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特集:プライド月間に観ることができるクィア映画
この6月に公開(配信)予定のクィア映画をまとめてご紹介します。
(映画『最も危険な年』より)
以前は海外の良質なクィア映画※を日本で観ることは難しく、東京国際レズビアン&ゲイ映画祭(現レインボー・リール東京)などのクィア系映画祭が頑張って上映の機会をつくってきましたが、次第に日本の映画配給会社がそうした作品も積極的に配給するようになって一般公開されるようになり、また、近年は、Netflixなどのサブスク配信サービスの発達のおかげもあり、リアルタイムでどんどん観ることができるようになってきました。また、非商業的で劇場公開やサブスクの配信にも乗らないようなマイナーなLGBTQ映画であっても、海外での評判を聞いたり実際に観た方が自主上映会のような形で日本での上映を実現してくださったりもしています。様々な映画祭でもLGBTQ作品が含まれるのが普通になってきています。そういう意味で、LGBTQ映画に触れる機会は、以前に比べると飛躍的に増大し、今は恵まれた環境にあると言えます。
『Disclosure トランスジェンダーとハリウッド: 過去、現在、そして』や『I Am Here ー私たちはともに生きているー』がそうであるように、いくら言葉を尽くしても映像で観ることのインパクトにはかなわない、当事者の経験・リアリティや思いに触れるうえで映画がとても有効だと言えるケースがたくさんあります。特にトランスジェンダーの方はLGBに比べると人口も少なく、身近にトランスジェンダーの友人・知人がいないがゆえに無理解や誤解につながるという指摘も海外ではなされています。当事者の(ステレオタイプではない)リアルな姿を伝えることは、とても大切です。
そういう意味で、アライの方々にもぜひ、LGBTQの良質な映画作品に触れていただきたいと願うものです。
いつか「LGBTQ映画の名作10選」的な企画もお届けしたいと思いますが、このプライド月間に上映・配信される作品がたくさんあるため(今しか観られない作品も多数)、まずは今月の情報をお伝えいたします。
※主人公が性的マイノリティ(クィア)である映画、あるいはジェンダーやセクシュアリティについてのマイノリティ性(クィアネス)を主要なテーマとして正面から描いた作品。映画やドラマにおいてはレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーだけでなく、より多様で深い、まだ名前もなかったりするような、クィアという表現が最もふさわしいようなジェンダーやセクシュアリティが描かれることがしばしばあります。そのため、PRIDE JAPANでは「LGBTQ映画」よりも「クィア映画」という呼び方を採用したいと思います(今に始まったことではなく、10年以上前からアジアンクィア映画祭、関西クィア映画祭など、クィアを冠する映画祭があり、コミュニティ内で認知されてきました)
上映中
アンモナイトの目覚め
ケイト・ウィンスレットとシアーシャ・ローナンという当代きっての演技派女優が初共演し、19世紀イギリスを舞台に、異なる境遇の2人の女性が化石を通じてひかれあう姿を描いたドラマ作品。女性は男性に従属する立場にあった19世紀当時、メアリーが発掘した化石は大英博物館に買い取られましたが、展示の際に発掘者の名前は全て別人の男性の名前に置き換えられたといいます。「だからこそ男性との関係を描く気になれなかった。彼女にふさわしい、敬意のある、平等な関係を与えたかったんだ。メアリーが同性と恋愛関係を持っていたかもしれないと示唆するのは、自然な流れのように感じられたんだ。そのうえで社会的にも地理的にも孤立し完全に心を閉ざしてきた女性が、人を愛し、愛されるために心を開き、無防備になることがどれだけ大変だったかを描きたかった」と、監督のフランシス・リーは語っています(あの名作『ゴッズ・オウン・カントリー』のフランシス・リーです!) 『燃ゆる女の恋』とともに、レズビアン映画の傑作と称されている話題作です。
<あらすじ>
1840年代、イギリス南西部の海沿いの町ライム・レジス。人間嫌いの古生物学者メアリー・アニングは、世間とのつながりを絶ち、ひとりこの町で暮らしている。かつて彼女の発掘した化石が大発見として世間をにぎわせ、大英博物館に展示されたが、女性であるメアリーの名はすぐに世の中から忘れ去られた。今は土産物用のアンモナイトを発掘し、細々と生計を立てている彼女は、ひょんなことから裕福な化石収集家の妻シャーロットを数週間預かることになる。美しく可憐で、何もかもが正反対のシャーロットにいら立ち、冷たく突き放すメアリー。しかし、自分とあまりにかけ離れたシャーロットに、メアリーは次第にひかれていく…。
アンモナイトの目覚め
原題:Ammonite
2020年/117分/R15+/イギリス/監督:フランシス・リー/出演:ケイト・ウィンスレット、シアーシャ・ローナンほか
全国の上映館の情報はこちら
配信中(オンライン)
ジェンダー革命
