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レポート:「work with Pride 2022」
LGBTQ+も働きやすい職場環境づくりについて考えるカンファレンス「work with Pride 2022」が経団連会館・国際会議場で11月10日(木)、3年ぶりにリアル開催されました。
LGBTQ+も働きやすい職場環境づくりについて考えるカンファレンス「work with Pride 2022」が経団連会館・国際会議場で11月10日(木)、3年ぶりにリアル開催されました(オンラインで配信もされていたので、ハイブリッド開催です)
PRIDE指標の結果も発表され、過去最多となる838の企業・団体が認定を受けました(グループ・複数社応募を含む)
会場には数百名の方々が詰めかけ、トークセッションを真剣に聴いたり、ラーム・エマニュエル駐日大使やryuchellさんのユーモアを交えたお話を笑いながら楽しんだり、熱さを感じさせつつも和やかな雰囲気となりました。
フロアでは、フォトブースで記念写真を撮ったり、見知った方どうしお話をしたり、また、実行委員会参加企業の取組み紹介コーナーなども設けられていました。
「work with Pride 2022」カンファレンス
初めに小池都知事からのメッセージが代読されました。11月1日から「東京都パートナーシップ宣誓制度」が始まったことを受けて「事業者も福利厚生でご活用いただくなどのご協力をお願いいたします」との言葉もありました。大きな一歩ですね。
続いて、ラーム・エマニュエル駐日大使が登壇し、基調講演を行なった後、松中権さんとの質疑対談を行ないました。素晴らしいお話でした(詳細はこちら)
その後、タレントのryuchellさんが登壇し、「自分らしく働くということ」についてお話しました。テレビに出はじめた頃、「男なのにメイクしてるの?」などと言われたが、これが自分だと続けてきたことで、今は言われなくなった。以前はバラエティ番組では女性だけ飲み物にストローがさしてあったが、いつのまにか男性でもメイクをしていればストローをさしてくれるようになった。ファンの方に「りゅうちぇるさんのおかげで助かった」と言われることもある、といったお話でした。
それから、中川紗佑里氏(株式会社電通グループ 電通総研 研究員/電通ダイバーシティ・ラボ)と松岡裕一郎氏(MSD株式会社 人事部門 人事グループディレクター)が登壇し、今回実行委員会として参画している企業の従業員(全25000人、うち当事者と申告した方が830人)に対してLGBTQ+に関連した制度の実施・利用状況や、職場に関する意識について調査した結果の速報を発表、社内LGBTQ施策についてのヒントや手がかりを提供してくださいました。
アライ(積極的な支援の行動をとっている人)と自認している方が9%、サポートしたい(という気持ちは持っているものの行動に移していない)人が66%という、意外にアライを自認する人が少ない結果となりましたが、見方を変えれば、どんな支援の仕方があるかという情報を提供すれば、行動に結びつくと期待できるというお話がありました。
実際に気をつけて行なっていることとして、「差別語を使わない」が最も高く、次いで「旦那さん・奥さんではなくパートナーと言う」が12%という結果が出ました(無関心な方も多かったです)。同性婚に賛成する方は66%に上りました。
当事者の声として、制度はあっても利用しづらい、心理的安全性が確保されておらず、カミングアウトにはハードルがあるという声が目立ちました。
ファインディングとして、本社では実践しているものの現場にはまだ浸透していないことも多い、無関心層へのアプローチに注力したほうがよい、カミングアウトさせることが目的ではなく、誰もが働きやすい環境を整えていくことが大事、若い人はOKという思い込みがあったりするが、若い人も困ってる、といった気づきが得られました。
たいへん興味深いお話でした。今回は速報でしたが、後日、詳細なデータが発表されるそうです。
続いて、「企業と同性婚」トークセッションです。サブリナ・ワン氏(EY Japan Diversity and Inclusiveness Specialist)がモデレーターをつとめ、長野修平氏(KDDI株式会社 コーポレート統括本部 人事本部 人事企画部長)、安渕聖司氏(アクサ生命保険株式会社/アクサ・ホールディングス・ジャパン株式会社 代表取締役社長兼 CEO)、小山大作氏(ラッシュジャパン合同会社 ブランドコミュニケーション マネージャー)、寺原真希子氏(公益社団法人「Marriage For All Japan – 結婚の自由をすべての人に」代表理事)がパネリストとして登壇しました。
