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レポート:ピンクドット沖縄2021
12月11日、ピンクドット沖縄が琉球新報ホールで開催されました。カミングアウト映画上映やライブ、LGBTQのトークパネルなどが行なわれたほか、沖縄県知事や那覇市長、浦添市長からのご挨拶もありました。レポートをお届けします。
2021年12月11日(土)、ピンクドット沖縄2021が琉球新報ホールで開催されました。昨年はコロナ禍でオンライン開催となっていましたが、今年は2年ぶりにリアル開催。密になったりしゃべったりを避けつつ、マスクを着用してコンサートホールでステージイベントを楽しむスタイルでした。入り口で検温と手指消毒も。感染対策をとりながらの開催でした。
これまでも度々お伝えしてきたので繰り返しになりますが、ピンクドット沖縄は、デモができないシンガポールの「Pink Dot」という公園に集まるかたちでのLGBTQイベント(シンガポールは別名Red dotと言いますが、同性愛者のシンボルであるピンクの洋服を身に着けて集まり、集合写真を撮るとPinkのDotになるということで、この名がついています)にヒントを得て、9年前に元東京プライド代表で沖縄出身の砂川秀樹さんが始めたイベントです。沖縄は世間の狭さゆえに当事者がカミングアウトすることが難しく、まずはパレードではない別のかたちでプライドイベントをしようということで「ピンクドット沖縄」が誕生したのでした。2016年には那覇市の同性パートナーシップ証明制度第1号のゲイカップルが結婚式を挙げ、MAXのLINAさんや中島美嘉さんらが祝福するという、素晴らしいイベントになりました。
2017年からは、砂川さんが仕事で東京に行ってしまったのですが、パームロイヤルNAHAとカフーリゾートという2つのホテルのアライの方たちが中心になって主催するようになりました(全国的に見ても、アライが主催しているのは沖縄だけです)。2017年はMAXのみなさんによるライブが披露され、山咲トオルさんやブルボンヌさん、宮城姉妹、沖縄のドラァグクイーンや当事者の方たちなど、大勢が出演しました。2018年、2019年も同様の盛り上がりを見せたのですが、昨年はコロナ禍によりオンライン開催を余儀なくされました。
今年はおそらく、主催者の方たちも開催をどうするか、10月頃まで悩んでいたと思うのですが、11月下旬に2年ぶりにリアル開催する(オンライン配信も同時に行なう)ことが発表されました。
そのような、急遽開催のイベントだったにもかかわらず、たいへん充実した、素晴らしいイベントになりました。
12月11日(土)12時過ぎ、会場の琉球新報ホールには、ピンクの服を着たLGBTQ+Allyの方たちが集まってきました。13時、狩俣倫太郎さんの司会でイベントがスタート。最初に高倉直久代表理事(パームロイヤルNAHA)がご挨拶し、3月に沖縄県が都道府県として初めて「性の多様性尊重宣言」を発出したこと、各メディアが支援してくれていること、一方で、世界では同性婚の承認が進んでいるのに日本はまだであること(今年の札幌地裁の判決も支持し、同性婚実現を応援していること)、誰もが自分らしく生きられる沖縄県に、といったお話をされました。
それから、沖縄を舞台にしたドキュメンタリー映画『沖縄カミングアウト物語~かつきママのハグ×2珍道中!』が上映されました。那覇市出身で、「九州男」という二丁目随一のゲイバーのマスターをしているかつきさんが帰省し、カミングアウトしたときのことを振り返りながら家族や友人と語り合う映画で、たいへん感動的でした(かつきさんのお兄さんが、「九州男」でカミングアウトを受けたあと、一緒に靖国通りを歩きながら、「ずっと苦しんでたのに、気づいてあげられなくてごめんな」と言って号泣したというエピソードのところで泣いていた方、とても多かったです)。上映後に監督とかつきさんのトークセッションが行なわれました。なんと、かつきさんご両親も会場にいらしていました。かつきさんは「この映画のために生まれてきたと思う」と語り、松岡弘明監督は、学生時代にお母様が亡くなったそうですが、カミングアウトしないままだったことをずっと後悔していて、かつきさんのカミングアウトの話を聞いて「もし自分がこの話を聞いてたら、母にカミングアウトできたかもしれない」と感銘を受け、この映画を制作したと語りました。12/24からU-NEXTで配信されることになったそうですので、まだご覧になっていない方はぜひ。
第一部の最後に、毎年来てくださっている浦添市の松本市長がご挨拶し、紆余曲折あったけれども、性の多様性条例の制定にこぎつけたと報告し、「時代は必ずその方向に動いていく」「誰もが幸福を追求する権利がある。性の多様性に関することをみんなで応援し、支えていこう」と語りました。
