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特集:大阪観光局が発足させた新プロジェクト「OPEN ARMS PROJECT」
大阪観光局が7月5日、新しい観光体験プログラムを国内外のLGBTQに向けて展開する「OPEN ARMS PROJECT」を発足させました。
今年2月に日本初のLGBTQツーリズムをテーマとしたカンファレンス「LGBTQ Tourism Conference in Osaka」を開催し、6月には日本の観光局・DMOとして初めてプライド月間を祝うキャンペーンを展開した大阪観光局。今度は、さらに一歩進んで、地域の観光関連事業者と連携した新しい観光体験プログラムを国内外のLGBTQに向けて展開していく「OPEN ARMS PROJECT」を発足させました。
<OPEN ARMS PROJECTとは>
「OPEN ARMS PROJECT」は、大阪をLGBTQフレンドリーな都市とするべく様々な事業に取り組んできた大阪観光局が、地域の観光関連事業者とLGBTQツーリズムのプロフェショナルとともに、大阪ならではの新しい観光体験プログラムを開発し、世界へ発信するプロジェクトです。このプロジェクトを通じて、多様性と活気ある持続可能な都市の実現を目指します。
このプロジェクトに参加するすべての観光関連事業者に、LGBTQツーリズムのプロフェショナルによる下記プログラムを実施しています。
・LGBTQに関する理解を深めるワークショップ研修の実施
・各事業者を個別訪問し、施設やサービスなどに対するコンサルティングを実施
・各事業者内での社内研修、オリエン等、理解を深めるためのアドバイスの提供
・販売商品に関するサポート・アドバイス提供
各観光関連事業者には、これらのプログラムを実施するとともに、大阪観光局としてLGBTQフレンドリー施設と認定する「認定証」を発行。大阪の街が、多様性と活気ある都市であることを共に強く発信してまいります。
(公式サイトより)
そして、「取組みの概要、プロジェクト参画事業者、販売する旅行商品の詳細のほか、多様性のあふれる大阪観光の魅力を表現した」プロモーションビデオも公開されています(国際ゲイカップルが神社で同性結婚式を挙げ、大阪の街や食、ゲイバーやクラブなども楽しむ様子が収められた、とても素敵なビデオです)。公式サイトからご覧ください!
<Stay & Activities>
「OPEN ARMS PROJECT」の趣旨に賛同し、LGBTQの研修などを実施し、大阪観光局の認定を受けた観光関連事業者(ホテルや飲食店など)が、プライド月間を祝う「ワンカップレインボー」付きの特別プランなど、国内外のLGBTQツーリストへの歓迎の気持ちを込めた新たな商品・サービスを展開しています。その中からいくつかご紹介します(公式サイトの「Stay」「Activities」に表示されたプランをクリックすると、楽天トラベルのページに飛んで、実際にご利用いただけるようになっています)
W大阪
プライド月間をお祝いし、ご宿泊の方にソーシャルハブ「LIVING ROOM」で「ワンカップレインボー」を使ったレインボーカクテルを無料でご提供します。
Zentis Osaka
1階のゲストラウンジで販売しているミニバードリンクボトルがフリーフロー(宿泊客に無料で提供。お部屋にお持ち帰りいただくかたちです)。「ワンカップレインボー」をはじめ、ソフトドリンクやスムージーもご利用いただけます。
ホテルロイヤルクラッシク大阪
ご宿泊の方に、夜景が一望できる最上階のバーラウンジ「雲雲」でレインボーカラーのオリジナルカクテルをご提供。
あまみ温泉 南天苑
ご宿泊の方に「ワンカップレインボー」を人数分、プレゼント。同性カップルもウエルカムな、自然豊かな温泉旅館です。
こうした宿泊プランのほか、英語も話せるゲイのアシスタントが同行するプライベート・ナイトツアー(プライベート・ナイトクルーズ、イベリコ豚ディナー、松阪牛ディナー)などのツアーも用意されています。海外からのお客様にとても喜ばれそうですね!