「海外で同性婚しました」と自己紹介して拍手を贈られたサブリナ・ワン氏は、「企業によって取組みは様々だが、自社の社員の幸福という点で方向性は同じだと思う。しかし、社内でいくら同性パートナーシップ制度を整えても法的権利には手が届かない。国に任せるのではなく、企業も社会に働きかけを行なうことができるのでは?」と提起し、長野氏は、KDDIが日本で初めて実現した(発明したと言っても過言ではないと思います)ファミリーシップ制度を明石市が取り入れるようになった事例を紹介、「社員もそれを誇りに感じています」と語りました。LUSHの小山氏は、今年3月と7月の「結婚の自由をすべての人に」キャンペーンのことを紹介、「3月のときは、翌日完売した店舗もありました。また、ポジティブな応援のメールが来たり、家族や友人にもカミングアウトできない当事者の方が店舗のスタッフにカミングアウトしてくれて、私たちのショップがコミュニティにもなれると感じました」「社員がみんなで社会を変えるぞというパッションを持って取り組んでいます」と語りました。寺原氏は、婚姻平等(同性婚法制化)への賛同企業が300社を超えたことを紹介しながら、「企業はたくさんのことができます。ぜひそのプラットフォームを活用して、自社でできるキャンペーンを。来年はLUSHさんだけでなく常にどこかでキャンペーンをやってる状況になってほしいです」と語りました。
「企業とトランスジェンダー」トークセッションは、川向緑氏(日本オラクル株式会社 ソーシャル・インパクト プリンシパルスペシャリスト)がモデレーターをつとめ、上村雄亮氏(東日本電信電話株式会社 総務人事部 サステナビリティ推進室 担当課長)、田中友彩氏(株式会社サイバーエージェント AI事業本部 オンライン接客事業部 開発責任者)、神谷悠一氏(一般社団法人 LGBT法連合会事務局長)、杉山文野氏(NPO法人東京レインボープライド 共同代表理事 / JOC理事)がパネリストとして登壇しました。
最初に杉山氏がトランスジェンダーが直面する困難や課題について概説し、性別移行のどの段階かによっても異なるため、マニュアルというより個別対応が必要、当事者には2種類カミングアウトがある、今後性別移行していくんですというカミングアウトと、移行後のもともとはこうだったというカミングアウト、トランスだけでなく男女の格差の是正も課題、シーソーで元の位置に戻したい時にどこに乗るかというと、真ん中に乗っても傾きは変わらない、力が弱い方に乗らないと変わらないわけで、じゃなあなたはどこに乗りますかということなんです、といったお話を展開。さすがと唸らせるものがありました。シーソーの喩えなどは今後、いろんな研修や勉強会などで使っていけると思います。
神谷氏は「個別対応が必要」ということに補足して、「個別ニーズだからといってゼロから積み上げるのではなく、ある程度の制度や環境を整えておくこと。合理的配慮の考え方で、申し出があったら調整していけばよいと思います」と話していました。
それから、当事者(トランス女性)である田中友彩氏が、女性として働きたいと7年前にエージェントに相談し、性別移行途中でも応募できる企業を探していただいた、問い合わせて事情を説明してくれたりした、結果、今の会社に就職することができたという自身の体験を語ってくれました。「会社のサポートの姿勢、相談できる環境があることはとても大事です」。田中氏は入社後に社員名を通称名に変えたそうですが、戸籍上の氏名の変更において通称名を一定使っている実績が重視されるため、社内で通称名を使えたことはとてもありがたかった、とも。川向氏の「トランスジェンダーの社員が性別移行しても働き続けられるようになるためには?」という質問に対し、田中氏は、ホルモン療法で体調を崩してしまうこともあったが、エフ休(Female休暇)が適用されて助かったというエピソードも紹介していました。
上村氏からは、通称名に関し、社内システムの結婚前の旧姓の部分を通称名として利用できるようにしたという事例の紹介がありました。
そのほか、杉山氏が性同一性障害特例法の要件緩和も企業の皆さんにぜひ応援してほしいと訴える場面もありました。婚姻平等や差別禁止法だけでなく、特例法の見直しも非常に重要な法的課題です。国際社会から断種の強制は人権侵害であると非難されています。(明日はトランスマーチです。皆様ぜひご参加を。よろしくお願いいたします)