休憩をはさんで第二部では、最初に玉城デニー沖縄県知事がご挨拶し(これまで、祝辞が代読されたことはありましたが、知事がご挨拶したのは初めてではないでしょうか)、ピンクドット沖縄の「熱意と実行力に敬意を表する」と称えながら、「LGBTQの権利は人権であり、すべての人の命をたいせつにし、すべての子どもたちが夢や希望を持って生きられるよう」県としても取り組んでいくと語りました(素晴らしいですね)。続いて、城間幹子那覇市長がご挨拶。那覇市の同性パートナーシップ証明の交付が42組に上ったことを報告し、那覇市がLGBTQのことを人権問題ととらえ、「すべての人が生きやすい社会」「理解・共感しあい、安心して暮らせる社会」を目指してきたこと、今年市政100周年を迎え、差別や偏見をなくし、よりいっそうレインボーの輪が大きく広がるよう、取り組んでいくと語りました(こちらも素晴らしいです)
それから、ピンクドットフィリピンの代表の方、ピンクドット香港、東ちづるさん、ブルボンヌさん、ドリアンさんの応援メッセージが紹介されました。
沖縄県出身のアーティスト・下地正晃さん(navy&ivory)のライブ。『沖縄カミングアウト物語』の主題歌として書き下ろした「いちばん悲しくて、いちばん嬉しい日」や、同性婚をテーマにした「PARTNER」などを、思いを込めて歌ってくれました。下地さんは九州レインボープライドには毎年出演していますが、地元・沖縄のプライドイベントに出演するのは初めてで、そういう意味もあって、最後に、亡くなった宮古島のおばぁに捧げる「向日葵」という歌を披露しました。
それから、ジェンダー法に詳しい矢野恵美琉球大法科大学院教授、地元の団体「てぃーだあみ」の竹葉梓さん、一般社団法人ちむぐみのまーちゃん代表が登壇し、「性のグラデーション」をテーマにパネルディスカッションが行なわれました。LGBTQの基礎知識の最新にして最終形態的な説明から始まり、LGBTQサポート世論が最も強い都道府県が沖縄県であるという調査結果についての考察など、多岐にわたるお話が展開され、充実したパネルとなりました。特に重要性の高い課題として学校教育のことが挙げられ、個別に取り組んでいる先生方もいるが、知識を得られるようなシステムが作られることが大事だと指摘されました。竹葉さんが「LGBTQのことだけでなくいろんな多様性があるが、そうした種々の多様性すべてが守られている社会というものを、誰も経験していない。社会の成員には、知識をアップデートしていく努力が求められるが、それがインクルーシブな社会の実現のためのコストである」といったことをおっしゃっていて、また、今回のピンクドットの申し込みフォームが"本名を書かせる仕様"になっていたことの問題点を指摘したりもしていて、感心させられました(これからLGBTQ研修をやろうと考えている沖縄の企業・団体の皆様は、竹葉さんに講師をお願いしたほうがよいと思います)
「結婚の自由をすべての人に」の寺原弁護士からの、訴訟のこれまでの動きをまとめた動画も上映されました。
最後に、沖縄出身のブロードウェイ・ミュージカル・スター、高良結香さんによるライブが行なわれました。新曲を披露してくれたり、ヒールを脱いでダンスしたり、客席にアピールしたり、大切な友人がゲイだという話をしてくれたり、ものすごくこのステージに思いを込めていること、めいっぱいサービスしてくれたことが伝わってきて、拍手モノでした。
本当の最後に、カフーリゾートなどのホテルを経営するKPG HOTEL& RESORTの田中社長が「来年は10回記念。大成功にしたい」と意気込みを述べ、集合写真を撮って、閉幕となりました。
今年も多くの企業が協賛し(スタッフTシャツや、ステージに飾られていたお花も、地元の企業の協賛だそうです)、また、県や那覇市、沖縄観光コンベンションビューローなどが後援していました。
今回はプライドハウス東京が応援に来ていて、ブース出展していたほか、ピンクドット終了後には、地元のLGBTQ団体が集まれる「ゆんたく会」という交流会を開催していました。コロナ禍でずっと会えていなくて、こうして集まるのがひさしぶりだったようで、みなさん、とても生き生きとお話していました。そのなかに、沖縄で大学生が主催する「にじゆい」という当事者交流会・居場所作りの団体の方もいらしていて、先日の岡山のパレードの後の集会で「ぜひ沖縄でパレードをやりたい」と話していたのですが、パームロイヤルの高倉さんも来られていたので、お二人でお話をしていたようで、会の最後に「来年、那覇市初のパレードをやります」と発表されました(拍手が起こりました)
というわけで、来年はピンクドット沖縄が10回目という節目を迎えますし、(コロナも落ち着いて)ピンクドット+那覇市初のパレードが開催されれば、大いに盛り上がることでしょう。内地からも大勢沖縄に行くでしょうし、またJALさんがLGBTQチャーター便を飛ばしてくれたり、いろんな「素敵」が生まれるといいな、と期待します。
(文・写真:後藤純一)
※バナー画像のみ、ピンクドット沖縄公式より
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