くらい来られ、また、YouTubeライブの配信は1500人近い方たちが視聴し、集会の様子を見守りました。(以下にアーカイブを貼り付けますので、お時間ある時にご覧いただければと思います)
司会は、関西訴訟弁護団の佐藤倫子さんと、北海道訴訟弁護団の須田布美子さんが務めました。「5つの訴訟の一審の結果がすべて出揃い、うち4つが憲法に違反する点を指摘するものでした。これを振り返りながら、早急に立法の必要性があるということをお伝えします」
北海道訴訟弁護団の加藤丈晴さんが開会の挨拶に立ちました。「今朝の東京新聞の一面に、23区職員の同性パートナーを配偶者と同等に扱う制度が始まるという記事が載っていた。地方は進んでいる。北海道では7つの自治体でパートナーシップ制度が。2021年3月に札幌地裁で同性婚を認めないのは憲法14条に違反するという画期的な判決が下った。全国5つのうち4つで違憲判決を勝ち取った。合憲とした大阪でも、同性カップルを公証する利益がないことは違憲となる可能性があり、制度を作らないといけないと言われた。どの判決も立法裁量があると言っているが、どのような制度をつくるかについてであって、国会は立法しなければいけないとしている。しかし、残念ながら国会ではまだ議論がされていない今回の第5回マリフォー国会が、議論が本格化するための契機となるよう望みます」
愛知訴訟の水谷陽子弁護士が、5月30日の名古屋地裁の判決について語りました。
「同性カップルを国の制度によって公証していないのは違憲だとの判決だった。議員のみなさんに知ってほしい点として大きく2点、お伝えします。一つは、婚姻には心理的効果もあるということ、婚姻制度を利用できないのは精神的な損害ももたらすと認めたことです。制度を利用できるということは尊厳にかかわる問題であり、それを利用できるかどうかで人生が変わっていいわけがない。それから、国側の主張への反駁となる判断を示したことです。同性カップルが単に二人の共同生活ができるだけでいいわけではないと明言した。そして国民が被る不利益は想定しがたいと、つまり同性婚が認められても他の国民に何も不利益がないと釘を刺しています。伝統的な家族観が直ちに否定されることにはならない、共存する道を探ることは可能だと」
「このような画期的な判決は出ましたが、私たちは、さらに前進するために控訴します。一刻も早く立法されることを望みます。つらい判断ですが、原告のみなさんが早くこの裁判から解放されるように願いっています。最後に、愛知訴訟を通じて、支援者とたくさんつながれました。東海地方出身の当事者で今は東京にいるという方も多数いらして、地方での生きづらさを実感したり。全国に制度を求める人がいるということも知ってほしいです」
愛知訴訟の原告の大野さん&鷹見さんからのメッセージが読み上げられました。
「私たちは決して国と争いたいわけではありません。愛する日本で異性愛者と平等に暮らせるようになってほしいと活動してきた結果です。SOGIは自分で決められるものではありません。LGBTQは皆さんの身近な人の中にも必ずいます。一刻も早く、安心して暮らせる日本になるように」
東京一次訴訟の原告の小野春さんが語りました。
「パートナーとともに3人の子どもを育ててきました。しかし、一歩外に出れば私たちは他人として扱われてきました。次男の入院手続きがパートナーではできなかった。外から「家族じゃないだろう」と言われ、傷ついてきた。いつかは法律上も家族にと願ううちに、子どもも大人になりました。私自身、がんを患い、再発の恐怖と隣り合わせです。このまま他人として人生を終えたくありません。これは政治的なイデオロギーではなく、命の話です。愛する人と家族になりたいというシンプルな願い、見て見ぬふりをしないでください。明後日、東京一次訴訟の高裁期日です。よろしくお願いします」
同じく東京一次訴訟の原告の大江千束さんが語りました。
