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LGBTQユースへの緊急調査で、コロナ禍による様々な困難が浮き彫りに
プライドハウス東京がLGBTQユースを応援するオンライン企画「RAINBOW YOUTH COMMUNITY」を始動というニュースでお伝えしていた若い世代のLGBTQへの緊急アンケート調査の結果の速報が発表され、コロナ禍で安心できる人や場所との「つながり」が弱くなってしまったこと、無理解な家族とのステイホームのつらさ、新生活や進路・就活への不安、失業などの現状が明らかになりました。
任意団体「プライドハウス東京」コンソーシアムは、2020年5月11日〜6月14日に、新型コロナウイルス感染拡大やその防止政策のなかで、若い世代のLGBTQが抱える不安や困難についての声を集める緊急アンケート調査「LGBTQ Youth TODAY」を実施しました。このたび、アンケート結果の速報として、緊急性の高い主要なデータと、具体性のある自由回答に寄せられたLGBTQユースの声が発表されました。
新型コロナウイルスの感染拡大は、様々な分野において中長期的な影響が予想されますが、LGBTQが直面する不安や困難についての声は、差別や偏見が根強く残っている社会ではなかなか表面化しにくく、特にLGBTQユースは、今まで以上に孤独感を抱えたり、居場所を見つけにくくなっており、適切な支援が届きにくい状況です。調査から見えてきた現状を、現在実施中のLGBTQユースを応援するオンライン企画「RAINBOW YOUTH COMMUNITY」のコンテンツに反映させるとともに、国や自治体、各種団体、メディア等に対して、積極的に情報提供を行う予定だそうです。
<緊急アンケート調査「LGBTQ Youth TODAY」:速報>
緊急アンケートの回答者は12歳〜34歳の1654名で、(Xジェンダーを含む)トランスジェンダーが45.6%、LGB他が54.4%だったそうです(なお、本調査の企画および設計は認定NPO法人ReBitが担当、集計および分析はアクセンチュア株式会社LGBTQ Allyコミッティが協力しているそうです)
アンケート結果から見えてきた、LGBTQユースがコロナ禍で抱える不安や困難を、5つのポイントにまとめました。
1) SOGIについて話せる人・場所とつながれなくなることによる困難
LGBTQユースの約37%は、ふだんから自身のSOGIについて安心して話ができる人や場所をもっておらず、さらにコロナ禍で「つながりがなくなった」「つながりづらくなった」と回答した方の割合は、36.4%にのぼりました。自由回答では、「一人暮らしをしていたが実家に戻ったため、カミングアウトしていない家族と同居しており、パートナーや友人と電話もできず居場所がない」「バーやオフ会などのイベントが自粛されて、同じ境遇の人に出会うのが難しく、孤独を感じる」など、当事者の友人やパートナーと会えない心理的ストレスが窺えるコメントが多かったそうです。
2) 無理解な家族・同居者とステイホームすることによる困難
LGBTQユースの73.1%が、家族などの同居者との生活において困難を抱えていると回答しました。「同居者からシスジェンダー・ストレートであることを前提とした言動がある」(41.6%)、「同居者に性的マイノリティであることを隠さないといけない」(36.3%)、「同居者がLGBTQに否定的な言動をする」(27.9%)といった結果で、同居者のLGBTQへの無理解が困難の背景にあることがわかります。また、自由回答には、「家族と衝突している」「家族から暴力を受けている」「自傷行為が止められない」といった緊急性の高い状況や、緊急時に安心して暮らせるハウジングを求める声などが寄せられました。一方、同居者との生活に困難を感じていないと回答したLGBTQユースの約9割が、本人のSOGIを肯定的に捉えている同居者が少なくとも一人はいると答えていることから、LGBTQユースが家で安心して過ごすためには、家族等の同居者からの理解が非常に重要であるということも窺えました。
3) 休校やオンライン学習で見えない新学生生活、今後の進路・将来への不安
LGBTQの学生の約35%が、ふだんから学校が安心できる場所ではないと回答しており、コロナ禍で休校やオンライン学習に切り替わり、LGBTQの学生の約55%が進学・受験・就職等の進路についての不安を抱えていると答える一方で、約17%は「これからも学校に行きたくない」と回答しました。自由回答では、「キャンパスでの受講がないことから、学校にLGBTQ関連の相談をしづらい」等の新生活への不安の声があがりました。また、就職を控えるLGBTQの学生からは、「景気の悪化から企業におけるLGBTQへの取り組みが減少する」「就職難の加速によりマイノリティであるLGBTQの就活がさらに困難になる」ことを懸念する回答がありました。
