事例紹介

vol.6 メディカル・ケア・サービス

記事日付:2018/08/09



グループホームや有料老人ホームの運営など介護事業を行うメディカル・ケア・サービス株式会社さんでは、ichoose(LGBT求人サイト https://ichoose.jp/)への掲載をきっかけにLGBTの取り組みを始め、2018年の東京レインボープライドではアウト・ジャパンブースでパネル展示もされました。
インタビューでは、取り組みを始めたきっかけや取り組み内容を、東日本事業統括部 東日本採用課、課長の綿貫豊さん(写真左)、同課の課長(インタビュー当時)渡辺将広さん(写真右)にお話を伺いました。

●介護事業は採用難。LGBTアライになることで採用に効果があるのでは

-LGBTに関して、ichooseへの掲載や東京レインボープライドへの出展などの取り組みをされていますが、きっかけは何だったのでしょうか?

渡辺さん:きっかけはアウト・ジャパンさんのセミナー案内のメールです。弊社は介護事業を行っているのですが、介護業界は採用難が続いています。私は採用課の中でも新しい採用手法など、新規の企画を立てることが役割なので、「何かないか…」と考えているときにたまたまアウト・ジャパンさんから案内が来ました。案内文の中の「LGBTアライ(LGBTを理解し、支援すること)になることで採用においても効果がある」という文言に興味を持ちました。

-LGBTという言葉はご存知でしたか?

渡辺さん:はい、なんとなく知っていました。以前弊社でもLGBTに関して何か始めてはどうかという話があったものの、実際に何か行うという段階には至っていなかった、という話を聞いたことがあったからです。
以前そういった話が出たということは、まだ取り組みは始めていないものの、会社としてLGBTを理解しようという考えはあるのではないかと思い、まずは私が話を聞いてみようとセミナーに参加しました。

-セミナーに参加してみてどうでしたか?

渡辺さん:LGBTについて知らないことも多かったので基礎知識を学べてよかったですし、わかりやすかったです。
就職活動に関する調査データなども見せて頂き、LGBT当事者にとって「LGBTアライであるかどうか」は就職先を選ぶ上で重要なポイントであることがわかりました。また、LGBTアライを表明している企業はまだそれ程多くはないので、表明することで採用面ではこれまでよりも幅広い層に弊社を知ってもらうことができるのではないかと思いました。
セミナーではichooseの案内もあったので、まずは掲載に向けて進めようと思いました。会社に戻って採用課内で共有したところ綿貫さんや上長にも賛成してもらえたので進めることにしました。 

●LGBTに理解し受け入れられると判断した施設から採用を始めた

-ichooseへの掲載を進める上で、工夫したことや気をつけたことはありますか?

渡辺さん:やはり配属先の理解が重要なので、まず直接話をして受け入れ可能だと判断した施設での採用から行うことにしました。
さらに、最初の面接は私が担当するようにしました。私の方から当社のLGBTに関する考え方や職場の状況を話してお互い納得した上で、その次に進んでもらうようにしました。

-施設の方と話してみて、反応はどうでしたか?

渡辺さん:想像していたよりも自然に受け入れている印象でした。以前LGBT当事者が働いていたという施設もありました。 

-現在もセクシュアリティをオープンにされているLGBT当事者の方が働かれていると聞きました。

渡辺さん:はい、何名かいらっしゃいます。1人はFtMトランンスジェンダーの方で介護職です。入社の際に制服の件で相談があり、男性の制服で働いています。入社後に話を聞いてみたのですが「男性の制服を選べることがうれしかった」と話していました。戸籍が女性なので、男性として働くには職場の理解が必要だと感じていたようです。弊社としてはどちらの制服で働いて頂いてもまったく問題ないのですが、不安を感じたり困っている人がいるのだなと思いました。その他にもLGBTの取り組みに協力頂いている当事者の方もいます。

-セミナーに参加されたのが2018年の1月頃で、その後すぐにLGBTの取り組みを始められたと思うのですが、すぐに始められたポイントは何だったのでしょうか?

