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レポート:第10回ピンクドット沖縄
11月20日、めでたく10周年を迎えたピンクドット沖縄が盛大に開催され、記念のパレードも初開催されました。パレードには500人近い方々が参加し、笑顔があふれ、本当に素晴らしい瞬間となりました。
数々の名場面を生んできたピンクドット沖縄がめでたく10周年を迎えました。
2013年に初開催されたピンクドット沖縄は、第1回のときから那覇市が共催するというスゴいイベントでしたが、2016年には、那覇市で同性パートナーシップ証明制度が施行され、第1号となったカップルの結婚式が行なわれ、城間市長が証明書を直々に手渡し、お祝いのスピーチをして、カップルの友人だった中島美嘉さんがサプライズで歌ってくれたりするという感動もありました。しかし翌年、主催の砂川さんが東京に行くことになり、継続が困難に…それはもったいないということで、ホテルパームロイヤルNAHAの高倉さんをはじめアライの方たちが引き継いで開催することになりました。
コロナ禍の影響で、2020年はオンライン、昨年はホールでステージイベントを鑑賞するスタイルというかたちとなりましたが、今年は3年ぶりに広場でのイベントが復活、しかも10周年ということで記念のパレードも開催されることになり、心躍るものがありました。
<ピンクドット沖縄HISTORY>
【インタビュー】2000年のパレード&レインボー祭りと、ピンクドット沖縄を成功させた砂川秀樹さん
https://www.outjapan.co.jp/pride_japan/features/39.html
第5回ピンクドット沖縄が過去最高規模で大成功を収めました
https://www.outjapan.co.jp/pride_japan/news/2017/9/5.html
同性婚をテーマにピンクドット沖縄が盛大に開催、協賛企業は130社超に
https://www.outjapan.co.jp/pride_japan/news/2019/9/3.html
「沖縄のLGBTQ制度 いまとこれから」をテーマにピンクドット沖縄2020がオンライン開催されました
https://www.outjapan.co.jp/pride_japan/news/2020/11/38.html
レポート:ピンクドット沖縄2021
https://www.outjapan.co.jp/pride_japan/features/21.html
Pinkdot okinawa公式前夜祭「▲Azië▼(アジア)」
ピンクドット前夜の11月19日(土)、公式前夜祭として那覇・松山のクラブ「CROWN」でJ-POPとK-POPをフィーチャーしたパーティ「▲Azië▼(アジア)」が開催されました。
沖縄随一と思われるクラブ「CROWN」はたくさんのお客さんで盛り上がっていて、熱気を感じさせました。ドリンクのカウンターに行くと、あの「嫁ニー」さん提供のコーヒー泡盛が売られていました(美味しかったです)
フロアではK-POPに合わせてクイーンさんやダンサーさんが盛り上げていました。
23:30、お待ちかねのショータイムがスタートし、GOGO BOYSやドラァグクイーン、ダンサーの方たちが次々に登場してパフォーマンスを繰り広げました。MAMALAND(沖縄のゲイバーのママさんたち)のショー、本当にキュートでラブリーでよかったです。お客さんも盛んに声援を送ったり、拍手を送ったりして、大盛り上がり。MCの時には、2階席から丸めたお札(チップ)が雪のように降ってくるというたいへん珍しい現象も見られ、面白かったです。
翌日はピンクドットということで、クイーンのみなさんもピンクの衣装を着ていたり、MCでも「今年はパレードもあります!ピンクドットに行きましょう!」と呼びかけられていました。
オーガナイザーをつとめたレスペランザさん、出演者のみなさんにも拍手!
