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特集:11月20日は国際トランスジェンダー追悼の日
毎年6月はプライド月間、5月17日はIDAHOBIT(国際反ホモフォビア・バイフォビア・トランスフォビアの日)、10月11日はカミングアウトデーとして認知されてきていると思われますが、11月20日の国際トランスジェンダー追悼の日(およびトランスジェンダー認知週間)のことは、ご存じない方が多いのではないでしょうか。海外では毎年何百人ものトランスジェンダーの方々がヘイトクライム(憎悪犯罪)の犠牲になっていますし、日本でも近年、急速にトランスジェンダーに対する風当たりが強くなり、インターネット上での誹謗中傷が激しさを増しており、自ら命を絶つ方もあとをたたないなか、この国際トランスジェンダー追悼の日の重要性がますます高まっていると言えます。そこで今回、国際トランスジェンダー追悼の日とはどういう日なのかということや、日本初のトランスマーチをはじめ11月20日に開催される様々なイベントをご紹介する特集をお届けします。一人でも多くの方がアライの輪に参加してくださることを願います。
国際トランスジェンダー追悼の日とは
11月20日の国際トランスジェンダー追悼の日(Transgender Day of Remembrance)は、ヘイトクライムや自死など、望まぬかたちで亡くなってしまったトランスジェンダーの方々を追悼するとともに、社会に対してトランスジェンダーの尊厳と権利について考えることを呼びかける国際的な記念日です。
1998年11月28日、黒人のトランス女性であるリタ・へスターがマサチューセッツ州ボストンの自宅で惨殺されているところを発見されました。この殺人事件は今も未解決のままです(ストーンウォールの英雄であるマーシャ・P・ジョンソンもそうですが、多くのトランスジェンダー殺害事件は、警察が捜査を本気で行なわず、真相が究明されないままになっています)。彼女の死は、ワイオミング州で22歳のゲイの学生、マシュー・シェパードが殺害されてから数週間後のことでした。しかし、マシュー・シェパード事件がゲイに対するヘイトクライムとして全国的な議論を呼んだ(のちに「マシュー・シェパード法」と呼ばれるヘイトクライム法=ヘイトクライムの定義をSOGIにも広げ、同性愛嫌悪やトランスフォビアに起因する殺人に重罪を科すものへと結実した)のと対照的に、リタ・へスターのことはパブリックに語られることはほとんどありませんでした。人々やメディアが彼女の死に対してあまりに無関心であったため、12月4日、サンフランシスコでキャンドルを灯す追悼イベントが開かれました。翌年11月20日、トランス女性活動家Gwendolyn Ann Smithが、ヘイトクライムの犠牲となったトランスジェンダーを追悼する最初の国際的なイベントを開催、国際トランスジェンダー追悼の日へとつながりました。
また、世界中のトランスジェンダーの犠牲について語るWeb上のプロジェクト「Remembering Our Dead」が始まりました。2008〜2012年の4年間に世界55ヵ国で少なくとも800名のトランスジェンダーがヘイトクライムによって殺害されたことが明らかになりました。今でも毎年何百人もの方々がトランスフォビアの犠牲になっています。
海外では、追悼イベントだけでなく、11月13日~11月19日をトランスジェンダー認知週間(Transgender Awareness Week)と称し、人々にトランスジェンダーの抱える困難や課題について知っていただく啓発週間としています。
(なお、トランスジェンダーの追悼だけでなく、その存在を祝福する日もあってよいのではないかということで、2009年から3月31日をInternational Transgender Day of Visibilityとするようになりました)
出展:
TRANS AWARENESS WEEK(GLAAD)
https://www.glaad.org/transweek
Who was Rita Hester?(Open Democracy)
https://www.opendemocracy.net/en/5050/who-was-rita-hester/
国際トランスジェンダー追悼の日関連の催し
先日、11月20日に日本初のトランスマーチが新宿で開催というニュースをお伝えしていましたが、この日はプライドハウス東京レガシーでも関連の催しが行なわれることになりました。マーチを歩くのはちょっと気が引けるかも…という方も、様々なかたちでトランスジェンダーのリアルに触れたり、支援につながる充実した過ごし方ができる日になりそうです。
以下、催しをご紹介します。
まず、11月16日から30日まで、プライドハウス東京レガシーで、トランス男性の若林佑真さんの企画によるフォトエッセイ「Complex」が展示されます。これはトランス男性10名のコンプレックスに焦点を当てたフォトエッセイで、仕事も住む場所も性的指向も全く違う10名の出演モデルたちがそれぞれのコンプレックスを写真と文章で表現した一冊です。当事者の「生の声」をお届けするフォトエッセイ、この機会にご覧ください。
