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レポート:LGBTQ+緊急国会 〜理解ではなく差別の禁止を!〜
2月14日に参議院議員会館で開催された院内集会「LGBTQ+緊急国会 〜理解ではなく差別の禁止を!〜」をレポートします。当事者の方たちの切実な声にぜひ耳を傾けてください。
「差別禁止法を求める院内集会が緊急開催されます」とのニュースでお伝えしていたように2月14日、参議院議員会館講堂で院内集会「LGBTQ+緊急国会 〜理解ではなく差別の禁止を!〜」が開催されました。200名超が会場に詰めかけ、オンラインでの参加を含めると500名超になりました。涙ながらの当事者の訴えもあり、切実な思いが伝わってくるような、熱い会になりました。レポートをお届けします。
(取材・文:後藤純一)
2月14日、北風が冷たい日でしたが、これまで開催されてきたLGBTQ関連の院内集会の中でも最も広い会場なのではないかと思われる参議院議員会館講堂が満杯になるようなたくさんの人々が詰めかけました。
司会はヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表の土井香苗さんが務めました。
最初に、今回の会を主催した「LGBTQ+国会 議会運営委員会」の代表、浅沼智也さんがご挨拶しました。
「理解増進法の成立に向けて前向きに取り組むとの報道がありました。LGBTQの認知度は高まっていて、全国の自治体での取組みも進んでいるのに、杉田議員や白石区議のような議員による差別発言もあり、LGBTQに向けた相次ぐヘイトスピーチがいまだにやみません。人権保障のための法律が整備されていないためです。心を痛める当事者のためにも理解増進ではなく、差別禁止法の制定を。すでに60以上の自治体がLGBTQ差別禁止を盛り込んだ条例を制定しています。僕自身、トランス男性として、職場でのハラスメントやアウティング、性暴力などに晒されてきました。条例があっても、生きやすいとは言えない状態です。差別禁止を明確にする法の制定で、生きやすい社会に。必要なのは、理解ではなく、差別がない社会です。今から登壇する方のスピーチjs、どれも人権が損なわれていることを背景にした個人個人の声です。どうかこの声に耳を傾けてください」
松岡宗嗣さんは、「岸田政権にLGBTQの人権を守る法整備を求める」署名が53273筆に達したことを報告し、署名の記述欄に寄せられた当事者の声を紹介しました。
「15歳の同性愛者の方。よりよい未来を作るなら、若者の声、少数者の声を聞いてください。幸せを奪わないでください」
「自殺を図った経験のある当事者の方。法律が変わることで救える命があります」
「いとこから同性愛者だと相談がありました。差別に心痛め、恐れています。すべてのLGBTQが幸せになれる法律を」
「差別発言をきいたとき、こんな社会はこりごりだと思いました。ようやく社会が変わってきたのに。岸田政権はもっと世の中の声に耳を傾けてください。日本が衰退しているのは人権を守らないから。いますぐ法整備を。理解促進法では差別は棚ざらしのままです」
「いちばんに理解していなくてはいけない政治家がヘイトスピーチをしているというのに、理解増進なんてあまりに生ぬるいです。もちろん同性婚も早く。もうこれ以上待てません。人権を最初から学び直してください、早急に」
「差別はなくなrなあいかもしれない。いやでもだからこそ、差別を是としない国の方針を明確にして法整備すべきです。これ以上私たちを傷つけないで。国会議員にしかできない仕事があります」
ここからは松岡さんのメッセージです。
「政治家の方に言いたいのは、とにかくまず、様々な問題に直面している当事者の声を聞いてください。理解増進法では今具体的に起きている差別的取扱いに対処できません。理解増進法案の「差別は許されない」という文言にすら反対が起きています」