渡辺さん:元々弊社がLGBTを理解し受容する風土があったのだと思います。介護事業では認知症の方など様々な方と接します。全ての人に対して、人として尊重しながら接しようという文化があり、それがこの取り組みを始める際にもいいカタチで作用したのかなと思います。
また、私が取り組みを始めたいと言ったときに、賛同してくれる人がいたことも大きかったです。綿貫さんを始め、他部署のメンバーにも声をかけるなどして、部署の垣根を超えてプロジェクトチームとして動けたので、ichooseの掲載や東京レインボープライドへの出展もスムーズに行えたと思います。

▼LGBTアライを表明するにあたり、レインボーバージョンの企業ロゴも作成。
広報担当の方が協力してくれたそう。 

●LGBTアライを表明することでの変化

-LGBTアライを発信するようになってから何か変化はありましたか?

渡辺さん:LGBT当事者の方、何名かから応募がありました。面接前は失礼があってはいけないので接し方に少し不安があったのですが、実際に会ってみるといつもの面接と同じでした。当たり前なのですが、採用活動では弊社の社風に合うかどうか、仕事の適性はあるかなどが重要なので、LGBTであるかどうかはあまり関係がないということを実感しました。ただ、事前にセミナーで勉強したように、アウティングにならないようにカミングアウトの範囲や、働く上で配慮してほしいことなどについては確認するようにしました。

▼デスクにレインボーフラッグを置いて、アライを表明しているそう。
 

-リアル・ジョブレインボー※にも出展されたそうですが、いかがでしたか?

渡辺さん:それまでセクシュアリティをオープンにしたLGBT当事者と直接会う機会がほとんどなかったのですが、当日は本当に様々なセクシュアリティの方が来られていて、最初は正直戸惑いました。というのも、LGBTについて知り始めたばかりの時だったので、「FtMは身体が女性で心が男性の方だよな、Xジェンダーっていうのは何だっけ??」と自分の中で考えながら接していたので段々わからなくなってきて…。そうするうちに、「セクシュアリティをきちんとカテゴライズして認識した上で接する必要があるのか?」と思うようになりました。もちろん、理解のない失礼な対応をするのはNGですが、セクシュアリティの違いを認識することが大事なのではなく、人として尊重しなければいけない部分を守って接すればいいのではないかと思うようになりました。
それに、会社説明の反応がLGBT当事者とLGBT非当事者で変わらないんですよ。介護は人気業界とは言えないので、他の合同企業説明会などに参加しても興味を持って話を聞いてくれる人はそれ程多くはないです。リアル・ジョブレインボーでも興味を持ってくれる人の率は同じくらいで、「LGBTかどうかって関係ないんだな」と思いました。
当たり前のことではあるのですが、実際にたくさんの方と接したことで実感できたことがたくさんありました。 

※リアル・ジョブレインボー
株式会社JobRainbowが主催するLGBTアライ企業の合同企業説明会 

-東京レインボープライドではアウト・ジャパンのブースにパネル出展していただきましたが、何か感じられたことはありますか?

渡辺さん:私自身、初めて東京レインボープライドに参加したので、いろいろ気づくことがありました。同性のカップルが手をつないで歩いていることも多く、普段の生活ではなかなか気づかないですがやっぱりLGBT当事者の方はたくさんいるのだなと改めて思いました。
パネルを読んでいる方もたくさんいて、弊社がLGBTアライであることを発信するよい機会になりました。社内メンバーも注目していて、当日遊びに来てくれる人もいました。

▼東京レインボープライドのアウト・ジャパンブースに出展したパネル。
当日の詳しいレポートはこちらでも公開しています。
 

-では最後に今後についてお話を伺えますか?

綿貫さん:LGBTの取り組みは続けていくことが大事だなと思います。最初は「LGBTってなんですか?」という反応の人もいましたが、社内での理解が進んできていると感じます。それはichooseへの掲載や、東京レインボープライドへの出展などもあり、ミーティングでLGBTの話題が出ることが多かったので、日常的に聞くことで関心を持つ人も増えてきたからではと思います。最近では役員からLGBTの話題が出ることもあります。
なかなか人員的にどんどん新しい取り組みをしていくというのは難しいのですが、「火を絶やさない」ように、しっかりと続けていきたいと思っています。

―ありがとうございました!



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