PRIDE指標2022
休憩をはさんで、PRIDE指標2022の発表が行なわれました。
今年は約400社から応募があり、昨年より約100社増えたそうです。中小企業の応募も増えているそうで、喜ばしいことです。結果は、ゴールドが318社(グループ・複数社連名応募を含むと合計701社)、シルバーが51社(グループ・複数社連名応募含むと合計86社)、ブロンズが29社(グループ・複数社連名応募を含むと合計51社)となりました。
記念写真(ステージ上からカメラが客席を写すかたち)のあと、ベストプラクティスが発表されました。今年は3社の取組みが選ばれました。杉山文野氏(東京レインボープライド/プライドハウス東京理事)と、野口亜弥氏(S.C.P.Japan/プライドハウス東京理事)がプレゼンターをつとめました。
・神戸製鋼
コベルコ神戸スティーラーズの試合の来場者に対し、レインボーフラッグと説明リーフを配布し、啓発を行なったという取組みです。スポーツは幅広くたくさんの人々に情報を届けられるプラットフォームで、スポーツの分野での取組みは新しく、意義があるということで評価されました。
壇上に上がったご担当者は、「たくさんの方々がこれを機にLGBTQについて話したり、お子さんに話している親御さんもいて、アライの輪が広がりました」「お子さんからお年寄りまで、会場中でこの旗が振られていた光景は感動的でした」と熱く語っていらっしゃいました。スティーラーズのキャプテンからのビデオメッセージもありました。
・トヨタ自動車
豊田市と連携し、女子ソフトボール部が公式試合において「レインボーマッチ」を開催しました。神戸製鋼と同様、スポーツ界での取組みです(行政との連携にも意味があります)
壇上に上がったご担当者は、「多様性にふれてもらうよい機会になりました。当日はみんなレインボーを身につけていて、知らない方も興味を持ってくれました」「リーグの理解にも感謝します」と話していました。同じく、女子ソフトボール部からのビデオメッセージも上映されました。
・PwC Japanグループ
自社健康保険組合における「トランスジェンダー対応のある健診機関」該当基準を策定し、レインボーマーク付与の提携医療機関を拡充しました。
ご担当者のお話によると、ある当事者社員の声を聞いて、健保組合のレインボーマーク基準を見直し、トランスジェンダーインクルーシブな基準を策定したうえで、賛同していただける医療機関を一件一件当たって調査したとのことです。「小さな取組みではありますが、皆さんの会社でも、これならできるかなと思えるようなことですので、ぜひ。『乗りやすいシーソー』だと思います」という素敵なコメントをくださいました。
それから、レインボー認定の表彰が行なわれました。今年は14社が認定されました。時間の都合で取組みの内容の紹介は割愛されたのですが、評価委員会の大山みこ氏(経団連ソーシャル・コミュニケーション本部上席主幹 / CATCHY代表)、 河野禎之氏(筑波大学 人間系 助教)、小島慶子氏(エッセイスト / タレント / 東京大学大学院情報学環客員研究員)から表彰状が手渡されました(エティックの番野智行氏は欠席でした)。その後、評価委員会の皆さんが「チャレンジしたみなさんにも敬意を表する」「社会を変えていために、あそことコラボしたらよいのでないか、など理想を追い求めて、意味のある活動をしていただけたら」「社会にインパクトを与える活動は、未来の子どもたちにもつながる」「まだ認定がない業種業界にも広がりを」「大きな会社じゃないけど何とかしたいという熱い思いが伝わるコメントに胸を打たれた」といったコメントを語ってくれました。
最後に、来年度のPRIDE指標についてのアナウンスがありました。
・2023年度から「work with Pride」を一般社団法人とする
・PRIDE指標の審査を有償化(応募企業から審査料をいただく)
・実行委員会の参画企業を幅広く募集します。
PRIDE指標2023についてのオンライン説明会が来年1月18日(水)13:30〜に実施されるそうです(おそらくアーカイブも残ると思うのですが、もしご参加いただけると、その場で質問などもできるのではないかと思います)
- INDEX
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