「外務省のG7のサイトにこう書いてあります。自由、民主主義、人権などの基本的価値を共有するG7の首脳が自由闊達な意見交換を。日本は議長国どころか参加資格すらないのではないでしょうか。当事者のことを置き去りにしています。よりよい方向に変えないで何のための政治家なのでしょうか。本来はG7があろうがなかろうが、法整備が進められるべきです。LGBTQ差別禁止、婚姻平等、性別変更に関する制度の見直しを求めます」
続いて在日本朝鮮人人権協会という人権団体で事務局を務めているパクキム・ウギさんがスピーチしました。
「政府のトップにいる公人が、性的指向・性自認への偏見、差別、ヘイトスピーチを行ないました。在日朝鮮人は、長らくヘイトスピーチにさらされ、関東大震災のときには大勢が虐殺されました。現在もネット上では同じヘイトスピーチが続き、民族学校が放火される事件が怒っています。これらヘイトを支えているのは学校を公的な援助から除外する政府による差別政策です。このようななかで、在日朝鮮人の性的マイノリティは、四方八方からヘイトを受け、根底から存在を否定され、さらに女性は、杉田議員のような人からもジェンダーに基づくヘイトを向けられています。長年運動してきて、たしかにヘイトスピーチ解消法はできましたが、まだ差別はおさまっていません。法律で禁止したとしても差別はなくならないが、まず差別はいけないという規範をつくる必要があります。政府が差別禁止法を作りたがらないのは、差別を維持したいからではないか。欺瞞を許さず、法制度の整備を求めていきましょう」
台湾から鈴木賢明治大教授(今は台湾大学に出張)がオンラインでスピーチしました。
「足を踏まれたときに、すぐに多くの仲間が素早く痛いと声を上げる、そのようにコミュニティが力をつけてきました。LGBTQはいつも異性愛者やシスジェンダーから処遇を決められる客体でした、しかし今、転換点に来ています。平等な法を求め、自らが主語として人生を語る時代が来たのです。世の中が性別二元論や異性愛の幻想を打ち破る必要があります。思い込み、幻想です。性は多様であることが現実であり、自然であるということを、権力者は誤認して、社会の仕組みを作ってきました。認め合うということではなく、幻想から目覚めろということです。その根幹に、異性間にだけ婚姻を独占させる制度があります。LGBTQは真っ先に婚姻差別をやめさせ、親密関係の主人公になることが必要です。婚姻平等がまず必要です。その周辺はゆっくり取り組めばよいと思います。理解増進法は主流社会にマイノリティを理解させるものであり、あいかわらずLGBTQは客体のままです。私たちに必要なのは、法的に対抗する武器。台湾では性別平等教育法、職場での性別勤務平等法、そして婚姻平等を実現しました。すでに同性結婚したカップルは1万組を超えています。デパートでは同性カップルが手をつないでいて、誰も気にもとめません。台湾は幻想から目覚めています。しかし日本は取り残されています。今が遅れを取り戻すチャンスです。最低ラインは差別禁止法です。日本を「選ばれない国」にしないようにしましょう」
それから、「Broken Rainbow Japan」代表で青森レインボーパレードの創設者である岡田美穂さんが青森からオンラインでスピーチしました。
「LGBTQへの性暴力被害の団体をしています。差別は許さないという社会であるべきということを前提に、レズビアンとしての発言をさせていただきます。1年4ヶ月前、10年いっしょにいたパートナーをがんで亡くしました。まだそのことを振り返るのがつらいです。がんだということがわかってから、最初の頃に病院で、何かあっても連絡が来ない可能性があるのではないですかと聞くと、病院側は迷いもせずにその可能性があると言いました。幸い私たちは弁護士を通して書類を作っていたので、理解のある病院にも行くことができましたが、最期のときに連絡がこないかもしれないと思いながら…毎日が闘いのような生活でした。あまりにも差別発言が続き、私は傷つくというより、なぜレズビアンで、愛する人とともにいることをばかにされるのか、なぜ隣にいることすらばかにされなければいけないのか、と感じました。もうこれ以上そんな思いをする人を出したくない。まだまだ頑張りが必要とかおっしゃるけど、どれだけ殴られるのを我慢すればいいのですか。2012年潘基文が『時は来た』とスピーチしたときはまだ感動がありました。でも今、まだこれからだ、頑張れと言われても。頑張るのは国じゃないですか。私たちは権利を持っています。差別されるいわれはありません。急いでください。以前の同性婚の集会で、彼女は『命の問題だ、早くしてくれ、私の命が終わる前に』とスピーチしました。彼女は同性婚実現に間に合いませんでした。法整備によって一人でも多くの人に希望を」
