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子どもを授かりたいと望む性的マイノリティへの生殖医療を行ったことがある病院やクリニックが全国で4施設に上ることが明らかになりました
10月6日、第三者の精子による人工授精や自身の精子の凍結保存といった生殖医療を、国内の4施設が性的マイノリティのカップルに実施していたことが岡山大の調査で明らかになりました。全国規模でLGBTへの生殖医療の実態が明らかになるのは初めてのことです。
岡山大の中塚幹也教授らは昨年12月、日本産科婦人科学会に登録する公立病院や民間クリニック1131施設を対象に性的マイノリティの生殖医療に関する実態を調査し、492施設が匿名で回答しました。
ゲイのカップルが代理母の利用を求めるなど、性的マイノリティの方が生殖医療を求めて来院した例はのべ41施設にのぼり、そのうち、実際に生殖医療を施した施設が、4施設あったそうです。MtFトランスジェンダーの方が性別適合手術を受ける前に自身の精子を凍結保存したケースが3施設、レズビアンのカップルが第三者の精子を提供してもらって人工授精したケースが2施設だったそうです(両方実施した施設が1ヵ所あるため、合計で4施設です)。実際に子どもを授かったかどうかは不明です。
日本産科婦人科学会などの指針では現状、同性カップルが生殖医療を受けることは想定されていません(戸籍上男性と女性の夫婦に限定されています)。しかし、家族のかたちが多様化するなかで、子どもを持ちたいと希望するカップルは増えており、すでに生殖医療を施した実績のある施設が現れていることも明らかになりました。今後、指針は実態に追いついていないのではないか、として見直しを求める声が上がりそうです。
なお、FtMトランスジェンダーの方が性別適合手術を受けて戸籍上の性別を変更した後に結婚し、妻となった女性に第三者提供の精子を人工授精する治療については、すでに5施設が実施していたそうですが、これは婚姻関係があるため指針が認める範囲内として扱われています。婚姻関係の有無によって指針に適合する(合法である)/しない(違法と見なされる可能性がある)というように明暗が分かれる不条理…。そういう意味でも、同性婚の実現が求められるところです。
ちなみに、今年8月、代理母出産を経て、現在スウェーデンで同性のパートナーと子育てをしているみっつん氏が、その経験を綴った書籍『ふたりぱぱ ゲイカップル、代理母出産(サロガシー)の旅に出る』(現代書館)を発表しました。
みっつん氏は、2011年にスウェーデンで同性のパートナーと結婚し、2016年にアメリカで代理母に依頼して男の子を授かりました。現在はスウェーデンで家族3人で生活しています。この本のイラストを手がけ、自身も同性のパートナーと日本で子育てしている小野春氏との対談イベントも開催され、こちらやこちらにレポート記事が掲載されています。興味がある方は、読んでみてください。
参考記事:
子望むLGBTに生殖医療(日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50672250W9A001C1CR8000/