FEATURES
レポート:レインボーフェスタ和歌山2022
2022年3月26日(土)27日(日)、和歌山城西の丸広場でレインボーフェスタ和歌山2022が開催されました。フェスタは2017年から開催されていますが、今年初めてパレードも行なわれました。
3月26日(土)27日(日)の2日間、レインボーフェスタ和歌山2022が開催され、初のパレードも行なわれました。こちらでお伝えしたように、1日目はあいにくの天気となりましたが、2日目の日曜は見事に晴れて、桜も咲き誇るなか、フェスタとパレードが盛り上がりを見せました。レポートをお届けします。(後藤純一)
1日目:3月26日(土)
あいにくの雨(ときどき強風)という天気ながら、和歌山城を望む絶好のロケーション・和歌山城西の丸広場でレインボーフェスタ和歌山が朝10時過ぎにスタートしました。
広場にはLIFEGUARDとRainbow Waterを配ってくれたチェリオや、パンダのすみれ(Smile)ちゃんを連れてきてくれたアドベンチャーワールドなど、いろんなブースが出ていました。
ステージでは、古座川町の酒屋&カフェバー&駄菓子屋「もりとよ商店」のご夫婦が司会をつとめ(素人とは思えない、実に楽しく素晴らしいMCでした)、最初にブースの紹介が行なわれました。和歌山でずっと活動しているLGBTQ団体「チーム紀伊水道」の倉嶋麻理奈さんは、「2022年は記念すべき年です」と語りました。一つは、和歌山県で初めて同性パートナーシップ証明制度を橋本市が承認しれくれたこと(目の前の市役所に向かって「和歌山市も」と呼びかけていました)。そして、WHOの国際疾病分類の第11回改訂版(ICD-11)が発効され、トランスジェンダーが障害ではなくなったことです(詳細はこちら)。ブースでは手作りのレインボーカラーのブレスレット、その名も「ふぞろいのリングたち」を販売してます、と笑いも交えながらのお話でした。
続いて、和歌山出身である性善寺の柴谷宗叔住職のお話。性別違和を抱え、居場所がなく「まさに今吹いているような風」を感じながら生きてきたけど、阪神淡路大震災を経験して「仏様に助けていただいた」と感じ、高野山で仏教を学び、性的マイノリティのお寺を作りたいとの思いがつのり、1回目のレインボーフェスタ和歌山のときに寄付を呼びかけたそうです。みなさんからいただいた浄財のおかげもあって、3年前に性善寺を建立、性的マイノリティの相談に乗っているそうです。子どもがいない同性カップルは、片方が亡くなると遺されたパートナーは独りになってしまうといい、そんな方の終活の相談に乗ったり(永代供養のお墓の手配なども)、トランスジェンダーの方の場合、男/女に分けられた戒名では死んでも浮かばれないと、生前にその方に合った戒名をつけてあげたりということもしているそう。仏式の同性結婚式も受け付けているそうです。とても心が洗われる、ありがたいお話でした。
それから、弊社の屋成と、実行委員長の安西さんによる「LGBTQと企業」についての対談が行なわれました。安西さんは、和歌山の企業のLGBTQに対する理解のなさについていろいろと…例えば、地元で非常に有力な某企業に協賛のお願いにあがったときに、社長から「同性愛は受け入れられない」と面と向かって言われたことなどを語り、まだまだ男尊女卑が根強い、保守王国である和歌山で、どうしたらこういう意識を変えていけると思いますか?と問いました。屋成は、「僕も全く理解がないところからスタートした。ただ知らないだけという人も多い。きちんと順序立てて話すと、なるほどね、と納得してくれる人もいる。何がその人の琴線に触れるかというのは、結構いろいろあって。会社のトップにいるような方は、歴史好きな人も多く、戦国武将と小姓の同性愛の話なんかをすると、興味を持ってくれたりする。その人に合うチャンネル を工夫してもよいかもしれない」「今はオンラインでセミナーをやっているが、地方の企業の方が熱心に参加してくれたりする」「4/1からパワハラ防止法が中小企業にも適用になるため、知らないでは済まされない時代になる」といったお話をしていました(ちなみに、今回のパレードのフロートは「LGBT-Allyプロジェクト」が資金提供しているとして、安西さんが謝辞を述べてくださいました)
その後、よさこいの演舞が披露され、雨のなか、子どもたちが一生懸命よさこいを踊ってくれました(感謝しかありません…風邪引かないといいのですが…)
フィナーレとして、音楽に合わせて手話の振付をするRainbow Sign Orchestraのパフォーマンスが行なわれました。ユーミンの「やさしさに包まれたなら」、坂本冬美さんの「ブッダのように私は死んだ」(まるでドラァグクイーンのようなパフォーマンス、素敵でした)など数曲を披露、最後は「きっと明日はいい天気〜」という歌詞の「にじ」で、嵐のなか、本当に明日は晴れてほしいよね、という「まさに」な選曲となりました。