会場に来られた国会議員の方々も一言ずつご挨拶していましたが、長くなってしまうので、代表して石川大我参議院議員のコメントをご紹介します。
「もう我慢できません。国会で唯一のLGBTQの議員として。岡田さんと宇佐美さんは選挙戦の最後の日に来られて『国会議員になったら、同性婚実現してくれますよね』と言いました。その約束が果たせなかったことが心残りでなりません。結婚することができないまま、次々に当事者の方たちが亡くなってしまいます。岡田さんの言葉を心に留めなければいけません。本当に時間がないのです。国会では理解増進だ、差別禁止という文言はだめだと自民党の議員が言っています。差別的な対応をしっかり禁止しなければ。我々は差別を放置し、人権を侵す勢力と違います。差別禁止、婚姻平等、夫婦別姓、性別変更に関する子なし要件、手術要件の撤廃。LGBTQの権利を取り戻すための法律が必要です。今国会で実現したいです」
niji-depotの梅子さんが語りました。
「秘書官の発言には、何も感じませんでした。ああまたか、と思いました。政治家の差別発言が何度も続き、あきらめの心境です。内容のくだらなさ、程度の低さにあきれかえりました。でもあの発言で傷ついた人がたくさんいるし、その人たちの声を届けなければいけません。もうごめんです。LGBTQの差別を禁止する法律でそれを止めてください。岸田首相は政府の方針とは相容れず言語道断、遺憾だとおっしゃいました。けれども、理解増進法という生ぬるい法案が出てきました。なぜ差別禁止法ではないのか。歯止めをかけてほしいのです。理解のない人が理解するまで待っていられません。レズビアンとして17年同性パートナーと暮らしていて、こんなに長くつきあっているのに結婚できないので、家族として認められず、不自由な思いをしています。このように赤裸々に公開して話さなければいけないこと、自己開示して意見を言わなければ聞いてもらえない理不尽さ。同性婚を認めても異性愛の人には何も変わりがなく、当事者が救われるだけです。理解してほしいのではなく、人権を認めてほしいです。これは人権の問題です。差別禁止、同性婚実現を強く望みます」
さっぽろレインボープライド副実行委員長の満島てる子さんがオンラインでスピーチしました。
「LGBTQは、セクシュアリティや地域の垣根を超えて連帯し、歩みを進めてきました。これまでコミュニティの結束の機会がありながらも、このしばらくの期間においては、日本のLGBTQの当事者は、私も含め、危機感と絶望を抱くこととなりました。岸田首相の『社会が変わる』発言、秘書官の、口にするのも嫌なほどの差別発言は衝撃をもたらしました。当事者は一枚岩ではなく、それぞれ信念や信条がありますが、その違いを飛び越えて、差別という暴力にさらされるということ。公人が、権力をもっている立場でありながら、特定のアイデンティティを持つ人たちの人権を恣意的に蹂躙しています。国会で言い訳していましたが、はっきりしたのは、理解が足りないのは政治家だということ。根は非常に深いと個人としては思いますが、体制側が反省し、立法府が、国民を守るための差別禁止法の制定に早急に取り組むべきです。そういう声が、LGBTQの人権を守る法整備の署名になり、さっぽろレインボープライドも協力しました。国民の命をどう考えているのか、政治家の皆さんはきちんと表明するためにも差別禁止法を」
ジャーナリストの北丸雄二さんがスピーチしました。