「パートナーは今日は体調不良で来られません。私たちは60代のカップルです。人生の半分を共に過ごしています。今月はプライド月間で、私たちは二人とも6月が誕生日です。「よくここまで生きてこれたね」と話したりします。大変なこともありました。マジョリティにたいへん気を遣って、襟を正して生きてきました。自治会の活動も率先してやっています。ただ、これから、人生の晩年に、気を遣って生きていくのはしんどいです。堂々と家族だと言いたいです。婚姻平等を実現する法案ができることを、心から望んでいます」
福岡地裁判決について、森あい弁護士からお話がありました。
「九州訴訟の原告は、福岡の方も、熊本の方もいます。わざわざ帰省して傍聴に来てくださる方もいて、励まされました。九州訴訟は他地域から少し遅れて、2019年9月から始まりました。その関係で訴状が少し違い、憲法13条についても違憲判断を求めたりしています。今回、福岡地裁判決は名古屋地裁のすぐ後だったので、どこまで喜んでいいのかと複雑でした。結果は、やはり、このままではだめだと言ってくれるもので、今後の後押しになりました」
「自治体の制度は、私たちが提訴する直前の2019年8月末日には全国で24自治体しかなかったのですが、いまは300近くなっています。世の中がどんどん変わっています。一次訴訟は全国の5地域のうち4つが違憲判決で、これ自体、とても異例のことですが、さらに時間が経つと、より「国会何やってるんだ」と司法の方から出てくると思います。政府の答弁は変わっていないという認定もなされています。立法府が動かないといけない。心強く思っています」
「訴訟の資料がcall4に上がっているのですが、支援者のメッセージも読めるようになっています。その中に最近、「中学生の頃からゲイであることを自覚し、生涯孤独に生きていくと覚悟していました。同性婚が認められ、幸せに生きていける人がひとりでも増えますように」という投稿があり、身につまされました。エストニアで同性婚の法制化が承認され、来年1月から施行されます。世界で35カ国目です。日本はいつでしょうか。ずっとこのままでいいわけがありません。国会が立法すれば解決する話です。これはイデオロギーではありません。一人ひとりの人間を見て、安心して生きられる社会の実現を」
九州訴訟の原告のこうすけさん&まさひろさんが語りました。
まさひろさんは、「福岡地裁の判決は個人の尊厳を定めた憲法24条2項に違反するというものでした。歴代の総理大臣は『同性婚は我が国の家族の形の根幹にかかわる問題で慎重な検討を要する』と繰り返すだけで、国会では何の議論が進んでいないばかりか、差別発言が続いています。一刻も早く同性婚を実現してください」と訴えました。
こうすけさんは、「私事ですが、今日はパートナーとの記念日です。でも、法的には他人です。私たちは、好きで裁判をやってるわけではありません。本当は闘いたいわけじゃない。ただパートナーと法的にも家族になり、安心してこの国で生きていきたいというその願いのためだけです。どうか、お力を貸してください」と訴えました。
同じく九州訴訟の原告のこうぞうさん&ゆうたさんが語りました。
こうぞうさんは、「立法府が動いてくれたら、裁判はしなくてすみます。岸田首相は消極的で、政府は自ら歩を進めようとする姿は見えません。同性婚が法制化されることこそ、何より理解増進の効果をもたらすと思っています。国会の場から前進させてください」と訴えました。
ゆうさんは、「ハッピープライドマンス。6月8日、福岡地裁では違憲状態との判決が出ました。まともな理念法の制定すらままならないこの国で、来年こそは、ふうふとして、家族として、心からハッピープライドマンスと叫びたいです」と語りました。決してハッピーではない、聞く人にその意味や重さを問いかけるような「ハッピープライドマンス」という言い方に、多くの人がハッとさせられたことと思います。短いなかでも強い印象を残すスピーチでした。
ここで、憲法学者の木村草太さんからのレクチャーがありました。目の覚めるような明晰で鮮やかな分析で、目から鱗が落ちる思いがしました。資料を見ながら、お話を聴きながらじゃないと理解が難しいと思うのですが、可能な限り、ポイントを整理してお伝えしてみます。
1.原告の主張
◎原告の主張には、二つの理解の仕方がある。どちらの理論で理解するかは、書面での主張の仕方、判決の書き方などを大きく左右する。
