NEWS
兵庫県明石市が全国で初めて「パートナーシップ・ファミリーシップ制度」を導入へ
全国で初めて、兵庫県明石市が「明石市パートナーシップ・ファミリーシップ制度」を導入することを発表しました。
明石市は昨年、2020年度中に同性パートナーシップ証明制度を導入すると発表し、先日開催された明石プライドパレードでは泉房穂市長が「来年1月の導入に向けて最終的な調整をしているところであります」とスピーチしましたが、その内容の詳細までは明らかにされていませんでした。
12月10日、市の公式サイトが更新され、2021年1月8日(金)から「明石市パートナーシップ・ファミリーシップ制度」をスタートします、と発表されました。制度の概要は以下の通りで、パートナーシップだけでなく、子どもを含む家族の承認・証明書の発行も行うところが画期的です。※
「互いを人生のパートナーとして尊重し、継続的に協力し合う「パートナーシップ関係」であることを表明した二者が市に届出をし、市がその届出を受理したことを公に証明する制度です。届出者のSOGIEは問いません。
なお、二者のほかに家族として暮らしている子ども(未成年)がいる場合で、子どもを含む家族の関係を届け出てもらった場合には、合わせて証明します。
パートナーシップ制度は、法律上の婚姻とは異なるため、届出をしても法律に基づく権利・義務は発生しませんが、様々な場面での実質的な効果を伴うよう整備するほか、より効果を高めるための取組を合わせて実施します。
また、制度実施後も事業者や関係団体と連携しながら制度の趣旨を浸透させ、より効果が高まるまちづくりを進めていきます」
通常のパートナーシップ宣誓の手続きに加え、子ども(未成年)に関する届出をする場合は、子どもの年齢や同居が確認できる書類(住民票の写し等)も提出します。そうすると、子どもの氏名も記載したパートナーシップ・ファミリーシップ制度届出受理証明書が交付されます(証明書は届出をしたお二人に交付されます)
※なお、同性カップルの子どもを家族として承認するファミリーシップの制度は、今年6月、KDDIが社内LGBTQ施策の一環として初めて導入していました。そもそも日本では同性婚が認められていないため、同性カップルが子どもを育てていても、二人ともが子どもの法律上の親権を持つということが認められないという問題があり、KDDIは「ファミリーシップ制度」を創設することで、異性婚家族と同等に育児休職や子の看護休暇・出産祝い金などの制度が使えるようにしたのです。
パートナーシップ・ファミリーシップ制度を利用して証明書を発行してもらった場合、市が様々な関係機関へのはたらきかけや調整を実施することにより、以下のような効果が生まれるそうです。
(1) 医療機関で家族として対応
パートナーや子どもの病状説明や入退院の手続き等の際、家族としての対応が可能です。
(2) 市営住宅に家族で入居可
パートナーや子どもも含めて、家族として入居手続きをし、一緒に入居できます。
(3) 市営墓園の使用・承継
パートナーを一緒の墓地に埋葬できるほか、墓地の使用権をパートナーに承継できます。
(4) 犯罪被害者等遺族支援金等の給付
パートナーも犯罪被害者等遺族支援金や特例給付金等の支給対象となります。
(5) 住民票の続柄を「縁故者」に変更可
これまで「同居人」という続柄しか選択できなかったパートナーが「縁故者」を選択できます。
(3)の市営墓地は、川崎市や鹿沼市などでも利用できるようにするという前例があり、(4)の犯罪被害者等遺族支援金等の給付に関しては、札幌市が今年承認しています。が、(5) 住民票の続柄を「縁故者」に変更可というのは、おそらく初めてではないでしょうか(「縁故者」はただの同居人ではない親族を意味します。外国籍で同性婚している方なども「縁故者」と書くことが認められています。なお、東京23区で日本国籍の同性パートナーを「縁故者」と書くことを認めている区はありません)
上記のほか、子育て支援センター等の利用や里親制度(養育里親)の利用は、制度利用の有無に関わらず、可能だそうです。また明石市職員の結婚祝金の支給や結婚休暇等の取得についても、2021年4月以降適用予定で調整中、とのことです。
さらに、この制度の効果をより高めるため、以下の取組みも実施されます。公正証書取得費用の助成というのも、初めてではないでしょうか。
(1) 制度利用者を対象とした公正証書取得費用の助成
公正証書は、様々な場面でお二人の関係性を一定法的なものとして証明する効果があることから、届出者が希望される場合には、その取得に係る費用を市が助成します。(具体的には、合意契約公正証書及び任意後見契約公正証書の取得に係る費用を助成することを想定し、制度設計中です。2021年1月から開始予定)
(2) 県内他自治体との効果面における連携
県内のパートナーシップ制度実施自治体との連携会議に参加し、他自治体においても制度の効果が伴うよう、具体的な場面を想定した協議を継続的に実施していきます。
それから同日、「LGBTQ+フレンドリープロジェクト」の立ち上げも発表されました。1月9日土曜日にあかし市民広場でブルボンヌさんらをゲストに招いたキックオフイベントを開催、「明石にじいろキャンペーン」は2月末まで実施され、OUT IN JAPAN写真展など多彩なイベントが盛り込まれる予定だそうです。
これまで全国で60以上の自治体が同性パートナーシップ証明制度を導入してきましたが、今回明石市が発表した制度は、そのいずれをも上回るような、市として現状やれることを全て実現したような、素晴らしい取組みではないでしょうか。イベントやキャンペーンもとても良い内容です。
明石市は全国で初めてLGBTQ支援の専門職員を2人配置し、LGBTQへの配慮が行き届いた制度の導入に向けて慎重に検討を重ねてきました。今回発表された画期的な取組みは、LGBTQの社会的課題の解決に詳しい当事者の専門家だからこそ、生み出すことが可能になったものと言えます。
全国の自治体が明石市に倣い、LGBTQの専門職員を(男女共同参画などと同様に)雇い入れ、よりよい取組みを実現していっていただけるようになることを期待します。