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レポート:Akita Pride March
5月28日、長い冬をじっと我慢して春に芽吹くふきのとうのように、秋田市でAkita Pride Marchが初開催されました。午前中にはPRIDEの歴史についての講演会もあり、素晴らしいイベントとなりました。
秋田で2020年5月に初のプライドパレードを開催!という発表があったのは2019年10月のことでした。いろんな色・大きさの秋田犬たちがレインボーフラッグを掲げて歩くとてもかわいいイラスト(秋田公立美大のLGBTQサークルのみなさんが製作したそうです)が素敵で、きっといいパレードになるだろうなと思っていました。しかし、コロナ禍のおかげで2年間、開催することができず(みなさん、とてもつらかったと思います…)、ようやく今年、開催が実現したのでした。
秋田は、東北6県の中でもLGBTQのことがそれほど盛んではないイメージがあるかもしれませんが(残念ながら現在は、秋田にはゲイバーが1軒もないそうです)、前述の秋田公立美大や国際教養大学にもLGBTQサークルがあり、「性と人権ネットワークESTO(ESteem-TOhoku)」という団体が活動しており、2017年にはLGBT成人式が開催されたりしています。
2022年5月28日(土)、長い冬をじっと我慢して春に芽吹くふきのとうのように、Akita Pride Marchが開催されました。レポートをお届けします。
2022年5月28日(土)午前10時、秋田総合生活文化会館・美術館(アトリオン)の会議室に人々が集まってきました。トランスマーチを開催しているTransGenderJapan共同代表でアクティビストの畑野とまとさんが、PRIDEの歴史についての講演を行なうことになっていたのです。LGBTQだけでなくアライの方も(ファミリーマートの方なども)来られていて、会場はほぼ満員でした。秋田で、土曜日の午前中からPRIDEについて学ぶためにこんなにたくさん人が集まるなんて…と感慨を覚えました。
お話は、ソドミーの罪から始まり、世界で初めてドラァグクイーンを名乗ったウィリアム・ドーシー・スワンが1896年、スワンの家(のちのドラァグ・ボールの原型)でパーティをしていたところを警察に襲撃され、逮捕・拘留されたが、大統領に書簡を送って恩赦を求めた、これがアメリカでの最初の抵抗運動である、というお話や、1930年代に活躍したSister Rosetta Tharpeというレズビアンの方がロックンロールの始祖であるということ、ドイツのマグヌス・ヒルシュフェルトの性科学研究と科学人道委員会(その成果はナチスによって燃やされてしまった)、ストーンウォール以前にLAやサンフランシスコのドーナツ屋などで起こっていた小さな暴動のことなど、ストーンウォール暴動より前の、あまり知られていないような出来事がたくさん語られていました。有名なシルヴィア・リヴェラの73年のスピーチ(トランスを排除する白人の裕福な同性愛者たちへの抗議)も映像で見せてくれて、身が引き締まる思いでした。とても1時間では収まりきらないような、1時間があっという間に感じるような、意義深いお話でした。「どうしたら社会を変えていけるんでしょう?」という問いに対し、「投票行動も大事だし、みんなで力を合わせて声を上げていくことも大事」と語っていて、本当にそうだなぁと。
(とまとさんは6/26(世界中でパレードが開催される日)に北丸さんと「Pride History 2022」というトークイベントを開催します。高円寺です)
1時間のお昼休憩の後(同じ建物内に休憩用のお部屋が取ってあって、お弁当を食べたりできるようになっていました)、秋田駅西口のアゴラ広場に、たくさんの(事前に約100名の申込みがあったそうです。スゴい!)方たちが集まってきました。取材のテレビカメラなども入っていました。
この頃には少し雲行きがあやしくなってきて、ちょっと雨が降ったりもしたのですが、1時半からステージでオープニングイベントがスタートしました。
共同代表で「性と人権ネットワークESTO(ESteem-TOhoku)」の代表でもある真木柾鷹(まさきまさたか)さんが、「25年活動してきて、秋田を離れる方もいたり、震災のこともあり、無力感を覚えることもありましたが、今年はパレード開催だけでなく、秋田県や秋田市でパートナーシップ制度も導入され、感謝の年になりました。今日は、みなさんと無事にゴールできますように。『私たちはここにいるよ』と伝えましょう。一緒に歩いていきましょう」とスピーチし、大きな拍手が起こりました。
それから、今回のパレードに後援してくれている秋田県と秋田市、そして秋田にゆかりのある南定四郎さんからの祝辞が読み上げられました。
秋田県の佐竹知事は、「本県で初めてのプライドマーチの開催、お祝い申し上げます」「開催に尽力された方々に敬意を表します」「秋田県は差別解消条例を制定し、多様な文化や価値観を受け容れ、寛容で多様性に満ちた社会づくりを進めて生きます」「性的マイノリティの方の生きづらさを少しでも解消するため、パートナーシップ宣誓証明制度も開始しました」「こうしたなかでプライドマーチが開催されることはたいへん意義深く、開催をきっかけに性的指向や性自認への理解が広がり、性的マイノリティの人権が尊重され、秋田がより多くの方にとって住みやすい場所になることを願いっています」といったメッセージを寄せました。真木さんは、ESTOがLGBTQの自殺防止策に取り組んだ際、県が支援してくれたこと、LGBTQを中傷する不審なビラが撒かれた際、佐竹知事が毅然と「こうしたことはすべきでない」と述べ、差別解消条例を制定してくれたとして、県知事と県の職員のみなさんに感謝していました。