A理論:婚姻=不可分一体理論。スムージーのように、一つの材料だけを取り出すことができない。
B理論 婚姻=詰め合わせ理論。クッキーの詰め合わせのように、一部を取り出すことが可能。
A理論は婚姻でできないことを問題とし、民法・戸籍法の「同性間の婚姻を認めない」諸規定を違憲審査の対象とし、婚姻と別の制度を認めない。
B理論は婚姻名で公証しないこと、効果1を与えないこと、効果2を与えないこと…を問題とし、民法・戸籍法の個別の婚姻規定、家族形成を否定する法状態を違憲審査の対象とし、部分違憲なら別制度の可能性もあるとする。
原告がA理論をとるか、B理論をとるかで、判決に影響する(フローチャートを参照)
2.地裁の判断
◎5つの地裁はほぼ同じ判決を出している
・5つの地裁の判決は、1のフローチャートに沿って示すと、図のようなルートを辿ったと言える。札幌・名古屋は「(別制度でもよいが)一部効果は与えないと違憲(一部勝利)」。東京・福岡は「(別制度でもよいが)一部効果は与えないと違憲状態(一部勝利)」。大阪は「何もしなくていい(敗北)」
・実は、5つの地裁はほぼ同じ結論を出している。間違い探しのようなもの。
札幌・名古屋は訴訟の枠組みはB理論で、「婚姻効果の一部すら与えないことは、原告の主張した権利との関係で違憲」との判決。
東京・福岡は訴訟の枠組みはA理論で、「婚姻効果の一部すら与えないこと」についての判断は「訴訟の対象外」。ただし、別制度ですら用意していないのは客観的には違憲状態。
大阪も訴訟の枠組みはA理論で、「婚姻効果の一部すら与えないこと」についての判断は「訴訟の対象外」。よく読んでみると合憲性は判断しないが、「必要」で、現状は「問題だ」と言っている。
・(東京地裁判決で「違憲状態」と言われていたが)違憲には2種類あり、権利を侵害する法律があれば、法律の無効化が必要で、違憲「無効」判決となるが、今回のように権利実現の法律がないことを違憲だとする場合、何かの法律を無効にするのではなく立法がない「状態」が違憲だと確認する判決となる。今回の訴訟はもともと国賠請求の前提として違憲状態の確認を求めるものなので、「状態」という言葉に特段の意味はない
3.判決の意義
◎地裁判決は何を明らかにしたのか?
・24条1項と同性婚の関係について、各地裁の判決文が何を言っているか。すべて、訴訟で論点になっていないことを、はっきり述べている。それは、社会で誤解が蔓延しているのを打ち消したいという意思。
・4つの地裁は何を違憲としたか?ということも、よく似ている。
4.原告の課題
◎原告=控訴人には二つの課題がある
・裁判官の反応を見ていると、生殖関係保護説で同性婚は認めなくていい(合憲だ)とする残念な判断をしているが、同時に、生殖だけじゃない、何かがおかしいと感じている。なぜこうなるのか。婚姻制度の成り立ちが正しく捉えられていないのではないか。
・婚姻制度の成り立ちは、生殖だけじゃないものをたくさん含んでいる。非生殖異性婚であっても、別制度だとカップルの尊厳を傷つけるから、同じように扱う、つまり共同生活の保護という観点から婚姻を認めている。そうすると、非生殖異性婚と同性婚の違いが焦点となるが、無知や差別の結果を「あとづけで」正当化しようとするから、判断に無理が出ることになる。したがって、非生殖異性婚と同性婚の違いがないことを訴えるのが重要。そもそも、非生殖異性婚がなぜ婚姻に包摂されたのかということ。
・別制度を設けることで解決するというのは、当事者は納得できない。婚姻については、婚姻という名前で社会的な承認があるので、公証利益、社会的価値の観点からも別制度はナシ。
5.国会の課題
最高裁まで行ったときに予想される判決として、「別制度でもよいが、一部効果は与えないと違憲」となる可能性がいちばん高い。その際、国会での議論として、保守派への配慮ルートを回避し(同性婚は異性婚より劣った関係としたいがゆえに別制度を創設)、婚姻に包摂する完全に平等な立法を実現できるかどうかが、課題となる。別制度ではいけないのだと、きちんと当事者の声を聞け。「LGBTQ法のようなのではなく、祝福される立法を」
