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同性結婚式をフィーチャーしたCMを放送中止にしたテレビ局に抗議殺到、謝罪へ
米グリーティングカード会社大手「ホールマーク・カード」が所有するケーブルテレビ局「ホールマーク・チャンネル」が、同性結婚式をフィーチャーしたCMの放送を取り止めにし、批判や抗議、大規模なボイコット運動が巻き起こりました。局は謝罪を余儀なくされました。
欧米では今や有名企業が同性カップルをフィーチャーしたCMを製作することは珍しくありません。
ごく最近話題になったのは、ルノーのイギリス支社のCMで、まるで映画のように、二人の女性の物語をドラマチックに描いていて、涙を誘います。素晴らしい作品です(こちらからご覧ください)
昨年は、ラスベガス観光局が、やはり二人の女性をフィーチャーし、魅力的で感動的なCMを製作しています。男たちの欲望を具現化する街というイメージを塗り替え、広範な層の人々に「ラスベガスって素敵!行ってみたい!」と思わせることに成功してますよね。(こちらからご覧ください)
そんななか、ニューヨークを本拠地とし、アメリカのウェディングギフト分野で急成長を遂げたスタートアップ企業として知られ、2017年のフォーブスの「次世代スタートアップ」リストにも選出された「Zola(ゾラ)」も、同性カップルの結婚式をフィーチャーしたテレビCMを製作しました(こちらからご覧ください)。そして、8500万人以上の会員数を誇る「ホールマーク・チャンネル」での放送を依頼しました。が、同チャンネルは12月14日、突然CMの放送を取りやめ、そこから大騒動が巻き起こりました。
ホールマーク・チャンネルは家族向けの番組を強みとしていて、アメリカの保守層の間で支持を厚くしています。今回、放送を中止した理由についてホールマークは、「CM内で二人の女性が結婚式でキスをする場面が、ネットワークの価値観に合わないとの批判を受けて放映を中止した」とコメントしていますが、同社に圧力をかけたのは、アンチ同性愛で知られる全米家族協会(アメリカの同性婚運動に最も強力に反対していた団体)のオンライン活動の一つ「ワン・ミリオン・マムズ」でした。ワン・ミリオン・マムズは公式サイトで、ホールマークの親会社である「クラウン・メディア・ファミリー・ネットワーク」のビル・アボットCEOと個別に話をしたこと、アボット氏は「CMを取り下げたが、あれは誤って放送されたのだ」と述べたことを明らかにしています。クラウン・メディアはゾラに対し、「議論を呼ぶと思われる創造物を受け入れることはできない」として、同社のCMのうち4本は今後放送されないと告げたそうです。
これに対し、ソーシャルメディアでは、ホールマーク商品のボイコットの呼びかけが起こりました。
2016年に大統領自由勲章を受章し、2020年のゴールデングローブ賞でキャロル・バーネット賞(TV功労賞)を贈られることが決定しているオープンリー・レズビアンの人気司会者エレン・デジェネレスは、「もうすぐ2020年なのでは? 何を考えているのか? 説明を願う。みんな答えを待っている」とツイートしました。
史上初のオープンリー・ゲイの米大統領誕生か?と期待がかかるピート・ブテジェッジも、「家族は愛の上に築かれる――外見がどうであろうと」とツイートしました。「『家族にやさしい』とは、愛を尊重することであり、違いを検閲して削除することではない。私たちがこの国を、排除ではなく所属によって定義される場所へと再建しているいま、この真実はこれまで以上に大事になる」
さらに、ネットフリックスUSや、カリフォルニア州のギャヴィン・ニューソム知事も、ツイッターでホールマークを批判しました。
メディア上でのLGBTへの公正な扱いを求める団体GLAADは、#BoycottHallmarkChannelというハッシュタグを作ってボイコットを呼びかけ、たった1日で1万6000件超のツイートが行われ、ツイッターのトレンドにも浮上しました(実際に退会した方たちも少なくなかったのではないでしょうか)
こうした反応を受け、ホールマークのマイク・ペリーCEOは、「今回の件で私たちは誤った決断をしてしまいました。(中略)私たちの行動によって傷つき落胆した方々に心よりお詫び申し上げます。今後、私たちはホールマーク・チャンネルやホールマーク・カードといったブランドを通して、お互いの違いを受け入れ、すべての人たちが平等だと感じられる道を見つけたいと思っております」との声明を発表しました。そしてCMの放送を再開し、ゾラとの関係修復を図りたいとしています(ゾラ側はこれまでホールマーク・チャンネルで放送してきた5本のCMも全て取り下げ、「ホールマークとは今後、一切の関係を絶つ」と宣言しているそうです)
なお、ホールマークは毎年、クリスマスシーズンに恋愛ドラマをオンエアすることで知られていますが、近年は、ホールマークの番組には同性カップルが一切登場しないという批判の声が上がっていたそうです。
参考記事:
同性カップルのコマーシャル、放送中止 米ホールマークが謝罪(BBC)
https://www.bbc.com/japanese/50805547
米保守系TVの「ゲイカップル差別」に抗議殺到、CEOが謝罪(Forbes JAPAN)
https://forbesjapan.com/articles/detail/31318
「同性婚」を描いたCMの放送を取りやめたテレビ局に批判が殺到(フロントロウ)
https://front-row.jp/_ct/17325696