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レポート:えひめプライド フェスタ&パレード2025

愛媛県で初となる「えひめプライド フェスタ&パレード2025」が3月8日(土)、松山市で開催されました。当初の登録よりも多い約150人がレインボーフラッグを振りながら「ハッピープライド」のかけ声と共に松山市中心部の商店街を行進しました

 2023年11月、愛媛県初のプライドイベント「えひめプライド フェスタ&パレード2024」が開催決定とのニュースをお伝えしていましたが、諸般の事情により延期されることになりました。そして今年、様々な方たちの応援も受けながら、念願のえひめプライドが3月8日(土)に開催されることになりました。以前松山に住んでいて松山を「第二の故郷」だと語るWAKUWAKU♡サセコさんと、ブルボンヌさんが司会を務め、エスムラルダさん、ゲイとノンケ男子のデュオ「もげへい」、えひめプライド合唱団、エイサー演舞「新虹(あらぬーじ)」関西支部のみなさんなども出演することになり、とても楽しいイベントになりそう!と期待が高まっていました。
 そんな「えひめプライド フェスタ&パレード2025」のレポートをお届けします。
 


 3月8日(土)10時に会場に到着。県庁前から城山公園に入ってすぐ目の前にレインボーカラーのポールが立っていて、ああ、ここが会場なんだな、とすぐわかりました。
 あいにくの曇り空で、ポツポツと小雨も降るような寒い朝となりましたが、司会のブルボンヌさん&WAKUWAKU♡サセコさんが元気に挨拶し、華々しくイベントがスタートしました。このステージはももにじ岡山と岡田商運による「虹トラ岡山」をお借りしているとの説明がありました。


 ステージイベントの前に、まずは出展ブースをご紹介します。










 10:30、えひめプライド合唱団のコンサートが始まりました。愛媛大学の合唱部のみなさんを中心としたアライの若い方たちが多い合唱団で、「ほらね」「鴎」「にじ」という3曲を歌ってくれました。「にじ」のときにはブルボンヌさん&WAKUWAKU♡サセコさんがレインボーカラーの傘を持って彩りを添えていました。

 10:50、トークイベント1「結婚の自由をすべての人に」が始まりました。関西訴訟の原告の川田さん&田中さん(川田中家)のお二人、Marriage For All Japan代表の松中権さんらが登壇。川田中家のワンちゃんもステージに上がっていて、司会のお二人がワンちゃんの名前を聞いたり、和やかな雰囲気のなか、前日の名古屋高裁の判決を喜んだり、訴訟の意義について話し合われました。

 11:20、トークイベント2「LGBTQ+と医療」が始まりました。認定NPO法人ぷれいす東京の生島さんた、大阪のいだてんクリニックの石内さんらが登壇し、HIV/エイズやジェンダー医療について話し合われました。

 12:10、エスムラルダさんが登場。この頃には雨もやみ、日が差して空も明るくなってきました(さすがはエスムラルダさん)。鉄板のリップシンク・ショー(ドレミの歌)のあと、八方不美人として歌っている「地べたの天使たち」やソロ曲「魔法時間」を生歌で披露。そしてステージにブルボンヌさん&WAKUWAKU♡サセコさんも上がり、ドラァグクイーンについてのトークが繰り広げられました。往年のUPPER CAMP(1990年代〜2000年代に二丁目で活躍したお笑い系ドラァグ集団)の話なども含め、観客をガンガン笑わせる楽しいトークとなりました。エスムラルダさんは最後に、パレード開催に尽力してきた方たちへの思いも込めて「あの鐘を鳴らすのはあなた」を歌って締めてくれました。




