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レポート:ももたろう岡山虹の祭典
11月28日(日)、岡山市で中国地方初となるプライドイベント「ももたろう岡山虹の祭典」が開催されました。DJ&ドラァグクイーンの華やかなフロートとともに300名余りが青空の下、晴れやかに行進しました。
11月28日(日)、「晴れの国」岡山で、中国地方初となるプライドイベント「ももたろう岡山虹の祭典(愛称:ももにじ)」が開催されました。DJ&ドラァグクイーンの華やかなフロートとともに300名余りが青空の下、楽しく、晴れやかに行進しました。地元のLGBTQコミュニティのみなさん、アライのみなさんの、岡山を良い街にしようという思いが表れた、とても良いパレードでした。レポートをお届けします。(写真・文:後藤純一)
8色の虹をデザインした「虹トラ岡山」
ももにじは中国地方初となるプライドイベントで、それだけでも十分、意義があると言えますが、これまでのどのイベントとも異なるのは、「あなたはひとりじゃない」と書かれたレインボーカラーのトラック「虹トラ岡山」が全国を走ります、という企画が事前に(9月1日に)発表されたことです。これは、地元の岡田商運という運送会社が、アライ企業としてももにじの趣旨に賛同し、トラックをレインボーカラーにラッピングするコラボレーションに快く協力してくれたものです。車体を彩る8色の虹は、岡山出身の世界的な書道家、Maaya Wakasugiさんが書いた「虹」の字をもとに、ギルバート・ベイカーが最初に作った8色のレインボーカラーでデザインされました。トラックの両サイドにそれぞれ「ひとりじゃないよ」「We are all with you」というメッセージを大きな文字で載せていて、向こう5年間全国を走るこのトラックを見かけた当事者の方たちが少しでも励まされるようにという気持ちが込められています。本当に素晴らしい取組みでした。
「岡山のパレードに虹トラ登場、ギルバート・ベイカー財団からメッセージも」というニュースでお伝えしていたように、パレードの当日には「虹トラ岡山」が登場し、トラックの前で記念撮影をする方がたくさんいらっしゃいました。また、Maayaさんの思いが通じたのか、ギルバート・ベイカー財団からの応援メッセージも寄せられました(当日配布のガイドブックに掲載されました)
ちなみにこのガイドブック、16ページのなかなか立派な冊子で、ギルバート・ベイカー財団、岡田商運の社長さん、岡山市長、倉敷市長、総社市長、GID学会理事長の中塚幹也岡山大教授、中西圭三さん、有森裕子さんらの応援メッセージが掲載されていたほか、岡山市のゲイバーやミックスバー全店(10軒)の広告が掲載されていた(協賛していた)のも素晴らしかったです(パレードを歩いていた「翔」というバーのマスターさんから全店だと教えていただきました)。岡山だけでなく、高松や松山のお店も協賛しています。
プレイベント
パレードの前夜、11月27日夜には、岡山のゲイバー「AX」でプレイベントが開催されました。岡山出身の浅沼さんが監督したトランスジェンダーのドキュメンタリー映画『I Am Here ー私たちはともに生きているー』が上映され、浅沼監督、前東京レインボープライド共同代表で岡山出身の山縣さん、プラウド岡山の鈴木さんによるトークショーも行なわれました。
『I Am Here ー私たちはともに生きているー』という映画は、これまでトランスジェンダーを描く映画はいくつかあったものの、当事者が「これは自分だ」と思えるような描写ではなかったため、当事者によるトランスジェンダーのリアルな姿を伝える映画を作りたいということで、トランス男性の浅沼さんが、映画関係者の方にアドバイスをいただきながら製作した作品で、当事者によるトランスジェンダーのドキュメンタリーとしては21世紀初(90年代に1本あったそうです)、そして東京ドキュメンタリー映画祭2020・短編部門でグランプリを受賞した作品です。世間に多大なインパクトを与えた『金八先生』の鶴本直(上戸彩さんが演じたトランス男子)のモデルとなった「レジェンド」虎井まさ衛さん、日本で初めてトランスジェンダーとして大学の講師となった研究者・三橋順子さん、日本性同一性障害・性別違和と共に⽣きる⼈々の会(gid.jp)代表の山本蘭さん、日本で初めてトランスジェンダーのホームページを開設したアクティヴィストの畑野とまとさん、東京レインボープライド共同代表の杉山文野さん、大阪の「ジャック&ベティ」のママ、大阪のコミュニティセンター「dista」でHIV予防啓発に携わっている宮田りりぃさんなど、本当に多彩な方たちが出演していて、現行法の問題点、就職や職場での難しさ、日常生活で直面する困難、厳しい現実を浮き彫りにしつつも、とても生き生きとしたトランスジェンダーの方たちの姿に魅了され、その豊かさや、コミュニティ感、笑い、感動もあり、観てよかったと思える作品です。
トークショーでは、岡山のLGBTQをめぐる状況、同性パートナーシップ証明制度の広がりのことなど、様々話し合われました。会場からの「浅沼監督は今後、また映画を撮ることを考えていますか?」との質問に対し、浅沼さんが、同性婚をテーマにした作品と、LGBTQの老後をテーマにした作品を作りたいと答えていらっしゃいました(期待しましょう)
NHKや民放2局も取材に来ていて、スゴいなぁと思いました。
パレード!