ジェンダー・アイデンティティを取り巻く疑問に答えるべく、ジャーナリストのケイティ・クリックが全米を巡り、第一線の科学者、医師、専門家、そしてたくさんの当事者の人々にインタビューし、ジェンダー問題における科学、社会、文化の役割を検証した、ナショナル・ジオグラフィック製作のドキュメンタリー番組。GLAADメディアアワードの最優秀ドキュメンタリー賞を受賞しています。インターセックスやトランスジェンダーのことを体系的に網羅し、観て頭にすっと入ってくるような、たいへん優れた教育的な番組です(全国の学校で上映すべき、と思いました)。当事者の苦しさや社会的課題をきちんと伝えつつ、それでも希望を持ち、未来を信じ、夢を語る若者たちがたくさん登場するところがとてもよいです。ケイティ・クリックの当事者に寄り添う姿勢と明るさに救われます。
ジェンダー革命
原題:Gender Revolution: A Journey with Katie Couric
2017年/アメリカ/92分/製作:ケイティ・クリック(ナショナル・ジオグラフィック)
Disney+にて配信中、AmazonPrimeでもレンタル視聴が可能です
6月13日まで配信(オンライン)
泣いたり笑ったり
美術商の裕福なトニと、漁師のカルロ。相容れなさそうな二人がまさかの婚約関係だとバレて、家族が大騒ぎに…というドタバタを描いたファミリードラマでありラブコメ映画でもある作品。熟年のパパ(グランパ)がカミングアウトするという『人生はビギナーズ』的な展開で、それを受け止めきれない子どもたちの葛藤(「保守的(コンサバ)」「ホモフォビア」といった言葉で片付けるには忍びない、切実なリアリティ)や心情の変に焦点が当てられているところが新しいです。まるで「寅さん」のような人情ドラマでもあり、恋多き、そして家族思いの陽気なイタリアの人々の善良さに救われる、泣かせる作品になっています。「イタリア映画祭2021」で6月13日までオンライン上映中です。
<あらすじ>
美術商を営む裕福なトニは、恒例の誕生日祝いで親族を海辺の別荘に呼び寄せる。しかし今回はいつもと違っていて、別荘の離れを労働者階級のファミリーに貸していた。そこには理由があり、実はそのファミリーの長である漁師のカルロと、3週間後に結婚式を挙げることになっていたのだ。それを知ったカルロの息子・サンドロは「理解できない」と激しく抵抗、同じく納得がいかないトニの娘・ペネロペは、サンドロに「一緒にこの結婚をダメにしましょうよ」と持ちかける。こうして子どもたちも巻き込んだ騒動が繰り広げられるのだが……。
泣いたり笑ったり
原題:Croce e delizia
2019年/イタリア/100分/監督:シモーネ・ゴダノ/出演:アレッサンドロ・ガスマン、ジャズミン・トリンカ、ファブリツィオ・べンティヴォッリョほか
5月17日〜7月16日 配信(オンライン)
十人十色の物語〜今年90歳になる館長と9人のドラァグクイーン〜
2017年からドラァグクイーンをフィーチャーした映画祭を開催してきた別府の小さな映画館、ブルーバード劇場。その館長である岡村照さんとドラァグクイーンの方たちの姿を追ったドキュメンタリー映画『十人十色の物語〜今年90歳になる館長と9人のドラァグクイーン〜』が、「THEATRE FOR ALL」で配信中です。岡村さんとクイーンさんの交流から劇場の魅力を描き出しつつ、みんなが生きやすい世の中について考えていくような作品になっているそうです。
十人十色の物語〜今年90歳になる館長と9人のドラァグクイーン〜
2021年/日本/87分/監督:もりたじり(森田真帆・田尻大樹 from 別府ブルーバード劇場)/出演:岡村照、ドリアン・ロロブリジーダ、ナナ・ヴィクトリア、虹子ロンドン、バブリーナ、パルプ、ブルボンヌ、ベビーヴァギー、ぽり美、レスペランザほか
※日本語字幕、英語字幕、英語字幕+英語音声
※性的マイノリティについて学ぶ無料ラーニングプログラムもあります
6月5日〜 上映
デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング
レズビアンであることをカミングアウトした香港の歌手、デニス・ホーの音楽活動の軌跡と、自由と民主主義を守ろうとする運動家としての活動を追うドキュメンタリー映画です。監督、脚本、プロデュースを務めたスー・ウィリアムズは、同作について「私が気づいたのは、デニスの人生が、そのまま香港の歴史に重なるということだ。政治的な浮き沈み、締付けを緩めようとしない中国共産党の動向が、その都度、反映されている。他の香港人と比べてデニスが際立つ点は、彼女いわく、10代の日々を過ごしたモントリオールの地で学び、吸収した民主主義の原則と、その価値観への揺るぎない信念だ。キャリアや資産を危険にさらし、逮捕され、スポンサーを失い、友人と思っていた人々が離れていく。そんな苦境を恐れ、言動を控える人々が多いなか、何百万人に上る香港市民の思いを伝えようと声を上げ、自由と民主主義のために戦う姿勢を公の場で表明する彼女の強さは、この固い信念があるからこそだ。『デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング』は、そんな彼女の物語である」と語っています。
デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング
原題:Denise Ho: Becoming the Song
2020年/83分/アメリカ/監督・脚本:スー・ウィリアムズ/出演:デニス・ホーほか
2021年6月5日からシアター・イメージフォーラムで公開
6月16日、27日 配信(オンライン)
最も危険な年
2016年、トランスジェンダーのトイレ利用を制限する法案が議論されていたワシントンでは、トランスジェンダーの子を持つ親たちが、自分たちの物語を語ることでトランスフォビアと闘おうとしていました。この映画はアメリカの家族を描いたドキュメンタリーです。
トランスジェンダーの権利を認めると、犯罪者が増えるかもしれない…?? そんな不確かな言説を、あなたは耳にしたことはありますか? トランスジェンダーが圧倒的少数派である社会の中では、知り合いにトランスジェンダーがいる人もまた少数派です。人々の無知が偏見や不安を増大させる現象は、アメリカだけでなく、日本でも起きつつあります。
最も危険な年
原題:Most Dangerous Year
2018年/アメリカ/90分/監督:Vlada Knowlton
6月16日(水)18:00-20:00、6月27日(日)13:00-15:00の2回に分けてオンライン上映会が行われます(詳細はこちら)
6月19日 上映
足立レインボー映画祭
東京都足立区では今年4月から「パートナーシップ、ファミリーシップ宣誓制度」が始まりました。「けれど、LGBTQって何? 自分の周りでは聞いたことがない、いない、という方もいるかもしれません。制度が始まったとしても本当の意味での理解促進はこれから始まります」ということで、地域の方たちに向けて、初のレインボー映画祭が開催されます。「足立区を住みたい街、住み続けたい街にするため、今回の映画祭がまちづくりの一助となると信じています」
上映作品は、『カランコエの花』『チョコレートドーナツ』『ラフィキ ふたりの夢』で、たくさんの方が観てきた人気作です。いずれもトークショー付き(シゲ先生など多彩なゲストが登場します)、入場無料(予約制)です。
足立レインボー映画祭
日時:2021年6月19日(土) 開場11:00〜
会場:東京芸術センター 天空劇場(東京都足立区千住1丁目4−1)
入場料無料(予約制)
6月19日〜 上映
息子のままで、女子になる
パンテーンCM「#PrideHair」起用や「AbemaTV」コメンテーターをはじめ、多くのメディアへ出演し、トランスジェンダーの新しいアイコンとして注目されるサリー楓さんに密着したドキュメンタリー映画です。ロサンゼルス・ダイバーシティ・フィルムフェスティバルでドキュメンタリー賞を受賞しています。
<あらすじ>
慶應義塾大学で建築を学び、大手建設会社に内定し、8歳からの夢だった建築家としての未来を歩み始めた楓。男性として入学し、女性として卒業し、社会に出ていくなかで、彼女は世間にある「トランスジェンダー」という既成概念に疑問を抱く。そして自らビューティ・コンテストに出場し、LGBTの就職支援活動や講演活動などを通し、これまでのステレオタイプとは違う、新しいリアルな「一個人」としてのトランスジェンダー女性像を打ち出そうとする。しかしそんななか、楓の心には、父親の期待に応えられなかった息子としてのセルフイメージが残っていた。新しい自分、本当の自分として世界に出た時、家族はそれをどう受け止めるのか……。
息子のままで、女子になる
2020年/日本/105分/監督:杉岡太樹/出演:サリー楓、スティーブン・ヘインズ、西村宏堂、はるな愛ほか
6月19日から渋谷ユーロスペースで上映、6月26日から名古屋シネマスコーレで上映
6月26日 上映
I Am Here~私たちは ともに生きている~
二丁目の「足湯cafe&barどん浴」(足立区の同性パートナーシップ証明制度第1号となった長村さと子さんのお店です)で、『I Am Here~私たちは ともに生きている~』の上映&トークイベントが開催されます。主催するのは、誰でも1人から加入できる労働組合「プレカリアートユニオン』(SOGIハラ・アウティングなどの問題について当事者から相談を受け、労働組合として使用者と団体交渉を行い、解決に導いた実績も。現在、LGBT労働相談キャンペーンに取り組んでいます)。監督の浅沼智也さん、「新宿ダイアログ」の瞬さんらが出演します。
トランスジェンダー当事者の日常と職場
映画『I Am Here~私たちは ともに生きている~』上映とトーク
日時:2021年6月26日(土)13時30分〜16時
会場:足湯cafe&barどん浴
参加費:1200円(1ドリンクの注文をお願いします。ドリンク代別)
定員:15人
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