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レポート:金沢プライドウィーク2021
10月9日・10日に開催された金沢プライドウィーク(後半)のレポートをお届けします。北陸初とは思えない、実に充実したプライドイベントでした。拍手!
2021年10月10日(日)、北陸初のレインボーパレードとなる「金沢プライドパレード」が石川県金沢市で開催され、晴天の下、約300人の参加者が2台のDJフロートの音楽に乗って市内中心部を楽しく、熱く、カラフルに行進しました。前日の充実したイベントとともに、パレードのレポートをお届けします。
◆金沢プライドウィーク(前半)
金沢プライドパレードは当初、9月26日に開催される予定でしたが、石川県のまん延防止等重点措置が9月末まで延期されたことを受けて、10月10日に延期されました。金沢プライドウィークは当初予定通りの前半(9月23日〜25日)と後半(10月9日〜10日)に分かれるかたちとなりました。こちらでお伝えしたように、金沢プライドウィーク(前半)は9月23日にスタートし、LGBTQ映画上映会や、企業向けの勉強会、オードリー・タンさんがオンライン出演した多様性フォーラム、「にじのま」という交流会などが開催されました。
映画上映会では『カランコエの花』や『片袖の魚』、そしてNHKで放送されたドラマ『ファースト・デイ』といった名作が上映されました。『片袖の魚』のトークショーでは、金沢の出身である東海林監督がゲスト出演するという素敵な時間もありました(というか、現在も全国で上映されている『片袖の魚』をこのイベントのために無料で公開し、かつ金沢に駆けつけてくれたのは東海林監督の心意気以外のなにものでもありません。東海林さんはパレードにも参加していました)
こちらの記事によると、25日にハイアット金沢で開催された「にじのまカフェ特別版」では、ブルボンヌさんと、金沢が誇るドラァグクイーン・阿武虎(アブドラ)さんによるゴージャスなトークショーが行なわれました。阿武虎さんは「20年前、片町を女装して歩いていたら、車からペットボトルを投げられたり、暴言を吐かれたりしました。追いかけて投げ返してましたけど」と、地方都市ならではのリアリティあふれるエピソードを披露。しかし、20年前とは違って、性の多様性に寛容な人が増えてきたとも言い、「人生短いんだから、着たいもの着て、やりたいことをやりましょう」と呼びかけると、会場は拍手で満たされたそうです。
また、小松空港では、JALの方々がレインボーカラーのグッズやパレードのフライヤーを配布するという素敵な取組みが実施されました。沖縄へのLGBT+Allyチャーター便を実現させた立役者、日本航空アシスタントマネージャーの東原さんが自ら待合所の方に配っているました。
メディアでもたくさん、好意的に取り上げられ、プライドウィーク前半は大成功だった模様です。
◆金沢プライドウィーク(後半)
そして、金沢プライドウィークの後半が10月9日にスタートしました。
ここからは、ゴトウが体験したことをレポートします。
(なお、石川県の新規感染者数は10月8日が1名、9日が2名、10日が2名で、コロナの状況はとても落ち着いていました)
10月8日(金)の夕方にJALで金沢入りしました(JALを応援する意味も込めて。ちなみにJALは格安でPCR検査を受けられるサービスを実施していて、私も利用しました)。小松空港から金沢までのバスは海沿いを走るので、景色もきれいでよかったです。
パレード会場に近い東急ステイにチェックイン(最上階のお部屋で、金沢城公園が見えるのが素敵でした)。縁あって、今年3月に北陸3県で郵送HIV検査キットの配布を行なったぷれいす東京の生島さんが金沢のゲイバーに報告書を届けるというので、ゲイバー巡りに同行させていただきました(全店が協力してくれたそう。素晴らしいです)。松中権さんと、後述の奥村さんも一緒でした。阿武虎さんのお店『パンテーラ』をはじめ10軒くらいのゲイバーやミックスバーがあり(地方都市にしては多いほうです)、予想よりもはるかにオープンでフレンドリーな雰囲気でした。またゆっくりお伺いしたいと思いました(なお、私たちはお店の端の方にいて、地元のお客様たちとはソーシャルディスタンスを取っていました)
9日(土)には、3つのイベントが開催されました。
13時からハイアットセントリック金沢で「LGBTQ+と教育ダイアログ」という、地域のPTAの方たちに向けたLGBTQへの理解や共感を深めていただくためのイベントが開催(市議会議員さんなども来られていました)。石川県助産師会の有志の方たちによる「にじはぐ石川」という支援団体の方が基礎講座を行なっていたのですが、ジェンダー規範のこと、家族の多様性、そして当事者の声なども伝えつつ、カミングアウトがどれだけハードルが高いかとか、親の育て方は関係ないとか、アライになるためにどういうことをしたらよいか、など多岐にわたるお話を「届く言葉」で語っていらして、感銘を受けました。その後、「遠慮なく何でも聞いてください(あとで失敗するよりは、いま言っちゃってください)」と言って、各テーブルに当事者の方が座り(こちらのニュースにも取り上げられていた富山のカップルも)、グループセッションが行なわれました。みなさん熱心に話し合っていらっしゃいました。