「30年前、国連職員の日本人たちが『国連ってホモが多い』って嗤っていた。彼らはREFUGEEなんです。祖国では同性愛者として生きていけないから、必死に英語を勉強して国連の仕事を得ている。日本人はNYにいても英語の情報から遮断され、日本にいるのと同じようにLGBTQや女性を扱ってきた。それがずっと続いてきた。ところが、欧米は30年前からLGBTQのことを人権問題として語り始めます。アメリカではエイズ禍の時代、ゲイたちがカムアウトして政治に訴え、社会的な問題として闘ってきた。同性パートナーを亡くした方も多かった。それから同性婚が課題になった。2000年、同性カップルがどれくらいいるのか国勢調査で対応するよう要求したものの、その年はできず、2010年から。2013年には親しい友人や同僚にLGBTQがいると回答した人が57%になった。 性的なだけでの存在だと侮辱されてきたが、全人格的な人間であると認知された。2年後に、同性婚を認めた。日本はずっと同じです。4年前に日高さんの調査だったと思いますが、自分の周囲の友人や同僚にいると答えた人は8%しかいなかった。みんなまだ言えない状況です。情報が更新されない。今でも気持ち悪いと言う人がいるのが荒井発言で明らかになった。では何が変わったか。みんな怒った。社会の反応が変わり、家族も変わっている。実態がわかってきた。イメージとして同性愛を恐れている人たちがいるけどそれは違うんだと。まず国勢調査で調べろと。社会の雰囲気ではなく、データとしてどういう人たちがどういう生活をしているか、ちゃんと実態をもとにして語れと。そうじゃないと、ずっと、イメージのまま、ホモは気持ち悪い、隣に住んでたら嫌だよね、となる。隣人としての情報の更新。政治家自ら更新を」
ライターのマサキチトセさんがオンラインで語りました。
「私はかつて、自民党が推す理解増進という考え方にある程度賛同していました。差別禁止という法律ができたところで、実際は法律を理解できるようなエリート層、自らの行動や発言が差別に当たるかどうかを判断できる人たちが、実際には差別していたとしても罪を逃れることができる一方、それができない人が不用意な差別発言をして罰せられるということが予測できたからです。ただ、ここ何年もの間、理解増進法を推す自民党の中から様々な差別的な発言が出てきました。到底理解していない、理解を拒否しているような発言がいくつもあった。そういう方たちが推す理解増進というものに一切の信頼が置けずにいます。先ほど言った差別禁止法についての懸念はあります。解雇するにあたってSOGIを理由にしてはならないと定めても、解雇した理由はそれではないと主張するのは難しくない。いろんな場面においてどれくらい効力を持つのかどうか、実際に差別解消の役に立つのか、今は少し疑問があります。ただ、様々な専門家の方が集まり、知恵を寄せ合い、実際に生きているLGBTQ+がもっと生きやすくなる社会になるために、差別を減らせるような有効な法律を、当事者とも話し合って、良い法律ができたらいいと思います」
「Rainbow Tokyo 北区」の時枝穂さん。
「トランス女性として故郷の大阪を離れ、東京に来て、一から新しい人生を送ろうと思いました。でも、どこに住んでも、本当に暮らしやすい場所はなかった。まず、仕事がありません。応募することもできなかった。履歴書の性別欄。面接で落とされる。就活スーツも作れない。病院に行きたくないです。風邪とか、ちょっとした怪我では行きません。性自認に沿って対応してくれるだろうかと気になってしまうからです。若い世代の当事者と意見交換する機会がありました。もし日本で、LGBTQ差別禁止法や同性婚、性別変更に関する法整備が整ったら、活動家はこんなに労力を使っていなかったと語っていました。若い世代が、自分よりもさらに若い世代に、同じような気持ちや、同じ苦労を味わってほしくないと言っていました。大人として、そういう発言を20代の人にさせるのは悔しいです。みんな差別禁止だと言っています。G7の前にぜひ実現してください」
それから、匿名の方がスピーチしました。