11月28日、パレード当日です。岡山は「晴れの国」だそうですが、この日もすっきりと晴れ渡った青天の下、旭川をはさんで対岸に紅葉の後楽園を望む石山公園が、レインボーフラッグや「ももたろう岡山虹の祭典」の桃をあしらったフラッグやTシャツ、パレードのフロート、そして「虹トラ岡山」でカラフルなパレード仕様になりました。
正午を過ぎると、パレードの参加者が三々五々集まってきて、受付をはじめました。
13時からオープニングセレモニーが行なわれました。
共同代表の市川さんと浅沼さんは、2019年、四国初の丸亀のパレードに参加し、岡山でもパレードを開催したいという思いを強くしたと語り、また、たくさんの参加者のみなさんへの感謝の言葉を語りました。
岡山県で初めて同性パートナーシップ証明制度を実現した総社市の片岡市長は、浅沼さんが来てくれてすぐに条例を作りました、12月からはファミリーシップ制度も始める、中国初、日本で9番目です、住んでる地域で制度が違うのではなく、県全体へ、国へと広げていきましょうと熱く語りました。
それから、「虹トラ岡山」を実現させた岡田商運の岡田社長は、作って本当によかった、きれいなトラックですねとよく言われます、こういうイベントで活躍したいのでまたお声かけくださいと語りました。
前岡山市議会議長の浦上氏は、このようなパレードが開催されてうれしい、ダイバーシティ岡山シティ目指して頑張りましょうとスピーチしました。
また、倉敷市長からは祝電が寄せられたほか、たくさんの議員の方々も(時間の関係でスピーチはなかったのですが)ステージに上がりました。
そして、フロートに乗ってパレードを盛り上げる4人のドラァグクイーンの方々とDJさんの紹介があって、最後に「PINKNOTE petit」のみなさんが公式テーマソング「We are all with you ~ひとりじゃないよ~」のライブを披露しました(撮影NGとのことで、「PINKNOTE petit」のみなさんの画像は掲載しておりません)
13時半から整列が始まり、14時、DJフロートのクラブミュージック(ゲイナイトの定番のアンセム)に乗って、中国地方初のプライドパレードが晴れやかにスタートしました。定員MAXの300名のみなさんが、思い思いの格好をしたり、プラカードを掲げたりしながら、意気揚々と桃太郎大通りへと向かって行きました。
一行は岡山市の中心的なアーケードの商店街である表町商店街に入り(クイーンさんもフロートを降りて、ランウェイのように颯爽と歩いていました)、路面電車も走る城下筋を北上し、再び桃太郎大通りに出て、西川緑道公園のところでUターンし、石山公園に、という3.5kmのコースを楽しく、晴れやかに行進しました。商店街の方々や、岡電の路面電車やバスに乗った方々も手を振って応援してくれたり、また、沿道で待っていてパレードを応援する当事者の方たちもいました。
先頭の方には、「結婚の自由をすべての人に」訴訟の原告の川田中家のお二人や、坂田さん&テレサさんもいらしたほか、虹色ダイバーシティの村木さん、松中権さんをはじめとする金沢レインボープライドのみなさん、青森レインボーパレードの代表の方、レインボーフェスタ和歌山のQちゃん(手話通訳でも活躍)、自治体にパートナーシップ制度を求める会や同性婚をめぐる様々な活動をされている鈴木賢明治大教授なども参加していました。岡山経済新聞の編集長さんなど、地元のアライの方たちもたくさん参加していました。
SNSには「まさか故郷の岡山でパレードが開催される日が来るなんて…」という感慨や(わざわざ帰省して参加された方もいらっしゃいました)、「勇気を出して初めてパレードに参加しました」「ひとりじゃないって思えました」「スタッフの方がとても丁寧に努力されてきたことがわかる、細部まで行き届いたとてもよいイベントでした」といった感謝の言葉がたくさん綴られています。
歩いている最中に山縣さんにお聞きしましたが、今回、表町商店街を歩くことができたのは商店会にご挨拶に行ったり、一軒一軒を訪ねてポスターを配るなどの地道な努力があって実現したそうです(頭が下がります)
意外と寒い日ではありましたが、そんなことも気にならなくなるくらい岡山の街の温かさに励まされるような、とても良いパレードでした。
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