15時からは、ハイアットハウス3階「Hレストラン&Hバー」を会場に「にじのまカフェ特別版」が開催されました(後ろが屋外の芝生エリアへと続くテラスになっていて、半分オープンエアでした。換気もバッチリです)。小島慶子さんがMCをつとめ、僧侶・メイクアップアーティストの西村宏堂さん、五輪開会式のMISIAさんのドレスを手がけたことで有名なデザイナーのTOMO KOIZUMIさん(お二人ともおそらくプライドイベント初登場です)、そして八方不美人のみなさんが出演しました。最初に宏堂さんがスライドを使ってお話くださったのですが、クレヨンしんちゃんとかワンピースとか子ども時代に観たアニメの中にゲイをバカにしたようなキャラクターが時々出てきたというお話や、仲良くしていた子の実家のお寺によく遊びに行ってたのにゲイだとわかったら態度が豹変し、怒りがこみ上げたものの、そのあと冷静に、なぜそのように差別するのだろう…と考えた、といった、自身の経験に基づく柔和な語り口のお話で、思わず引き込まれました。その宏堂さんの衣装も手がけ、同い年でもあるというTOMO KOIZUMIさんは、こうして私たちがカミングアウトできるのも今まで環境を整えてくれた人のおかげだし、ただそこに乗っかるのではなく、少しでもLGBTQコミュニティの役に立つことをしていきたい、と語りました(素晴らしい)。その後、八方不美人のエスムラルダさん、ちあきホイみさんも登場し(ドリアンさんはお仕事の都合で来られなかったようです)、会場に来られていた阿武虎さんや肉襦袢ゲブ美さん(ゲイシーンで絶大な人気を誇るドラァグクイーン。現在は富山にお住まいです)も交えて大撮影大会となり、お客さんがゲストの方たちを文字通り取り囲んでいました。会場の奥のほうでは「OUT IN JAPN」の写真展も行なわれていました。
19時からは、金沢随一の繁華街である片町にあるパーティスペース「JIM HALL spazio」(松中さんの親戚の方のお店で、趣旨に賛同して会場提供してくださったそう)を会場に「八方不美人と学ぶ 〜地方とLGBTQ+とHIVの最新事情〜」が開催されました。最初に、ぷれいす東京が今年3月に北陸3県で実施した郵送HIV検査の結果を生島さんが報告。北陸3県のゲイ・バイセクシュアル男性の方たちは既婚者の方が多い(東京が数%であるのに対して16〜17%)ということや、地元ではなく東京や大阪に行って検査を受ける人が多いということ、今回初めて検査を受けた方も多かったというお話が、たいへん興味深かったです。それから、エスムラルダさんやちあきホイみさん、地元のLGBTQと家族の会である「ひだまりの会」の代表・奥村兼之助さんなども加わってのトーク、また、八方不美人のトーク&ライブも披露され、あたたかくて楽しいイベントとなりました。
◆金沢プライドパレード
10月10日(日)、雲ひとつないパレード日和…最高気温29.7度という、もはや夏じゃないかという暑さでした。金沢のみなさんの日頃の行ないが良すぎて、神様がサービスしすぎてくださったのでしょうね…。
日焼け止めを塗りたくり、キャップをかぶり、万全な装備で会場に向かいます。
11時からは石川県政記念しいのき迎賓館1階の「カフェ&ブラッスリー ポール・ボキューズ」という瀟洒なカフェ&レストランで「プライドブランチ」に参加させていただきました。みんなでプライドパレードを祝いましょうという出発前のオープニングイベントで、フロートに乗る阿武虎さんや八方不美人のみなさん、DJさんらが登場し、お客さんがドラァグクイーンと一緒に写真撮影できるサービスも。その後、お食事の時間になったのですが、たまたま向かいの席(アクリル板越し)にいらした若い女性の方がTシャツデザインコンテストで優勝した方で、デザインについてお話を聞けてよかったです。
また、会場のガラスの壁にレインボーカラーな「KANAZAWA RAINBOW PRIDE」のお絵かきコーナーが設けられていて、道ゆく家族連れが「あなたのハッピーは何ですか」に答えるコメントやイラストを思い思いに描いていて、素敵でした(そういうのに参加せずにスルーする方も多いと思うのですが、金沢のファミリーは積極的に、どんどん自由に描いて行くのが印象的でした)。お子さんたちに励まされた気がします。