「ノンバイナリーです。女性や男性、様々ある性自認のひとつです。政治家の皆さんは、自分の性を他人に説明しなければいけない状況を経験したことがあるでしょうか、勘違いじゃない?と言われたことがあるでしょうか。“変人”の枠に入れられたことがあるでしょうか。私は長らく“変人”の枠に入れられ、差別されています。マジョリティと違って、”ふつう”ではない、自然ではない、本質と違うといったレッテル貼りと差別を受けてきました。荒井秘書官から、希望を失わせ、汚い存在として自分を憎ませるような発言があった。荒井発言だけじゃなく、職場で、学校で、あらゆるところでそのような発言があります。差別を守ろうとする人たちもいます。無関心でいる議員も。みんながよってたかって差別が許される社会を作っています。こんなことがまかり通っているのは、LGBTQには権利がなくてもいいと無意識に思い込んでいるからではないでしょうか」
続いて、ろうのLGBTQの方たちが登壇しました。手話でのお話を、モンキー高野さんのパートナーの方が通訳してくれました。
・モンキー高野さん
「手話フレンズの代表を務めています。FTMです。LGBTQに関する情報が届くのが遅れたり、悩んで自殺する人も多いです。4月から『ろうLGBTQ連盟』を立ち上げます。今登壇しているのはそのメンバーです。ろう者には厚い壁があります。聞こえる人はテレビとかで情報が得られますが、ろう者は手話通訳もまだまだ普及していないので、少しずつになります。今パートナーと25年いっしょに暮らしていて、2015年に世田谷区でパートナーシップ宣誓しました。上川区議のおかげです。でもまだ法的に家族になれてない。差別発言、よくそんなこと言えるなと怒り心頭です。みんな同じ人間です。家族のかたちもいろいろです。異性愛者は結婚していても子どもがいない人もいます。結婚の自由を、愛することを、家族であると認めてほしいです」
・山田さん
「今の気持ちをお伝えすると、差別はあってはならない。気持ち悪い、そんなこと言って楽しいですか。本当に考えてください。同性婚の制度を早急に認めてください。幸せな生活を、家族の幸せを人権を守るのが議員の仕事じゃないですか」
・野村恒平さん
「6年活動してきました。ここで話せないことが山ほどあります。高齢の方もいて、同性婚を待ちながら、間に合わず、亡くなっていく人もたくさんいます。今回の差別発言に傷ついてる若い方もいます。頑張って活動しても、議員が何度も差別発言するので、いつまで経っても…来年もこのようなことが起こるんですか。もう時間がありません。待てません。早く法律を作ってください。私たちも命ある人間です。命を守るために、法整備を進めてください」
LGBTQ法連合会事務局次長の西山朗さんがスピーチしました。
「LGBTQ法連合会は今回の差別発言について声明を出しました。時代錯誤だと、昨年のドイツでのG7サミット首脳コミュニケにも反していると述べました。法整備を進めなければいけない状況です。国際的指標、例えばILGAですと、日本は、性的指向・性自認に関する差別の禁止という項目では「制限付きの法的保護」という低いランクに分類されています。OECDの調査では、35ヵ国中34位です。たとえ理解増進法を通しても、国際的指標から見れば、かすりもしません。そんな透明人間のような法律ができるだけです。今この瞬間にも、苦しんでいる人、暴力や差別に直面している人を守るための法整備を。差別を禁止する法律を求めます」
「結婚の自由をすべての人に」訴訟の上杉崇子弁護士と、原告の西川麻美さんが登壇しました。(この日は、「結婚の自由をすべての人に」全国一斉訴訟から4年を迎えた日でした)
・上杉崇子弁護士