展覧会 若林佑真 企画 フォトエッセイ「Complex」
会期:11月16日(火)〜11月30日(火)
会場:プライドハウス東京レガシー(新宿区新宿1-2-9 JF新宿御苑ビル2階)
開館時間:13:00〜19:00 (水・木は休み)
無料(※申込み不要)
11月20日(土)の国際トランスジェンダー追悼の日当日は、午前10時から、プライドハウス東京レガシーで、「トランスジェンダーの権利と尊厳」と題したトークイベントが行なわれます。『I Am Here ー私たちはともに生きているー』の浅沼智也さんが進行をつとめ、畑野とまとさんと上記の若林佑真さんがパネラーとして語ります。手話通訳も入ります。
11月20日(土)トークイベント
「トランスジェンダーの権利と尊厳」
~Transgender Day of Remembrance in Japan~
日時:11月20日(土)10:00〜11:30(開場9:45)
会場:プライドハウス東京レガシー(新宿区新宿1-2-9 JF新宿御苑ビル2階)
無料
定員:15名(要事前申込み)
※参加申込人数が定員に達した場合、申込み受付を終了とさせていただきます。
ゲスト:畑野とまと、若林佑真
進行:浅沼智也
手話通訳:らーちゃん
申込み:こちらの応募フォームよりお申込みください
そして同日13時半からは日本初のトランスマーチが新宿公園で開催(コースも発表されました)、15時からは二丁目でアフターパーティが開催されます(会場は、日本に来たばかりの外国人のLGBTQを支援する「Not Alone Cafe」に会場を提供するなど、様々なコミュニティイベントに協力してくださっている「DRAGON MEN」です)
Tokyo Trans March 2021
日時:11月20日(土)13:30集合 14:00出発
集合場所:新宿中央公園(水の広場)
コース:新宿中央公園(水の広場)〜成子天神下交差点〜新宿大ガード〜新宿マルイメン〜新宿公園
主催:TGJP/トランスマーチ実行委員会
後援:プレカリアートユニオン
Tokyo Trans March After Party
日時:11月20日(土)15:00〜16:30
会場:DRAGON MEN
トランスジェンダーのことをもっとよく理解するためのツール
トランスジェンダーのリアリティに触れたり、もっとよく理解できるようになるためのツールがいろいろとリリースされています。まとめてご紹介します。
情報サイト「はじめてのトランスジェンダー」
昨今トランスジェンダーについての様々な情報があふれています。このサイトは、普段トランスジェンダーを身近に感じていない人でも、情報の交通整理ができるように作られました。
トランスジェンダーに対するよくある質問(FAQ)では、聞きたいけどなかなか聞けないセンシティブな事柄や、世間の人たちが抱きがちな偏見・誤解を払拭するような事柄にも触れられています。
また、SNSに流れている悪意のある誤情報についてのファクトチェックなども盛り込まれています。
ぜひご覧ください。
はじめてのトランスジェンダー
https://trans101.jp/
冊子『トランスジェンダーのリアル』
様々なトランスジェンダーのリアルを伝える無料の冊子です。トランスジェンダー差別に反対する人が友人や知人に気軽に手渡すことのできるような一冊。当事者5人のこれまでの人生を振り返った手記と写真、職場・治療・学校といったテーマについての様々な当事者からのコメントやコラム、トイレ利用についての座談会、家族の手記など、様々なトランスジェンダーの方たちの姿や声が掲載されていて、当事者が日々感じているリアリティを生き生きと感じとることができます。
プライドハウス東京レガシーや全国の男女共同参画センターなどに置かれています。
トランスジェンダーのリアルを知る映画
特集:11月に観たいLGBTQ映画・ドラマでご紹介しているように、今月は映画『リトル・ガール』の公開、ドラマ『ファースト・デイ わたしはハナ!』の再放送、日本における今世紀初のトランスジェンダー当事者ドキュメンタリー映画『I Am Here ー私たちはともに生きているー』の無料配信&トークイベントなどがあり、トランスジェンダーのリアリティに触れることができるまたとない機会になっています。ぜひご覧ください。
トランスジェンダーの方とお話するなかで理解を深められる機会
弊社でも度々、研修やセミナーでトランスジェンダーの方をお招きしてお話していただいたり、質問をしていただける機会を設けてきましたが、定期的にコミュニティ活動としてトランスジェンダーの方とお話したり理解を深められる場がプライドハウス東京レガシーで設けられています。毎月第1&第3火曜日に開かれている「トランスデー」がそれで、多様なトランスジェンダーの人たちの「出会う、知る、つながる」場として実施されていますが、対象は性的マイノリティの方だけでなく、多様な性について「知りたい・学びたい」と思っているすべての方に開かれています。アライの方も、ぜひ気軽にお越しください。
トランスデー
日程:毎月第1&第3火曜日
会場:プライドハウス東京レガシー
(文・後藤純一)
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