12時に、パレード会場である「いしかわ四高記念公園」に移動。パレード受付やオリジナルグッズのブース、石川・富山など北陸信越のLGBTQ+団体のブースが出展されていました(石川県や白山市もHIV関連やLGBTQ関連のパネルを展示していました)
広々とした(3000人くらい入れそうな)公園には、約300名のLGBTQ+Allyの方たちが集まっていました。
ステージでは、小島慶子さんの司会で、共同代表の松中権さんとダイアナさんがスピーチした後、ドラァグクイーンの阿武虎さんや富山のブッチャーエルナンデスさん、肉襦袢ゲブ美さん、八方不美人のみなさん(エスムラルダさん、ドリアン・ロロブリジーダさん、ちあきホイ美さん)、そして西村宏堂さん、TOMO KOIZUMIさん、ご両親が金沢の方だというレズビアンコミュニティの大御所・チガさん(『GOLD FINGER』)らが登場しました。西村宏堂さんは「私がNYにいた時、お前はオカマなのかと詰め寄られたことがあったのですが、NYのプライドパレードに100万人もの人たちが集っていたこと、あの音や空気感を思い出し、私にはこんなに味方がいるんだと思え、めげませんでした。ですから今日、パレードに参加してくださる、そんな勇気につながるみなさんに感謝します」と語りました(素晴らしいですね)。みんなで記念写真を撮って、いよいよ出発に向けて整列。13時頃にパレードがスタートしました。
先頭は、実行委員会のみなさんや、西村宏堂さん、TOMO KOIZUMIさん、チガさん、東海林監督、「ひだまりの会」の奥村さんのお母様とお姉様(胸熱…)など30名くらいが歩いてました。そのすぐ後ろが第2フロートで、トランス男性のDJ SHOさんがLGBTQのクラブイベントで定番な曲をガンガンかけて、阿武虎さん、ブッチャーさん、ゲブ美さんという北陸が誇るドラァグクイーンのみなさんが盛り上げていました。第3フロートでは、金沢の伝説的なディスコDJであるマヨさん(バー『真珠貝』)が「君の瞳に恋してる」や「VOGUE」などパレードにふさわしいディスコ・アンセムをプレイし、八方不美人のみなさんが乗って、ドリアン・ロロブリジーダさんがマイク・パフォーマンスで盛り上げていました。最後に撮影NGの方たちも歩けるようになっていました。
多くの方が「故郷を帰れる街にしたい」というプラカードを持っていました。これは、先日亡くなった青森レインボーパレードの宇佐美翔子さんが掲げていたメッセージで、追悼の意味も込められていたと思います(なお、青森レインボーパレードの代表の方も、パレードに参加していました)
いしかわ四高記念公園から出発して、兼六園と金沢城の間にかかる橋の下を通り、前田利家公の銅像に見送られ、「金沢文芸館/金沢・五木寛之文庫」や趣深い古民家、尾山神社、近江町市場など、数々の名所を眺めながら歩けるのが金沢のパレードの魅力だと感じました。
意外にも、沿道で手を振ってくれる方たちがたくさんいて、金沢の街の人たちのあたたかさを感じました。
正直、(コロナ禍で家にこもる生活を続けてきてろくに歩いてなかったので)この炎天下を5.5kmも歩くのか…と、心折れそうになっていたのですが、そうした素敵な街並みや、沿道のあたたかさ、そして何より、フロートの音楽とドラァグクイーンの方たちのパフォーマンスに元気をもらって、汗だくになりながらも無事に歩ききることができました。
振り返ってみると、約300名に対してDJフロートが2つもあり(東京だと1フロートの定員が250名で、後ろの方の人には音が届かなかいこともあったりします)、参加者全員が音楽を楽しみながら、一体感を感じながら歩けたのはとてもよかったと思います。パレード初体験の金沢大学の学生さんが、初めてで不安や緊張を感じていたけど、「音楽と共に歩き始めた瞬間、私、みんなと一緒にプライドパレードに参加してる!!みんなと同じ想いで、同じ音楽にのりながら、同じ道を歩いてる!!!と全身が熱くなった」とBLOGに綴っていたように、クラブミュージックで盛り上げるDJフロートは本当に大事です。音楽があるのとないのとでは大違いです。そしてドラァグクイーンの方たちがパフォーマーとして花を添えたり、笑わせてくれたりもするので、満足度の高い、本当に楽しいパレードになりました(真剣に、このフロートじゃなかったら、途中で体力と気力が尽きて挫折していたかも…)。初めてにしてこの満足度の高さ。拍手!です。
パレードもそうですし、プライドウィークのイベントもそうですが、とても北陸初とは思えない、これまで全国で開催されてきた数々のプライドイベントに引けを取らない、充実した内容でした。素晴らしかったです。
金沢をLGBTQが生きやすい街に変えていこうという思いで、共同代表のお二人をはじめ地元のLGBTQ+Allyコミュニティの方々が結束し、この奇跡的な成功を導いたのです。みなさんに心からの拍手を贈ります。
(後藤純一)
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