「荒井秘書官の発言は、同性愛者を蔑視し、劣等に扱う考え方です。存在を否定しています。人権無視が明らかな差別で、尊厳を傷つけています。命を落とす当事者がいるというのは誇張ではありません。岸田首相の「家族や価値観、社会が変わる」という発言は、LGBTQを平等に扱うことへの抵抗の表明で、差別発言に通じるものがあります。国際的な人権意識から大きく乖離する偏見や無理解に断固抗議し、具体的なアクションを求める要請を出しています。(1)同性婚を認めるように民法と戸籍法の改正に着手、(2)政府内に性的少数者の権利保障を検討するワーキングチームをつくって当事者や家族からヒアリング、(3)性的少数者の人権を専門に担当する首相補佐官を任命、(4)2025年の国勢調査で同性カップルの実態を把握することを求めました。結婚は基本的な法制度のひとつです。結婚制度からの排除は、同じ人間として扱わない差別。婚姻平等は尊厳回復にとって譲れないもの。祝福と幸福を増やすものです」
・西川麻美さん
「発言を聞いて、しばらく言葉を失い、政治の中心に、記者がいる前で、あのような発言をしても許されると思っていることに恐怖を覚えました。私は異性婚を経て子どもを授かりました。世間に受け入れてもらいたかったんだと思います。しかし、自分の一部を殺す生活に耐えられず、離婚し、同じように子育てをしている小野春と出会い、ともに暮らしています。パートナーではなく、妻と言いたいです。主宰する「にじいろ家族」では、再婚型の子連れカップルもいるし、精子提供を受けて子をもうけた方もいるし、子育てするゲイカップルもいます。なぜ差別されるのか。異性間の生殖がそんなに大切でしょうか。西田議員の発言は差別を容認・温存したいと受け取れますが、まさか…ですよね」
ぷれいす東京の生島さん。
「64歳のゲイ男性です。当事者への調査活動をしてきて、ゲイバイセクシュアル男性7000人の9割が悩みや不安を抱えているのに、家族に相談できる人は2割弱しかいないということがわかっています。悩みがあっても相談できない。カミングアウトしている人は2割弱くらいです。自分のことを言えない。いないのではなく、言えないということです。その難しさを知ってほしいです。LGBTQは人口の7~8%と言われますが、たとえば学校や職場でそういう話をすると、「数人いるってこと、誰?」となったりします。大切なのは、「誰か」ということじゃなく、言えない人がいることを前提に話を進めることです。SDGsは「誰も取り残さない」と謳っていますが、日本は本当にそうなっているか。同僚だった佐藤郁夫が2年前に脳出血で病院に運ばれたとき、そこはHIV診療している病院なのに、パートナーの方が家族として扱ってもらえませんでした。自分事として、私がもし倒れたとき、私のパートナーが最期に会えるのかどうか心配です。これは個人の努力でどうこうできるものではなく、人権の問題です。人権が守られる制度を」
映画監督のトーマス・アッシュさん。
「入管問題のドキュメンタリーを作っているゲイです。日本は美しい国です。しかし、差別によって苦しい生活を送る人がいます。マルティン・ニーメラーの詩を、2023年の今、日本のマイノリティに当てはめるとこうなるでしょう。
彼らが最初、在日コリアンの人たちを攻撃したとき、私は声をあげなかった。私は在日コリアンではなかったから。
彼らが難民の人を牢獄に入れたとき、私は声をあげなかった。私は難民ではなかったから。
彼らがLGBTQの人たちを攻撃したとき、私は声をあげなかった。私はLGBTQではなかったから。
彼らが私を攻撃したとき、私のために声を上げる者は誰一人残っていなかった。
この詩は私たちに何を伝えているでしょうか。知らん顔してたら、自分を守ってくれる人はいなくなってしまうということです。私たち、ひとりひとり、ユニークな存在です。障がいを持つ方、シングルマザーの方、いろんな背景を持つ方たちとお互いに学び合い、支え合っていき、違いを称え合うべき。もし他の人の権利が奪われているときには黙って見ていないで声をあげましょう」
京都から駆けつけたSWASHのげいまきまきさんがスピーチしました。
