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レポート:レインボープライドたからづか

6月4日(日)、兵庫県宝塚市で初のレインボープライドが開催されました。手塚治虫美術館や宝塚大劇場の前を100人近い方たちが歌を歌ったりしながらカラフルに行進しました。

LGBTQ支援の先頭に立ってきた宝塚市

 宝塚市は2016年、渋谷区・世田谷区、三重県伊賀市に続いて日本で4番目に「パートナーシップ宣誓制度」を実現した街として記憶されています。渋谷区の同性パートナーシップ証明制度を盛り込んだ条例のニュースを受けて、宝塚市では2015年3月に中川智子市長(当時)がLGBTQ支援を表明し、同様の制度の導入に向けて4月には検討部会を設置、6月の市議会で制度について議論しました。しかし、市議会で自民党の大河内市議から「(支援条例が制定されて)宝塚に同性愛者が集まり、HIV感染の中心になったらどうするのか、という議論が市民から出る」という差別発言が飛び出し(別の議員が不適切だ、取り消すべきだと抗議し、議論が中断)という出来事がありました。そうした反対の声にも負けず、同年11月には全国で3例目のLGBT支援宣言を発し、世田谷区のように要綱で定めて「パートナーシップ宣誓制度」を導入することを発表、2016年6月1日に晴れて制度がスタートしました。西日本初でした。証明書の発行だけでなく、市営住宅への入居ができるよう条例を改正し、教職員研修を実施し、市立小中学校の図書室や保健室にLGBTQの本を置き、児童生徒に電話相談窓口を知らせたり、きめ細かな施策を行なってきました。(こちらの記事でもお伝えしましたが、中川さんは衆院議員時代に、世田谷区の保坂展人区長や上川あや区議との交流を通じてLGBTQについて知る機会を得て「行政としてできることはないか」と常に考えるようになり、渋谷区で条例が施行されたことで「一歩踏み出す勇気を得た」といいます。上川区議は2014年5月、中川さんに呼ばれて宝塚市の職員と市議の合同の研修会で同性カップルの権利保障をめぐる内外の現状について講演し、「ほかの自治体でこんな話をしておきながら自分は…。世田谷区でも同性パートナーシップを認める制度を作るために動かなくては」と思うようになったといいます。そういう意味では、中川さんもまた、日本の同性パートナーシップ証明制度の最初の一歩に貢献した方だと言えます)
 このように、(日本初のLGBT支援宣言を行なった大阪市淀川区と並び)西日本で最も早い時期からLGBTQ支援の施策に取り組んできた宝塚市でパレードが初開催されるということで、リスペクトの気持ちを込めて、取材に出かけました。
 

レポート:レインボープライドたからづか

 会場となる宝塚市立文化芸術センターには、レインボーカラーの風船や「レインボープライドたからづか」の横断幕、火の鳥を模したバルーンアートなどが飾り付けられていて、遠くからでも見てわかるようになっていました。(なお、センターの中のパンフレット置き場には「にじいろのまち宝塚 宝塚市は性の多様性を尊重しています」というステッカーが掲出されていました。さすがはLGBT支援宣言を発している街ですね)




 おおやね広場で12時半頃、お揃いの黄色いTシャツを着た方たちが登場し、三線を弾いたり、太鼓を叩いたりしながら、「上を向いて歩こう」と「鉄腕アトム」の替え歌(ありのままで〜ラララ虹のかなた〜)を元気にパフォーマンスしました。3人のみなさんがそれぞれ自己紹介し、トランス男性の方だったり、トランス男性だけど体質に合わずホルモン治療を中断して今に至るという方だったり、宝塚市で生まれ育ったXジェンダーの方で、パートナーさんとは戸籍上同性になるため、芦屋市でパートナーシップ宣誓を行なったという方だったり(「おめでとう!」と拍手が起こる温かさ。ジーンときました)