 13:30にパレードに向けた整列が始まり、14:00前にパレード出発地点に向かって移動を開始しました。
 主催の「カラフルドットライフ」代表の新山賢(さとし)さん、プラウド香川の藤田博美さん、元TRP代表の山縣真矢さんが先頭で横断幕を持ち、その後にブルボンヌさん、WAKUWAKU♡サセコさん、エスムラルダさんが続き、花園通りから松山市駅前へと移動しました。すると、いよてつ髙島屋の前で、髙島屋の社員さんたちが(岡山などと同じように)たくさん、レインボーフラッグを振ってパレードを出迎えてくれました。とても素敵なサプライズでした。
 髙島屋の社員さんに見送られながらパレードが出発し、松山市随一のアーケード商店街である銀天街へと入っていきました。スピーカーを乗せた台車がプライドのアンセムを流してくれて、気分が盛り上がりました。土曜に商店街でお買い物をしている方たちに手を振り、ハッピープライド!と声をかけながら約150名の方たちが練り歩きます。途中で左折し、信号を渡って、今度は大街道というさらに大きな商店街へと入っていきました。いつの間にか姿を消していたエスムラルダさんが自転車で先回りしてパレードの参加者を出迎えて笑いをとったりという場面もありつつ、みなさんカラフルに晴れやかに行進していました。
 大街道を歩ききり、国道11号線に出たところで左折し、三越の前を通り、緑色のドーム型屋根が素敵な近代洋風建築の(国の有形文化財に登録されている)県庁舎を右手に見ながら、もとの城山公園にゴールしました。

















 
 15:30にクロージングのステージイベントが始まりました。この頃にはすっかり晴れて、暖かくなっていました。
 「新虹」関西支部のみなさんによるエイサー演舞。わざわざこれを見に関西から駆けつけた方もいらっしゃいましたが、遠くに松山城を望む絶景のなか、三線の音と沖縄の歌が演奏され、大勢の踊り手の方たちが太鼓を鳴らしながら勇壮なエイサーを舞う様はとても美しく、すっかり見惚れてしまいました。後ろでWAKUWAKU♡サセコさんが「おばあ」として踊っていたのも素敵でした。



 続いて、大洲市在住のゲイ&ストレート男子のデュオ「もげへい」が登場。お二人は会社の同僚として知り合い、送別会のために歌を作って歌ったことをきっかけにデュオを結成したそう。もげさく彗太さんのカミングアウトを泰平さんは自然に受け入れ、こうしてプライドのステージに立つことになりました。泰平さんはこの場に馴染めるかどうか不安だったそうですが、パレードも一緒に歩き、きっと仲間になれたと思う、と語り、会場から拍手が送られました。全編愛媛弁で歌われた「ほやけん」も素敵でしたし(方言ファンにはたまりません)、パレードのテーマソングとして作ってくれた「NICE COLORS」もすごくいい歌でした。お二人とも本当に歌が上手くて、元気がもらえる、とてもいいライブでした。


 各地から集まったプライドの主催者の方たちや団体の方たちなどがスピーチするPRタイムとなりました。たくさんのプライドイベントのアナウンスがありましたので、ご紹介します。
・岡山レインボーフェスタは今年5回目となりますが、11月1日に前夜祭、11月2日にフェスタ&パレードが開催されるそうです。
・香川プライドパレードが11月3日に初開催されます。岡山と連続なのは、たまたまだそうですが、ハシゴしやすい日程ですよね。
・山口レインボープライドは今年の秋に開催予定だそうです。
・広島では、10月11日にひろしまプライドパレードが初開催されます。
・大阪では、10月11日、10月12日にレインボーフェスタ!が開催されます。(日程が広島と重なっているのでブルボンヌさんが「仁義なき戦いですね」と(広島だけに)、すかさず続けて「みなさん1時間ずつ参加してください」とギャグをかましてて素晴らしかったです。天才的)
・神戸では、5月31日と6月1日に神戸レインボーフェスタが開催、パレードを行なうのは今回が初となります。
 そのほか、ぷれいす東京やHIV予防啓発CBO(Angel Life Nagoyaなど)、プライドハウス東京、カラフルブランケッツ、パープルハンズ、Transgender Japan、「Smash Shukatsu Sexism」などの方たちがお話しました。



 最後に主催の新山賢さんがご挨拶し、会場から温かな拍手が贈られました。

 