4) 収入減少や失業・休業による経済的な不安・困難
LGBTQユースの24.9%が、パンデミックの前後で失業・休職/休業などを経験していることがわかりました。また、LGBTQユースの38.5%が、今後収入が減少する見込みだと答えています。LGBTQユースの世帯全体においても、収入が減少(36.5%)、経済的に困窮している(14.6%)、今後が経済的に心配(38.6%)、と経済的影響が見られます。自由回答でも、アルバイトや就業における収入減少への不安のコメントが多く、収入減により学校へ通えなくなる不安や、実家に戻ったことで高まる同居による困難など、複合的な不安や困難もあげられました。中長期化する経済状況の悪化のなかで、LGBTQに配慮した就業支援を望む声なども寄せられています。
5) 感染時の対応や、医療アクセスに関する不安
新型コロナウイルスに感染した際に医療現場で同性パートナーが家族として扱われるか、入院時に自認する性で扱われるか、望まない形でSOGIが知られてしまわないか等、感染時の医療などの対応について、SOGIに由来する不安の声が寄せられました。また、性ホルモン投与や性別違和に関する理由で定期的に通院しているトランスジェンダーのユースの約72%が、コロナ禍での通院に不安を抱えていることがわかりました。主な不安の理由は、本人と周囲の新型コロナウイルス感染リスクに対する懸念となっています。自由回答には、通院がしづらくなり、心身の健康状況が悪化している声もあがっています。
<全体考察 〜中長期化するコロナ禍における課題と今後に向けて〜>
①LGBTQユースは、ふだんから家族など同居者との生活において困難や孤独感を抱えている方が多く、その背景には同居者の無理解があります。特にコロナ禍においては在宅が長期化することから、心理的負荷がより高まることが想定されます。また、同居者との衝突により、暴力やDVなどが増加することも想定され、各種専門家との連携やLGBTQも安心して入居できるシェルターの拡大等、セーフティネットを広げていく必要があります。
②日本社会のあらゆる層と同様に、LGBTQユース本人やその世帯は、コロナ禍において収入減・失業・休業などの経済的困難に直面しています。コロナ禍の貧困対策・経済対策においてLGBTQユースを置き去りにすることなく、支援の対象として想定する必要があります。また、LGBTQユースはふだんから非正規雇用率が高く、就職・転職活動時にハラスメント等の困難に直面しやすいため、中長期化するコロナ禍では特に、当事者も安心して利用できる就労支援が求められています。また、日本の現行制度では同性パートナーが世帯として把握されず、世帯での収入減が可視化されないことから、社会保障が届かない可能性があります。
③新型コロナウイルスに感染した際に、医療現場で同性パートナーが家族として扱われるか、入院時に自認する性で扱われるのか、自身のSOGIが望まない形で周囲に知られてしまわないか等、感染時の医療などの対応について、LGBTQユースも他世代同様に、SOGIに由来した不安を抱えています。また、性別違和に関し定期通院をするトランスジェンダーが、コロナ禍の影響で通院しづらくなり、健康状況が悪化している例も挙げられています。これまでも震災の時などに同様の事例が起きており、医療現場での同性パートナーに対する平等な扱い、性別違和を持つ当事者への対応や医療アクセスの確保、公表や報道におけるアウティングへの配慮など、平時から体制構築を行うことが求められています。
④上記のように、コロナ禍の影響でLGBTQユースが様々な困難に直面しているにも関わらず、SOGIについて安心して話せる人・場との「つながり」が絶たれ、さらに不安が高まっています。オフライン・オンラインを問わず、LGBTQユースの居場所づくり、相談窓口へのアクセスの確保は、喫緊の課題です。自由回答では、障がい等複合的マイノリティ性を持っている方がさらに困難を感じているという声も寄せられました。危機的な社会状況においては多層的な視点を持ち、包括的に支援していくことが重要であるということが浮き彫りになりました。
参考記事:
【速報】LGBTQユースへの緊急調査、回答者の4割弱は、コロナ禍で安心できる人や場所との「つながり」が脆弱に。無理解な家族とのステイホームの辛さ、新生活や進路・就活への不安、仕事を失い支援を求める声も(PR TIMES)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000051.000019571.html