第10回ピンクドット沖縄
20日(日)は、みなさんの日頃の行ないが良すぎたのか、11月とは思えない、汗ばむくらいの陽気となりました。県庁前のパレットくもじでピンクドット沖縄が開催されました。
たしか去年はなかったと思うのですが、パレットくもじに三角のパラグライダーのような形の屋根がつき、全天候型のイベント広場になっていました。11月だとさすがに台風は来ないでしょうが、万が一雨が降ったとしてもイベントが開催できるので、とてもありがたいですよね。
広場には総合受付のほか、琉球大学法学院&沖縄弁護士会、カフーリゾート、KANASAN -okinawa is reborn-、CITI、チェリオなどのブースが出展されていました(こちらのリーフレットを見ていただくと、もっとたくさんの企業が協賛していることがわかりますが、会場のスペースの都合で出展できるブースが限られていたようです)
ステージでは、今年もブルボンヌさん&狩俣倫太郎さんが司会をつとめ、長年の息の合ったコンビで盛り上げてくれました。このお二人に任せていればMCは大丈夫という安心感がありましたし、大事なメッセージもきちんと伝えてくれました。
最初に代表の高倉さんがご挨拶し、市長や県知事のメッセージ、後援自治体・団体、協賛企業の紹介などが続き、(徳島でも大活躍だった)東ちづるさんのご挨拶があり、そして石嶺聡子さんの心洗われるようなライブが行なわれました。
それから、ピンクドット沖縄を立ち上げた砂川秀樹さんと共同代表を務めた宮城由香さんが10年を振り返ってお話しました。トークセッション「アライに聞いてみよう」では、教育関係など様々な立場でアライとして活動する3名の方々が登場し、お話しました。
ドリアン・ロロブリジーダさんのライブは、歌もさることながら、自身が出演する来春公開の映画『エゴイスト』についてのお話や、この映画でゲイカップルを演じている鈴木亮平さん&宮沢氷魚さんからのメッセージの披露などもあり、素敵でした。
続いて、「Marriage foe all Japan -結婚の自由をすべての人に」から現在の訴訟状況などの報告(メッセージの代読)があったのですが、ブルボンヌさんが(ふだんあんなに楽しく盛り上げてくださる方が珍しく涙ぐみながら)社長さんが突然の事故で緊急入院した際、20年来のパートナーの方が面会させてもらえなかったという話をしていて…身につまされました。同性カップルも結婚できる時代が早く来てほしいという願いが、これ以上ないくらいの説得力で届けられた気がします。
そして、ブロードウェイで活躍する「沖縄の宝」高良結香さんのライブが行なわれました。高良さんは今回のピンクドットに出演するためにNY行きのスケジュールを調整してくれたんだそうです。世界が認めるプロフェッショナルな歌に聞き惚れながら、LGBTQのためにこうして最高のライブを無償で披露してくださることに感激しました。
那覇市で初めてのレインボーパレード
15時過ぎに、交差点を渡った国際通りの入口のところで整列が始まりました。
15時半、たくさんのカメラが写真や動画を撮るなか、鼓笛隊の音とともにパレードが始まりました。主催の方、砂川秀樹さん、南定四郎さん、東ちづるさん、高良由香さん、石嶺聡子さんらが先頭を歩き、ブルボンヌさんやドリアンさん、ピンクの衣装を着たり、レインボーカラーのアイテムを身につけたりしたとてもカラフルな方たちが続きました。朝まで公式前夜祭のクラブパーティを盛り上げてくれたドラァグクイーンのみなさんたGOGO BOYの方たちなども(お疲れだったと思いますが)参加してくれました。「虹色ちゅらぁ~ず」のロビンソワさんとジュリアンさん、以前ピンクレゲイーで出演してくれたタツさん、以前ゲイバーを経営していた還暦越えのゲイの方、海外で結婚したというゲイカップル、本当にいろんな方が参加していました。
歩かないながらも、沿道で手を振ったりして応援してくれる方たちもたくさんいました(たぶん、前夜のパーティで呼びかけてくれたので、そのお客さんが来てくれたり、パレードだからということで見に来られた当事者の方も多かったように思います)
国際通りを200mくらい歩き、松尾の交差点で折り返し、折り返すと来る人と戻る人がすれ違いながら手を振ったりハイタッチしたりもして、ハッピープライド!感がありました。
正式に登録して歩いた方が350名ほどだったそうですが(主催の方々が謙虚なので、参加人数を盛ったりしてないんでしょうね)、実際は500名近かったと思います。
パレード参加者のみなさんがパレットくもじに戻ると、そのままフィナーレとなり、ピンクドット副代表理事であるKPG HOTEL&RESORTの田中社長から締めのご挨拶があり(「同性婚の実現を」とおっしゃっていました)、ピンクドット恒例の集合写真を撮って、解散となりました。パレードの高揚感が会場中にみなぎっていて、今まで以上に素敵な、10周年にふさわしい記念写真になった気がします。
ピンクドット10周年を振り返って
