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特集:10月はLGBTQ映画が豊作です

この10月、良質なLGBTQ関連の映画がたくさん上映されます。LGBTQのリアリティに触れられる映画をぜひ、映画館やご自宅でご覧ください。

(『TOVE/トーベ』より)

 この10月は、市民向けに名作を3本立てでお送りする足立レインボー映画祭、トランスジェンダー映画祭(オンライン)など、LGBTQの映画祭がいくつも開催されるほか、あの「ムーミン」の作者トーベ・ヤンソンのレズビアンとしての側面を描いたことで話題の『TOVE/トーベ』や、号泣必至のドキュメンタリー『沖縄カミングアウト物語』も公開されます。素晴らしく充実した、LGBTQ映画が「豊作」な月だと言えそうです。だいたい半分はオンラインで、半分は映画館での上映です。いよいよ緊急事態宣言も解除されましたし、大きな映画館はどこも感染防止策が取られていて(換気もよく、席も間引かれたりしていて)安心感があると思いますので、足を運んでみてはいかがでしょうか? というわけで、10月に上映・放送・配信される映画やドラマの情報をまとめてお伝えいたします。(文・後藤純一)
(最終更新日:10月1日)




10月1日 全国ロードショー公開
TOVE/トーベ

 あの「ムーミン」の原作者として知られる、フィンランドの作家トーベ・ヤンソンの半生を描いた映画です。トーベ・ヤンソンはレズビアンで、第二次世界大戦中は反戦の風刺画を描き続け、(映画『トム・オブ・フィンランド』でもその厳しさが伝わってきますが)フィンランドで同性愛が禁じられていた時期も、同性パートナー、トゥーリッキ・ピエティラとの関係を公にするなど、時代の先駆的な存在でした。フィンランドではスーパーヒーローで、自由の象徴でもある方です。才能があり勇敢で、ユーモアがあり謙虚。そして何のルールにもとらわれない自由さがありました。トーベ・ヤンソン自身の人生からインスピレーションを得て生み出されたムーミンたちの冒険は、彼女に国際的な名声と自由をもたらし、文学、コミック、舞台劇、アニメーションなど、今日においても世界中の人々を楽しませ続けています。戦時中、防空壕の中で怯えた子どもたちに語った物語から、いかに原作が執筆され、「ムーミン」のあのキャラクターたちが生み出されていったのか。トーベの人生のあり方とともに創作への情熱を描いた感動の物語です。

<あらすじ>
1944年のヘルシンキ。戦火の中でトーベ・ヤンソンは自分を慰めるようにムーミンの世界を作り、爆風で窓が吹き飛んだアトリエでの暮らしを始める。型破りな彼女の生活は、彫刻家である父の厳格な教えとは相反していたが、自分の表現と美術界の潮流との間にズレが生じていることへの葛藤、めまぐるしいパーティや恋愛を経験しながら、トーベとムーミンは共に成長していくのだった。自由を渇望するトーベは、やがて舞台演出家のヴィヴィカ・バンドラーと出会い、互いに惹かれ合っていく…。

TOVE/トーベ
2020年/フィンランド・スウェーデン/103分/監督:ザイダ・バリルート/出演:アルマ・ポウスティ、クリスタ・コソネン、シャンティ・ロニー、ヨアンナ・ハールッティ、ロバート・エンケル
10月1日(金)〜新宿武蔵野館、Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー
(c)2020 Helsinki-filmi, all rights reserved




10月3日 CS衛星劇場で放送
PAPA & DADDY

 台湾のLGBTQ映像作品プラットフォーム「GagaOOLala」が手がけたゲイファミリーのドラマシリーズです。主演のメルビン・シアはマレーシア出身のイケメン人気俳優。パートナーを演じるのはマイク・リン。脚本は『HIStory4 隣のきみに恋して~Close to You』で大ヒットBLドラマを手がけたナンシー・チェン。台湾の文化庁も制作を支援しています。好評を受けて、シーズン2の制作も決定しているそうです。

<あらすじ>
台北でバーを経営するダミアンの夢は「家庭を持ち子どもを育てること」。ダミアンは恋人のユーチューバー、ジェリーと2年間つきあった後、代理母出産により無事に息子のカイが誕生する。ダミアンとジェリーはカイを幼稚園に入れると、他の家庭との違いや母親がいない理由などについて、カイから答えづらい質問をされることになる。また、ゲイであることをカミングアウトできていないジェリーは、親との向き合い方に悩んでいた…。

PAPA & DADDY(全6話)
2021年/台湾/監督・脚本:ナンシー・チェン/出演:メルビン・シア マイク・リン
衛星劇場で10月3日(日)放送スタート 毎週日曜24:00~25:30 ※毎週3話連続放送