「私はバイセクシュアルで性産業に従事しています。セックスワーカーが安全に健康に働けるためのSWASHという団体に携わっています。この赤い傘はセックスワーカーのシンボルです。セクシュアルマイノリティに対する差別発言が、アライではない荒井さんから発せられました。岸田さん、差別禁止は分断すると言った西田さん、どうですか。私が表明したら嫌になりましたか。隣に住むのは嫌だと思いましたか。でも私はお三方がどんなセクシュアリティでも、嫌だとは言いませんから、安心してください。婚姻平等を求めます。異性との結婚はハードルが高くないのに、同性が相手となるといきなり選択ができなくなる、制度から外されるということを恐ろしいと思います。子どもの時からそう感じてきました。私は好きになる人の性別をコントロールできません。日常の仲間にトランスや様々な人がいますが、もしかしたら今目の前にいる人は、結婚の権利があらかじめないかもしれない。婚姻平等を望みながら、叶えられずに亡くなった友人知人がいます。いい加減にしてほしいです。差別がいけないことと言うのに納得しない方がいます。変化に恐れを抱くことはおかしいことではありませんが、ただ、その恐れが何を招いてきたのかを考えてください。当事者の声を聞いてください。政治家ならなおさら。もちろんどんな人も、働き方や状況によっても職業差別を受けます。性産業はコロナ給付から除外されました。セックスワーカーとして重複の差別もあります。もういい加減、変わりましょう」
最後に、「LGBTQ+国会 議会運営委員会」の畑野とまとさんが「突然、1週間でこれをやるのは大変でした。差別禁止法を求める共同声明の文面についてもすごく悩みました」と言って、共同声明の文案を読み上げ、拍手で採択されました。
当事者の方たちのスピーチは、どの方も、切実な、心からの思いが伝わってくるもので、胸を打たれるものがありました(涙ながらの方も多数、いらっしゃいました)
議員さんのご挨拶も、力強く「一緒に闘います」と言ってくださる方もいれば、自身が海外でLGBTQの同僚に接していたとか、留学中にLGBTクラブに参加していたという経験を語りながら、当事者に寄り添う姿勢が伝わってくるコメントをくださる方もいました。与党は公明党の谷合さんお一人だけで、あとは野党の方たちでした(立憲民主党が多数、あとは社民党、共産党、れいわ新選組の方)
最初に浅沼さんがご挨拶して、最後に畑野とまとさんがご挨拶して、スタッフもTransgenderJapanの方が務めていたのをお見受けしたので、今回、TransgenderJapanの方たちが中心になってこの会を開いてくださったんだなとわかりました。正面に掲げられたプログレスプライドフラッグに赤い傘が盛り込まれていたことに象徴されるように、LGBTQのなかでもさらにマイノリティであるセックスワーカーの方やろう者の方、在日コリアンの方、外国人の方も登壇して語り、まさに誰一人取り残さない会になっていたと思います。素晴らしかったです。ありがとうございます。
なお、集会の模様はYouTubeでもご覧いただけます。
マスメディアの方も多数来られていて、NHK、TBS、共同通信、毎日新聞、東京新聞、ハフポストなどで報道されました。世間の注目度の高さが窺えます。
この声が国会議員の方々に届き、理解増進ではなく差別禁止法、LGBTQの人権を守る法整備が進むことを願います。
- INDEX
- 特集:11月20日は国際トランスジェンダー追悼の日
- レポート:金沢プライドウィーク2021
- 特集:11月に観たいLGBTQ映画・ドラマ
- 特集:10月はLGBTQ映画が豊作です
- 【インタビュー】ゲイカップルと地下鉄にいた赤ちゃんが家族になるまでの本当にあった奇跡の物語『ぼくらのサブウェイ·ベイビー』の翻訳出版を目指す北丸雄二さん
- 特集:大阪観光局が発足させた新プロジェクト「OPEN ARMS PROJECT」
- 【PRIDE月間企画】トランス女性を支援したいというアライとしての心意気――映画『片袖の魚』東海林毅監督インタビュー
- レポート:足立レインボー映画祭
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- 雨上がりの渋谷に虹が出ました:「0606LGBT新法制定を求めるハチ公前連帯集会」レポート