木村さんは最後に、「次回は、マリフォー国会「最高裁で勝つところも見たかったのに、先に国会が同性婚立法をしちゃった編」で会いましょう〜」と語るお茶目ぶりも発揮してくださいました。本当に素晴らしいお話でした。
東京一次訴訟の原告、ただしさんが語りました。
「今日は16歳の年下のパートナーは自宅で見守っています。この国のLGBTQは数百万人から一千万人に上ると言われています。しかし、結婚したくてもできない、婚姻制度に1500もあるという社会保障も与えられていません。人権がないまま、暮らしています。差別やいじめを恐れながら、自己肯定感を保てない、半数が自殺を考えたことがある、過去1年に14%が自殺未遂をしたという調査結果もあります。国会で差別発言が出て、当事者を苦しめているのは許されないことです。日本がこのままロシアや中国のようになるのか、G7の自由と平等を守る国を目指すのか、答えは出ています。一日も早く、同性婚の法制化を」
関西訴訟の原告の坂田麻智さん&テレサさん。麻智さんがお子さんを抱っこして、テレサさんが語りました。「今日は10ヵ月の子を連れてきています。無事に生まれたことは、本当にうれしい。しかし、親権がありません。国籍は、私がアメリカなので、アメリカ国籍しかありません。できることに限界があります。国民の7割が同性婚に賛成しています。理解増進法の議論のなかでトランスヘイトが増え…(ここで赤ちゃんが泣き出す)この子も言いたいことがいっぱいあるみたいです(笑)、現状が悪化しています。理解増進が必要なのは国会の中です。当事者の声を他の議員に届けてください。私たちは特別扱いではなく平等の権利をお願いしてるだけ。侵害されてるのは人権問題です」(お子さんに手を振る議員さんもいて、会場中がほっこりしていました)
同じく関西訴訟原告の田中昭全さん&川田有希さん。田中さんは、「理解増進法の問題に傷つきながら過ごしていました。人権三法ってありますよね。障害者差別解消法、ヘイトスピーチ解消法、部落差別解消推進法。これらの中にSOGI差別解消法ができて、四法にしてほしかった。全国でパートナーシップ制度が増えてきているのは心強いですが、法的効力がありません。裁判では、結婚じゃない方法で、とか言ってますが、求めているのは分離政策ではありません。ちゃんと認識してください。私たちは16年一緒に暮らしています。香川県の三豊市という何もない街で、運よく出会うことができて。何がこういう二人の関係に影響を与えたのかと考えると、異性愛者の両親が二人で生活を築き上げる姿を見て、今の僕たちがあると思いました。(愛する二人の生活の実質に異性愛も同性愛も違いはないと)そういうことを考えたら、すぐに法制化はできるはず。早く実現してください」と訴えました。
東京二次訴訟原告の鳩貝啓美さん&河智志乃さんが語りました。鳩貝さんは、「私たちは50代のレズビアンカップルです。歳を重ねるにつれて結婚という法的保障がない不安がますますつのっています。もう時間がありません。国会での検討を始めていただきたい。しかし理解増進法の国会での審議過程を見て、もう何をどう期待していいのかわからなくなりました。しかし、あきらめたら国が動くはずがありません。どうか力を貸してください」と訴えました。
同じく東京二次訴訟原告の山縣真矢さんが語りました。
「私はゲイで、25年パートナーと暮らしています。今回、4つの地裁で違憲判決が出ているにもかかわらず、岸田首相は「議論を深める姿勢は必要だ」とやる気のない答弁を繰り返しています。岸田政権の支持率は4割から5割です。世論調査では6割から7割が同性婚に賛成していますが、80%か90%の賛成がなければ、同性婚への支持が得られたとは認識してもらえないのでしょうか? そろそろ私も還暦を迎えます。残された時間は多くはありません。私が生きている間に、パートナーとの婚姻届を書かせてください」
同じく東京二次訴訟原告でトランス男性の一橋穂(いちはしみのる)さんが、涙ながらに訴えました。