愛媛初のプライドを振り返って
 
 NHK共同通信でも「性的マイノリティへの理解を深めてもらおう」「差別や偏見のない社会を目指そう」という趣旨でパレードが初開催されたと報じられていました。インタビューに応じた「カラフルドットライフ」の新山代表は、「愛媛県は他県と比べても制度導入の面でずいぶん遅れています。自治体がすぐに取り組める制度の導入を進めてほしい」とコメントし、パレードに対して「街の人が手を振ってくれ、非常にうれしく勇気づけられた」とも語っていました。
 新山さんはもともと松山を中心に中四国でHIV予防啓発などの活動をしてきた「HaaTえひめ/BRIDGEプロジェクト」の代表で、パレード開催を見据えて「カラフルドットライフ」に改称し、法人化しました。LGBTQ総合支援団体として(1)健康支援活動、(2)相談居場所事業、(3)社会啓発・ネットワーク・提言という活動を行なうようになり、ゲイ・バイセクシュアル男性向けのセクシュアルヘルス向上の取組みも引き続き行なってきました(HIVのことだけでも大変なのに…本当におつかれさまです)
 一度延期になったことも関係あるかもしれませんが、今回のえひめプライドでは、警察が警備に当たってくれなかったり、出展予定だったブースがキャンセルになったり、実行委員長の方が体調不良で来られなくなったり、当日も早い時間は雨模様だったりと、さまざま「うまくいかないこと」があり、新山さんは本当に大変な思いをしていたようでした。しかし、司会のブルボンヌさん&WAKUWAKU♡サセコさんをはじめ、出演者のみなさんが120%の力を発揮し(本当に寒い日でしたが、ブルボンヌさんは背中にホッカイロを貼りながら頑張ってくれました)、新山さんの人柄の良さのおかげで周囲の人がたくさんイベントを支え、盛り上げてくれている様子が伝わってきました。
 
 会場には、中四国だけでなく全国から駆けつけた方たちもいらっしゃいましたし、ろう者の方たちや、おそらく地元と思われる当事者の方たちも目立っていて、往年のTLGPのようなコミュニティ感がありました。パレードを歩くのは難しいとしても、こうして会場に来られてフェスタを楽しんでいただけるだけでも意味のあること。五大都市圏以外の地方のパレードは今でも地元の同性愛者の姿はほとんど見られないのですが(会場に行くだけでも心理的ハードルが相当高いのだと思われます)、えひめプライドはずいぶんたくさん会場に来られていて素晴らしいと思いました。それも新山さんのおかげだと思います。
 パープルハンズの永易さんがPRタイムのときに、自分は愛媛県出身で、今回のパレード初開催は実に感慨深いです、と語っていました。(私もそうですが)生まれ育った地方の街を愛していながら、ここでは生きていけない、生きづらいと感じて都会に出る方はとても多いことでしょう。このえひめプライドが「故郷が帰れる街に」なる一つのきっかけにもなるのではないかと思いました。
 
 個人的に愛媛は初めてで、前夜には鯛めしを食べたり道後温泉に行ったり、蛇口からみかんジュースを飲んだり坊ちゃん団子を食べたりして、すっかり松山に魅了されました。えひめプライドが今後、もっと大きくなって、アフターパーティが開催されたり、DJフロートが出たりするくらいになったら、かつてのレインボーマーチ札幌のように、観光も兼ねて松山に行こうと思う方も増えるのでは?と、そういうポテンシャルもあるなぁと感じました。
 
 ともあれ、今回は本当に大変だったと思います。新山さんはじめスタッフのみなさん、出演者や協力者のみなさん、本当におつかれさまでした。ありがとうございました。

 この後も6月のプライド月間にかけて、全国各地でプライドイベントが開催されます(スケジュールはこちら)。すでに協賛を予定されている方も多いことでしょう。そうでなくても、お近くのイベントに足を運んでみてはいかがでしょうか。
 
(取材・文:後藤純一)

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