私がパートナーの影響で沖縄に通い始めたのは2001年からです。首里城も、北谷も、美ら海水族館、古宇利島、玉泉洞、ひめゆりの塔、慶良間諸島の島々にも行きましたし、いろんな所に行って楽しみましたが、何よりも桜坂のお店の方たちの、いつでも「おかえり」と言ってくれるようなあったかさに魅了されました。かれこれ30回以上行ってますし、沖縄でHIV予防啓発のイベントをやったりもしました。「とかげ」という大型の台風の直撃を受けて帰れなくなったこともありました。クラブイベントもビーチパーティもピンクドットも楽しみました。
そんななかで、一つだけなかったのがパレードでした(正確に言うと、沖縄市では2012年、地元のお祭りに参加するかたちのパレードがあったのですが、単独のレインボーパレードはありませんでした)。沖縄は本当に世間が狭くて、ちょっと出歩くと友人・知人や同級生や親戚に会うような土地だと、だからうちなんちゅはパレードみたいなイベントには参加しないんだと、バーのマスターに言われ続けてきました(ゲイのバレーボール大会なども、那覇で開催すると地元の人が参加しづらくなるので、わざわざ遠い所でやるという話も聞きました)
そういう地元のゲイの方の事情をよく知っているからこそ、砂川さんもパレードではなくピンクドットという広場でのフェス的なイベントを始めたのでした。
いつか国際通りをパレードできる日が来るのかな…パレードをやったとしても30人くらいしか歩かないかもしれないし、当事者がほとんどいないアライだけのパレードになるのかも…と思いながら、20年が過ぎました。
そんな沖縄で、ついに、パレードをする日がやってきたというだけでも本当に胸が熱くなる思いだったのですが、ふたを開けてみれば、あんなにもたくさんの方たちが笑顔で参加して、あんなにもたくさんの方たちがパレードを応援してくれて、本当に感激しました(絶対に無理だと思っていた沖縄でのパレードが実現したことに感動し、泣いていた方もいらっしゃいました)
国際通りでパレード越しに見た沖縄の青い空のなんと美しかったことか…あの景色は一生忘れないだろうと思います。
時代が進み、全国で同性パートナーシップ証明制度が広がり(那覇市は早かったですよね)、職場でもSOGIハラ(LGBTQへの侮辱や差別)やアウティングが禁止となり、世間のLGBTQに対する認識が大きく変わったということもあるでしょうが、那覇市が城間市長の下でLGBTQ施策をどんどん進めたり、県がLGBTQ支援宣言を発したり、ピンクドットがアライの方たちによって受け継がれ、守られてきたおかげで、この日を迎えられたのだと思います。歩行者天国の日曜日とはいえ、国際通りでパレードを行なうためには、関係各所との調整も必要だったはずですし、いろんなハードルを乗り越えて開催を実現してくださった高倉さんたちの尽力に、敬意を表します。
たくさんの方々の、LGBTQを支援しよう、同性婚を実現させようという思いが、このパレードの晴れやかさ、参加した方々の笑顔や感動の涙につながりました。心から感謝します。
ピンクドット公式前夜祭で、ゲイバーのマスターさんたちがたくさん参加していたことも、とてもうれしかったです(『ONE』のリンダさんのおかげじゃないでしょうか)
また、飲みに行ったお店で、「そう言えば、トランスマーチって今日?明日だっけ?」とマスターが言って、お客さんが「職場にトランスジェンダーの方がいるけど、いろいろ大変そうだよ」という話をし始め…という場面があって、ちょっと驚きました。桜坂のゲイバーでそういう話が自然とされるようになったこと、本当に感慨深かったです。
以前『LUV!』やたくさんのお店が入っていた桜坂のビルは、今は取り壊されて更地になっていて寂しい限りですが(このあとどうなるのでしょうか…)、これからも沖縄のシーンは発展を続けるでしょうし、素敵なイベントもたくさん開催されるでしょうし、いつでも「おかえり」と僕らを迎えてくれると思います。そして、今回のパレードをきっかけに、いつかもっと地元のみなさんがパレードを歩ける(安心してカミングアウトできる)ようになる日が来るんじゃないかと思えました。
ちなみに11月20日はトランスジェンダー追悼の日ですが、LGBTQイベントにおけるピンクというのはもともとナチスに虐殺された同性愛者への追悼を表しているわけですから(ピンクシャツデーは関係ありません)、この日、これまで亡くなったLGBTQの人々を追悼しつつ、社会を変えていくためのプライドイベントを開催するということには意味があると思いました(なのですが、そんな日に、コロラド州のLGBTQクラブで銃撃事件が発生したというニュースが届き…本当に悲しく、やりきれない、暗澹たる気持ちになりました。そして、まだまだLGBTQコミュニティが結束してアンチ勢力と闘うためのプライドイベントが開催され続けなければいけないという思いを強くしました)
ともあれ、特別な思い入れのある沖縄の那覇の街で今回、こうしてプライドパレードが開催され、大成功を収めたことを、心から祝福するとともに、スタッフや協力者のみなさんに、心から感謝申し上げます。ありがとうございました。また来年、ピンクドットが盛大に開催されることを楽しみにしています!
(取材・文:後藤純一)
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