「つれあいが事故にあって救急搬送され、ICUに入っても、私はすぐに入れないと思います。家族になる仕組みがないからです。本当に大事な時にそばにいられない、手も握ってやれないなんて…そんな不条理ありますか? 他の多くのカップルと同じように、婚姻の権利を。ただそれだけです。理解増進法の国会審議を見ましたが(涙で言葉を詰まらせながら)胸がえぐられる思いでした。本当に、これが大人の言うことかと、国会議員の言うことかと。私は歯を食いしばって堪えていますが、子どもが聞いたらどう感じるでしょうか。これは命の問題です。私は、田舎の生まれですが、希望が見えないから東京に来ました。本当は故郷で、両親のように暮らせたらどんなによかったかと思います。伝統的な価値観とかじゃない。ただ家族になりたい。当事者を見たことがないというならどこにでも行きます。どうかわかってください」
一橋さんは、トランスジェンダーへのバッシングが激化しているということもあるのでしょうが、顔出しNGで、お一人だけ一般席の方に座っていて、最後の集合写真の撮影にも加わらず…なんだか寂しそうでした。身につまされました。今回の訴訟でも数少ないトランスジェンダーの原告である一橋さんが、ヘイターの攻撃を受けず、安心して表に出て語れる日が早く来ることを祈ります。
最後に、理事の上杉崇子弁護士が、閉会の言葉を述べました。
「今日話してくれた原告のみなさん、婚姻制度から排除され、生活と尊厳が脅かされていると語っていました。みなさんの後ろにも、たくさんの当事者がいます。私たちセクシュアルマイノリティはシスジェンダー異性愛者と同じ人間です。同じように幸せと安心のための不可欠の選択肢、婚姻平等を求めています。婚姻平等は、社会的基盤を強化し、社会全体の安定に資するという判決もありました。婚姻平等は日本に幸せを増やすものです」
過去最高となる、多数の国会議員が駆けつけた院内集会でした。会場に足を運び、スピーチした40名超の議員の方たちからは、「婚姻平等は当たり前のこと」「一刻も早く、実現するべき」「みなさんに寄り添い、一緒に闘う」という声とともに、「遅れているのは国会だけ」「阻んでいるのは国会の中の一部の反対勢力」と語る声が多数、上がりました。なかには「理解増進法の成立過程で、当事者のみなさんから傷ついたとの声をいただいた」とお詫びする方もいました。「本当にこの国が、ひどい国だと、人というものを理解しない、人間を粗末に扱う国だと明らかになってきた」と涙ながらに語る方もいました。会場を去るときに、原告のみなさんに何度も何度も頭を下げる方もいました(人柄の真摯さがうかがえるだけでなく、本当にLGBTQのことを思ってくださっているんだなと感じました)。「立派な勝利を収めて国会に新しい風を送ってくれてありがとう」とお礼を言う方もいました。「バックラッシュは必ずはねかえせる」と励ます方もいました。また、石川大我議員からは、法務委員会で参考人を呼んで議論することができるので、今後、原告のみなさんをお呼びして話をしてもらうことも考えている、という具体的な提案もありました。
LGBT理解増進法案の審議のなかで出てきた差別的発言や一部の人たちの悪意に傷つき、消耗してしまった方も少なくないと思いますが、MFAJはこの4年で4つの違憲判決を勝ち取り(違憲判決自体、極めて異例なのに)、国会での同性婚法制化の議論は待ったなしの状況という、着実な、輝かしい成果を上げています。この4年間に社会もずいぶん変わり、自治体の同性パートナーシップ証明制度導入が人口カバー率7割に迫り、世間の同性婚支持率も7割くらいに達しました。G7首脳声明も素晴らしい内容でした。経済界からも、内外で本当に婚姻平等(や差別禁止法)を求める声が高まっています。国会議員の一人ひとりは、とてもいい方ばかりで、みんながこんな感じだったらすぐにでも同性婚が実現するだろうと思うのですが、ただ一部の(宗教がらみと思われる)アンチの人たちが阻害要因であるということも、今回の集会ではっきりしたと思います。国会で同性婚の法制化に向けが議論が進むために、何をしなければいけないのか…司法の判断を待つだけでなく、私たちがもっと投票率を上げたり、声を上げたり、政治にコミットしていかなければいけないということが、見えてきたのではないでしょうか。
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