雨はさほどひどくはなかったのですが、時々、ものすごい突風が吹いて、テントが倒れないようにみんなで必死に押さえたり、テーブルの上のチラシ類が飛んでいったり、テーブル自体倒れたりという、なかなかハードなイベントになりましたが、一緒に嵐を乗り越えたというある種の連帯感が生まれ、きっといい思い出になるよね、と言い合ったりしながら。雨にも負けず、風にも負けずという言葉がこんなに当てはまるイベントもそうそうないな、と思いました。
司会のお二人が最初から最後まで明るく楽しく盛り上げてくれたおかげもあって、1日目はなんとか無事に、なごやかな雰囲気で終わりました。
2日目:3月27日(日)
予報通り、見事に晴れ渡り、絶好のイベント日和となりました。桜も一気に満開に近づいた感じです。
隣の広場で「全肉祭」というグルメフェスが開催されていることもあって、前日とはうってかわって、人出も多く、通りすがりの家族連れなども多数、会場を訪れ、にぎやかでした。
まず、広場に並んだブースを紹介します。たくさんの協賛ブースが出展されていました。
ステージでは、和歌山出身で、大阪のレインボーフェスタ!でも手話通訳や虹組ファイツの一員として活躍していたQちゃんがMCをつとめ、オープニングで実行委員長の安西さんが挨拶し、2日目のイベントがスタートしました。
最初に、トランスジェンダーのシンガーソングライター、魔梨威さんがギター弾き語りでライブを披露。ベテランの風格を感じさせる、圧倒的な迫力の演奏でした。しみじみ聴き入る方、多数でした。
ここで株式会社アワーズ(アドベンチャーワールド)のブースのほうから、台車に乗ったパンダのすみれちゃんが登場、お子さんたちも集まってきて、大撮影大会になりました。未来の世界からやってきたという設定のすみれちゃんに対し、Qちゃんがさりげなく「未来の人たちは優しいですか?」と尋ねていたのがちょっとグッときました。
パレードに関する事前アナウンスの後、ゲイのシンガーソングライター、KOTFEさんがライブを披露。一緒に歌えるようなポップでキャッチーな楽曲で盛り上げました。その後、QちゃんとのトークショーでKOTFEさんは、昨年3月まで警察官をしていて、今は元消防士のパートナーがいて(Qちゃんがそのプロフに興奮してました)、世田谷区でパートナーシップ宣誓をしていること、世田谷区の取組みの素晴らしさなどについて語ってくれました。
お昼休憩をはさみ(隣の「全肉祭」でお昼ご飯を調達する方、多数。私も和歌山ラーメンのまぜそばを食べましたが、たいへん美味しゅうございました)、いよいよパレードの時間となりました。公園の真ん中に整列し、大通りのほうへと移動、待機していたトラックと合流し、出発…の予定だったのですが、音響トラブルで少し待つことに。しばらくして音楽も流れはじめ、13時半頃にパレードがスタートしました。
晴天の下、レインボーに飾り付けられたトラック(フロート)を先頭に、100名近い方が参加したパレードの一行は、公園からけやき大通りに出て、和歌山城の周りをぐるっと一周して、屋形町の交差点を左折、屋形通りを北上して三木町の交差点を左折し、再びけやき大通りへと入って和歌山城西の丸広場に帰着、という約2.5kmのコースを行進しました。みなさん最初から最後まで元気よくノリノリで歩き、沿道の人たちに手を振ったりしていました(振り返してくれる方、多数)。小学生の男の子が一緒に歩きながら熱心に写真を撮っていて(ご家族で参加していました)、道行く人に声をかけられたりしている様も微笑ましかったです(男の子に「カメラ何使ってるの?」と聞かれ、カメラマン仲間的な友情が一瞬、芽生えたり)。当事者だけでなくアライの方、車椅子の方、いろんな方たちが参加していました。なかには、地元が和歌山で、今は北海道の大学に通っているという方もいました(わざわざパレードに参加するために来られたそうです)
パレードを歩いたみなさんが帰って来たあと、各ブースの紹介が行なわれたり、急遽Rainbow Sign Orchestraのパフォーマンスが行なわれたり、またまたすみれちゃんが登場したりして、最後に、実行委員長の安西さんと、レインボーフェスタ和歌山in那智勝浦の代表の方がステージに上がり、Qちゃんと3人で「ハッピープライド!」で締めて、閉幕となりました(Qちゃん、まる一日しゃべりっぱなし…おつかれさまでした)
片付けをしている間、パレードで使ったレインボーカラーの風船を、広場にいたお子さんたちに差し上げていたのですが(割ってしまうより、そのほうが素敵ですよね)、ビックリするくらい大人気で、風船をもらえなかった子が駄々をこねて、奥のほうにあった風船を1個だけあげたら泣きやんでくれて…というほっこりするシーンもありました。
イベントの趣旨をよく理解せずに広場に来たり、パレードを目にした方たちなども多かったかもしれませんが、毎日新聞の記事を見たり、あとでLGBTQのイベントだったんだなぁと知って、明るくて親切な人たちだったと思ってくれるんじゃないかなと思いました。
あたたかくて、優しい気持ちになれるイベントでした。
- INDEX