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<このプロジェクトの意義>
「おもてなし」の国である日本は、宿泊施設にしても飲食店にしても、海外からの旅行客にも喜ばれるような丁寧できめ細かでハイレベルな接客ができると思いますが、一方で、LGBTQについての理解がなく、同性カップルの宿泊を断るホテルも残念ながらありました。2016年にはゲイカップルの宿泊を断るという違法行為に対して大阪府が行政指導を行なっています(詳細はこちら)。2018年にはホテルが同性カップルの宿泊を拒否することがないよう、厚労省が全国の自治体に通達を発しています(詳細はこちら)。にもかかわらず昨年、尼崎市のラブホテル2軒が男性カップルの利用を断り、市の行政指導を受けています(詳細はこちら)。これらはラブホテルのケースですが、一般のホテルでも、男性二人でダブルルームの予約をしようとしたら「お間違えじゃないですか」と咎められたり、勝手にツインに変えられたりという事例も発生しています。フロントの方が、パスポートの性別欄がサードジェンダー(M/F以外)だったり、性別欄と見た目の性別が異なるお客様に対して、不審がったり問い質したりせずに対応できるかどうか…など、課題はたくさんあります。LGBTQ旅行客をきちんと「おもてなし」できるようになるためには、やはりホテル側が「差別的な対応をなくそう」「LGBTQフレンドリーになろう」と意識を変え、LGBTQについての基本的な知識(LGBとTの違い、世界の動きなど)や接遇のポイントを学ぶような社内教育を実施することが必要です。
とはいえ、実際は、そういう意識を持たれることもほとんどなく、意識はあっても手が出なかったりして、きちんとLGBTQ研修を実施したホテルはごくわずかでした。そういう意味で今回、大阪観光局が旗を振り、LGBTQツーリズムの専門家と協働し、広く観光関連産業に呼びかけて研修を実施し、LGBTQフレンドリーなホテルや飲食店を増やしていきながら販促にもつなげるというプロジェクトを立ち上げたことは、画期的な取組みと言えるでしょう。多くの店舗がLGBTQへの意識を高め、フレンドリーに変わっていくことが期待されます。「町を挙げて」感があります。
海外から来られたLGBTQのお客様が安心して気持ちよく旅行を楽しんでいただけて、その評判が世界に認知されれば、同性婚も差別禁止法もできていない日本の後進国としてのイメージを改善することにもつながりますし、地域がLGBTQフレンドリーになっていくことにもつながりますし、いいことづくめです。
世界を見渡してみると、オーストラリア、米フロリダ州、パリ、ベルリン、バルセロナなど、LGBTQ旅行客を歓迎し、積極的な誘致に努めている国や州や都市がたくさんあります。観光局が旗を振って、地元のLGBTQコミュニティや観光関連産業と連携し、実現してきたのです。
大阪観光局が今行なっていることも、まさにこれです。こうした世界の動き(グローバルスタンダード)に則った、正統的でオーソドックスな取組みなのです。
2月のレポートでもお伝えしたように、大阪観光局は2024年のIGLTA(国際LGBTQ+旅行協会)の年次総会の誘致を目指しています。これが実現すると、アジア初の快挙というだけでなく、世界中から大阪にLGBTQ(やアライ)の方々がやってきて、ドラァグクイーンが大活躍したり、堂山のバーやクラブなども賑わい、活性化されると予想されます。
こうしたLGBTQの国際会議やゲイゲームズなどの国際イベントは、これまでほとんどが欧米(や豪州)で開催されてきて、日本はずっと「蚊帳の外」でした…。しかし、ようやく今、大阪観光局のおかげで、LGBTQの国際会議を受け入れる素地が整ってきたのです。「OPEN ARMS PROJECT」は、LGBTQフレンドリー都市・大阪の国際的なプレゼンスを高め、2024年のエポックメイキングなイベントを実現するための、希望のプロジェクトです。共に素敵な未来を思い描き、実現を夢見ましょう。
- INDEX
- レポート:「トランスジェンダーを含むLGBTQ+差別に反対する映画監督有志の声明」掲出プロジェクトに関する会見
- レポート:東京トランスマーチ2024
- レポート:みやぎにじいろパレード2024
- レポート:「work with Pride 2024」カンファレンス
- レポート:やまがたカラフルパレード
- 来年ワシントンDCで開催されるワールドプライドについて、Destination DCのエリオット・L・ファーガソンCEOにお話を聞きました
- レポート:レインボーフェスタ!2024(2)
- レポート:レインボーフェスタ!2024(1)
- レポート:IGLTA総会in大阪
- 「結婚の自由をすべての人に」東京一次訴訟高裁判決の意義と喜びの声