10月11日〜 YouTubeで配信
沖縄カミングアウト物語

 かつきさんは、幼少期からゲイであることを自覚していましたが、それを話すと「友達が離れ、家族がバラバラになる」と不安だったため、誰にも打ち明けられず、「ずっと孤独だった」と語ります。20代になると周囲からの結婚のプレッシャーも強くなり、沖縄を出る決心をしました。知人のつてで上京し、トラック運転手やアルバイトを経て、10年前に『九州男』のマスターになりました。「仕事や社会的地位にかかわらず、様々な人々が集い、気軽に語り合える場を作る仕事に喜びを感じている」と言い、趣味のテニスを通じて「人生を共にしたい」と思えるパートナーとも出会いました。一方、沖縄を離れてからいっそう、家族への思いが強くなり、「嘘をついていたくない。大好きで、いちばん大事な両親に、いちばん大切なことを話そう」と思い、カミングアウトを決意。8年前に帰郷した際、お母さんに「結婚しないの?」と聞かれ、「今言おう」と決め、「落ち着いて聞いて。結婚はしないよ。僕はゲイなんだ」と切り出しました…。そんなかつきさんのカミングアウトしたときの心境や周囲の反応、今の幸せな暮らしを、親しい人たちとのやりとりを通して描くドキュメンタリー映画です。なんと、あの下地正晃さんが主題歌を作ってくれました。これはもう、号泣必至です。10月11日の国際カミングアウト・デーに公開されます。

沖縄カミングアウト物語
2021年/日本/監督:松岡弘明
YouTubeで期間限定公開するほか、上映会も開催予定です




10月15日〜17日 トランスジェンダー映画祭で配信
ゲームフェイス

 UFC(総合格闘技チャンピオンシップ)の女子王座を狙う総合格闘家のファロン・フォックスは、トランスであることを理由に「女子リーグで闘うのはフェアじゃない」とバッシングを受けてしまう。高校バスケ選手のテレンスは、セクシュアリティを理由に、長年所属したチームのレギュラーから外された経験を持つ。東京五輪でも話題となった、スポーツ界におけるLGBTの「闘い」を追うドキュメンタリー作品。

ゲームフェイス
2015年/ベルギー・米国/95分/監督:マイケル・トーマス
トランスジェンダー映画祭にて配信




10月15日〜17日 トランスジェンダー映画祭で配信
アロハの心をうたい継ぐ者

 太古ハワイ王国では、男性と女性、そして男性と女性の両方を持ち合わせるマフが、自然と調和し暮らしていましたが、植民地支配によってハワイ文化は抑圧され、マフも抑圧や差別の対象となってしまいます。現代のハワイでクムヒナ(ヒナ先生)は、マフとして、植民地支配で奪われたハワイ文化の心を若い世代に受け継いでいます。尊敬される先生、誇り高いハワイ人マフ、現代西洋社会を生きるトランス女性。そんなクムヒナの生きるハワイを描いたドキュメンタリー作品です。
※太古ハワイ王国の言い伝えを描いた短編アニメ『カパエマフの魔法石』も同時配信

アロハの心をうたい継ぐ者
2014年/米国(ハワイ)/77分/監督 :ディーン・ハマー、ジョー・ウィルソン
トランスジェンダー映画祭2021にて配信





10月17日 足立レインボー映画祭で上映
ナチュラルウーマン

 第90回アカデミー賞授賞式で92ヵ国からエントリーがあって大激戦となったなか、見事外国語映画賞に輝いた映画『ナチュラルウーマン』は、ひどい侮辱や差別に屈することなく、毅然と闘いを挑むトランス女性を描いた作品。トランスジェンダーのアクターが演じたトランスジェンダー作品がオスカーに輝いたのは史上初の快挙です。主演のダニエラ・ヴェガの美しさや歌声の素晴らしさに魅了されることと思います。(レビューはこちら

<あらすじ>
チリの首都・サンチアゴでウェイトレスをしながらナイトクラブのシンガーとしてステージにも立っているMtFトランスジェンダーのマリーナは、歳の離れた恋人オルランドと愛犬といっしょに幸せに暮らしている。オルランドがマリーナの誕生日を祝ってくれた夜、急に頭が痛いと言い、病院に運ぶも、手当の甲斐なく、亡くなってしまう。最愛の恋人の死に直面し、悲しみに暮れる間もなく、マリーナは警察の理不尽な取調べを受け、遺族から容赦ない侮辱を浴びせられる。しかし、彼女はへこたれなかった…。