秋田市の穂積市長のメッセージも、「本日のプライドマーチの開催を心よりお慶び申し上げます」「プライドマーチはこれまで、多様な性を受け容れ、すべての人が誇りを持って生きていこうというメッセージを発信してきました。こうした歩みが、偏見の解消と性的マイノリティの人権の向上に寄与してきたと認識しております」「本市では、互いの人権を尊重し、一人ひとりが個性や能力を十分に発揮できる社会の実現を目指し、その取組みの一つとして先月、秋田市パートナーシップ宣誓制度をスタートしました」「プライドマーチが、市民がさらに理解深めるきっかけとなり、生きづらさの解消に向けた力になると考えます」という素晴らしいものでした。穂積市長はパートナーシップ宣誓制度の導入を公約して再選された方で、市の職員の方々も研修を受けたり、一生懸命取り組んで来られたそうです。
それから、日本初のプライドパレードを開催するなどしたパイオニアで、秋田で育った南定四郎さんからのメッセージです。昨年、秋田に来てお話する予定でしたが、叶わず、今回もご都合で来られませんでした。「私が急行列車に乗って秋田から東京へ向かった68年前を思い起こせば、大きな地殻変動が起こったような驚きを覚えます」「秋田にレインボーパレードが実現したことは、まさに時代の先端を走る社会現象です」「そのような力を生んだのは、自殺予防の啓発活動など地域住民の身近な要求を自分事として取り上げてきたことが生かされたのではないかと推察しております」「皆様と膝を交えた交流をしたく、次回に希望を抱いております」
最後に、在札幌総領事のアンドリュー・リーさんは、「秋田でこうして声を上げ、闘い続けてこられた方々に感謝します」とか、「私たちの心はみなさんと共にあります」という力強いメッセージを寄せてくれました。
祝辞の読み上げの後、パレードに向けて、かけ声の練習をしようということで、午前中に講師を務めた畑野とまとさんがステージに上がり、「ここにいるよ!」とコールし、みんなで「We are here!」と声を合わせました。
14時、秋田初のプライドパレードがスタートしました。アゴラ広場を出発し、駅前の大通りを西へ行進、時折小雨が降ってきたりしましたが、スピーカーから流れる音楽にも励まされ、千秋公園へと歩みを進めました。先頭では、共同代表の方たちが、たくさんの寄せられたメッセージを読み上げていました(公式Twitterで紹介されていますので、ぜひ読んでみてください)。信号待ちのところで真木さんは自らマイクを持ち、思いを語りはじめ、そのなかには、東京に出て、HIVに感染して療養のために秋田に帰って来たという方もいる、もし学校で性感染症について教えられる機会があったら、そうはなってなかったかもしれない…というお話もあって、胸が痛みました。
千秋公園に入ったところにある秋田市文化創造館という建物のところで、約15分間の休憩となりました。トイレにも行けるし、何か飲んだりもできます、足が悪かったり疲れやすい方なども座って休んでいただけます、という意味の休憩です(パレードの最中に休憩が入るという経験は初めてで、きめ細かな配慮だなと思いました)。休憩中にも祝辞の読み上げやスピーチがありました。いわてレインボーマーチ、みやぎにじいろパレードの方がスピーチし、青森レインボーパレードや函館の団体の方などからのメッセージも読み上げられました。
休憩を終えて、参加者のみなさんは再びパレードを開始し、今度は中央通りのほうまで歩き、西武デパートやフォンテAKITAに面するアーケードを通って、出発地点のアゴラ広場に帰ってきました。みなさん、晴れやかで、楽しそうで、いい笑顔でした。スピーカーから流れていた音楽の最後はクイーンの「I was bornt to love you」でした。共同代表の方たちがご挨拶して(「こんなにたくさんの方にご参加いただいて、感激です。続けていくことが大切だと思いました」など)、最後に参加者のみなさんで集合写真を撮って、解散となりました。
南さんもおっしゃっていたように、以前はきっと(青森や岩手もそうだと思いますが)パレードすらも夢のような話だったと思いますが、こうして、秋田という土地でパレードが開催されたことはスゴいことですし、全国のみなさんに勇気を与えるような、とても意味のあるプライドだったと思います。このパレードが続いていくことで、きっと地元の当事者の方たちも少しずつ参加できるようになり、LGBTQが生きやすい社会に変わっていくことと思います。
3年もの時間をかけて準備をしてきて、ようやく開催が実現したAkita Pride March。実行委員会の方々に心から敬意を表し、感謝申し上げたいと思います。
なお、プライドマーチの1週間前、LUSHイオンモール秋田店が、チャリティイベントを開催し、売上を寄付してくれていたということも申し添えたいと思います(LUSHは盛岡でもレインボーフラッグを掲げたり、マーチ自体にも参加してくださっていました。素晴らしいです)
- INDEX
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- レポート:足立レインボー映画祭
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