 13時頃、オープニングイベントが始まりました。
 まず、司会の方が、主催者であるミリオンベルたからづかについて、2016年、ミリオンベルたからづかは性的マイノリティやアライの方たちが集い、何でも話せるような場として立ち上げられたと説明。そして、去年の秋からパレードを企画していました、LGBT理解増進法をめぐって発せられる差別発言に傷ついています、先日の同性婚を認めないのは違憲だとする判決は素晴らしかった、みんなで声を上げてきたことが追い風になったと思います、といったお話をしました。
 それから、ミリオンベルたからづかの代表のあぐりさんが「天気に恵まれてよかったです。みなさん今日はどうか楽しんでください」とご挨拶しました。
 続いて「レジェンド」中川智子前市長が登場し(阪神間7市1町が連携協定という記事でもお伝えしていたように、中川さんは2021年4月に政界を引退していました)、スピーチしました。同性パートナーシップ証明制度の導入を検討すると発表して以来、2700通もの反対メールが届き、今考えるとそれは旧統一教会の人たちであったと思われるが、ひどいことを言う電話もたくさんかかってきて市の職員が疲弊してしまった、それでも性的マイノリティのために歯を食いしばって頑張ろうと励まし…そんな市の職員の方たちのおかげで制度が実現した、今日このようにパレードを迎えられて胸がジーンとしています、性的マイノリティが当たり前に生きていけるということは人権の一丁目一番地、国はなぜひどい法案を通そうとするのか、同性婚を認めないのか、世の中はこんなに変わっているのに、といったお話でした(リスペクトを込めて拍手させていただきました)
 石川大我参議院議員も駆けつけました。豊島区はトキワ荘があり、手塚治虫さんにゆかりがあるので、宝塚には特別な思い入れがあります、パレードを立ち上げた実行委員のみなさんに感謝します、立憲民主党は党として全国のプライドパレードに公式に参加しています、パレードがあることでこうして人々が集まり、パレードがあることで顔が見えるようになり街が変わっていきます、来年もまたパレードがつながっていくことを期待します、私も国会で頑張ります、といったお話でした(拍手)
 続いて、現宝塚市長の山崎晴恵氏からの祝辞が代読されました。「レインボープライドの開催、おめでとうございます。心に残るひとときを過ごされることを。みなさんのご健勝とご多幸をお祈りします」といったメッセージでした。
 それから、様々な団体の方たちが順番にスピーチしました。
 尼崎市で当事者の居場所づくりや講演活動などを行なっている特定非営利活動法人MixRainbowの代表、いよたみのりさんは、尼崎でも来年、パレードを開催したい、と表明しました(拍手)。また、阪神間で「パートナーシップ宣誓制度」を導入している自治体との連携を広げていきたい、アライを増やす活動として17日に電車をランウェイに見立ててファッションショーなどを行なう「関西アライモ2023」というイベントを開催します、とのことでした(素敵ですね)
 トランス男性の藤原直さんは、自身の講演やファシリテーターとしての活動についてお話しました。
 2019年に大阪府守口市で性的マイノリティのためのお寺「性善寺」を建立した柴谷宗叔さんがお話しました(昨年のレインボーフェスタ和歌山にも参加されていました)。性善寺では、同性カップルの仏前結婚式や、子どものいないLGBTQのための永代供養など、様々なことを手がけています。
 兵庫県姫路市でLGBTQをはじめ様々な社会的マイノリティの方たちが安心して過ごせるコミュニティスペース「そらにじひめじ」を運営するだいすけさんが、「そらにじひめじ」についてお話しました。また、入管法改正の問題に触れ、LGBTQもマイノリティではありますが、他のマイノリティのことにもぜひ目を向けましょう、今日はこのあと大阪のヨドバシカメラ前で抗議デモがあります、と語りました(石川大我議員もこのデモに参加していました)
 そのほか、GWに開催された神戸レインボーフェスタの代表の方、岸和田でLGBTQ支援を行なっている産婦人科医の方、立憲民主党の議員の方、共産党の議員の方などもお話しました。
 パレード出発前に、再び「鉄腕アトム」の替え歌をみんなで歌いました。









 14時頃、出発地点の階段のところにパレード参加者のみなさんが集まり、集合写真を撮りました。
 そしてパレードが出発。手塚治虫記念館の前を通り、信号を渡って、宝塚大劇場のほうに向かって歩道を行進しました。「ありのままで生きていこう」といったコールをしたり、歌を歌いながら。お子さんたちや石川大我さんが先頭の横断幕を持って歩きました。
 宝塚大劇場を過ぎて、パレードの一行は「花のみち」に入り、紫陽花など色とりどりの花が咲いていたり、ベルばらの銅像が建っていたりする道を元気にカラフルに行進し、「花の舞台」の前にゴール。再び記念写真を撮って解散となりました。


















 

 宝塚は本当に素敵な街で(もっと早く行って手塚治虫記念館も見学すればよかったと後悔)、素敵な街並みを歩けるとてもいい雰囲気のパレードに心洗われました。
 来年開催された際は、みなさんも観光がてら、参加してみてはいかがでしょうか。
 
(取材・文:後藤純一)

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