ナチュラルウーマン
2017年/チリ・ドイツ・スペイン・アメリカ合作/監督:セバスティアン・レリオ/出演:ダニエラ・ベガ、フランシスコ・レジェス、ルイス・ニェッコほか
足立レインボー映画祭にて上映
日時:10月17日(日)11:00〜
会場:東京芸術センター21階 天空劇場
無料
どなたでもご参加いただけます



10月17日 足立レインボー映画祭で上映
I AM THEY

 最近よく「ノンバイナリー」という言葉を聞くと思います。ジェンダーアイデンティティが典型的な男性/女性に当てはまらない方たち。そんなノンバイナリーのリアルな姿を捉え、彼らが直面する困難や社会的課題を浮き彫りにしていくドキュメンタリーです。

<あらすじ>
英国に住むフォックスとオウル。二人はトランスジェンダーであり、ノンバイナリーを自認しているカップルだが、人々の無理解ゆえに傷つき、法的問題やヘルスケアなど、生きていくうえで必要な社会システムが整備されていないことで、様々な問題に直面している…。

I AM THEY
足立レインボー映画祭にて上映
日時:10月17日(日)13:45〜
会場:東京芸術センター21階 天空劇場
無料
どなたでもご参加いただけます



10月17日 足立レインボー映画祭で上映
パレードへようこそ

 『パレードへようこそ』はゲラゲラ笑えてオイオイ泣けるエンタメ作品。舞台は1980年代の英国(まだゲイが「ヘンタイ」と罵られるような時代です)。ロンドンの都会っ子ゲイ&レズビアンと、ホモフォビアまるだしな荒くれ炭鉱夫たちとの間にまさかの「友情」が成立!という奇跡。これが実話なの?とビックリして、そしてオイオイ泣いてしまうような物語です。パレードというLGBTQの運動だけでなく、セクシュアリティのこと、カミングアウトのこと、HIVのことなど、大切なことが本当にたくさん盛り込まれている名作中の名作です。ぜひ大勢の方に観ていただきたい映画です。ゴトウが選ぶ「LGBTQ映画ベスト10」の堂々第1位です。(レビューはこちら

<あらすじ>
学校の実習だとウソをついて家を出たジョーは、電車に乗ってロンドンへ。そしておっかなびっくり、パレードの列に加わります。そこで「ザ・活動家」という風体のマイクに「(隠れているよりけばけばしい方がいいと書かれた)旗を持ってくれ」と言われ、なんとなくそのグループについていき…パレードが終わった夜、ゲシンの本屋で、マイクの仲間・マークが立ち上がり、「今、この国の炭鉱夫たちは危機に瀕している。サッチャーにいじめられ、苦しんでいる彼らの境遇は僕らと同じじゃないか」と語り、炭鉱組合を支援することを提案するのですが…。

パレードへようこそ
2014年/イギリス/監督:マシュー・ウォーカス/出演:ビル・ナイ、イメルダ・スタウントン、ドミニク・ウェスト、パディ・コンシダイン、ジョージ・マッケイ、ジョセフ・ギルガン、アンドリュー・スコット、ベン・シュネッツァー
足立レインボー映画祭にて上映
日時:10月17日(日)16:00〜
会場:東京芸術センター21階 天空劇場
無料
どなたでもご参加いただけます

 



10月29日〜31日 トランスジェンダー映画祭で配信
メジャーさん! 

 1969年6月、ストーンウォール暴動が起きました。そのまっただなかにいた一人、メジャーさんは78歳になった今でも投獄されたトランスジェンダーたちに手紙を書き続けます。家族から見放された人たちを娘たちと呼び、数えきれない人たちからママと慕われる彼女のたどった人生とは? トランスコミュニティの愛と闘いを描く至極のドキュメンタリー作品です。

メジャーさん!
2015年/米国/91分/監督:Annalise Ophelian 
トランスジェンダー映画祭2021にて配信




10月29日〜31日 トランスジェンダー映画祭で配信
最も危険な年

 トランスジェンダーの人口は1%未満にすぎません。マジョリティの無知は、しばしば少数派への偏見や不安に結びついてきました。2016年米国ワシントン州では、トランスジェンダーのトイレ利用を制限する法案が持ち上がり、「出生時の性別のトイレを使うべきだ」とする主張に対し、トランスジェンダーの子を持つ親たちが立ち上がります。差別と戦う武器は、自分たちのありのままの物語を語ること。日本でも広まりつつあるトランスヘイトの問題を考えるうえで必見のドキュメンタリー作品です。

メジャーさん!
2015年/米国/91分/監督:Annalise Ophelian 
トランスジェンダー映画祭2021にて配信


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