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世田谷区が全ての区立中学で性別にかかわらず制服を自由に選択できるよう検討へ

 今年2月、柏市の新設中学校でスカート、ズボン、リボン、ネクタイを自由に選べる制服が採用され、話題になりましたが、このたび東京都世田谷区が、全ての区立中学で性別にかかわらず制服を自由に選択できるよう検討を行うことになりました。区議会での上川あや区議の質問への答弁で明らかになったものです。

 世田谷区ではすでに、一部の区立中学校で性的マイノリティなどの生徒に配慮し、入学前の保護者会などで配布する資料に、女子生徒がズボンを選べる旨を表記しています。また、全区立中学校で、保護者や生徒から相談を受けた場合は個別に対応するようにしているそうです。
 
 3月19日の区議会予算特別委員会で、自身もトランス女性である上川あや区議が質問しました(全文はこちら
 初めに、性的マイノリティの高校生の約1/3が自傷を経験していることが明らかになったという報道で、性的マイノリティの生徒が約10%に上り、学校現場での対応の必要性が裏づけられたとされている、世田谷区には約4500人の性的マイノリティ児童生徒がいると考えられる一方で、世田谷区教育委員会の性的マイノリティ児童生徒の把握状況は、昨年度たった15例しかない、それは、実際に学校に寄せられた相談だけカウントしているからだ、思春期には、当事者の多くは親や学校に知られたくないと感じ、相談したがらない、切実な悩みも埋もれてしまいがちだ、と指摘し、「当事者人数の把握方法をさらに工夫し、現場の対応力強化も図っていただきたい」と述べました。
 この質問に対し、世田谷区教育委員会は、「学校教育においても、性同一性障害者や性的指向などを人権課題のひとつとして捉え、多様性を認め、人権を尊重する教育を進めるとともに、個別の対応や適切な支援が重要であると認知している」と回答しました。
 さらに上川区議は、世田谷区立中学を卒業したFtMトランスジェンダーの方が、スカートがいやで体操着で通ったものの、学校から「ちゃんと制服を着ろ」と指導され、詰め襟の着用が認められず、プールもトイレも修学旅行も身の置き場がなく、不登校になったという事例を紹介し、区内でも中学校によっては女子生徒がズボンを選べるところもあるのに、隣の学校では選べないという状況になっている、すでに固定的性別役割分担意識の解消を目指す条例も施行されている以上、「LGBTに限らず、もっと生徒の良識を信用し、選択の幅を広げるべきだと考えます」と述べました。
 この質問に対し、世田谷区教育委員会は、「現段階では、入学前の保護者会などで提示するカタログでは、標準服の例示となる写真で男女別が記載されたものをほとんどの学校で示しているが、女子生徒がスカート/スラックスを選択できる学校もある。日頃から生徒が自分らしく学校生活を過ごせるよう意識を醸成することが大切。多様性を尊重し、どの学校でもそれぞれの生徒が選択できるような環境整備について、校長会と連携して検討に努めていく」と回答しました。まずは2019年度の新入学生に対する標準服の説明資料から、男女別の表記をなくす方向で検討を進めたいとしています。

 自治体としてこのようにトランスジェンダーなどの生徒に配慮し、制服を自由に選択できるようにする施策に乗り出すのは、たいへんめずらしく、上川区議も「画期的な答弁」と評価しています。

 世田谷区では4月1日から「世田谷区多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例」が施行されます。すべての人が「多様性を認め合い、人権が尊重され、尊厳を持って生きることができる」「自らの意思に基づき個性および能力を発揮し、多様な生き方を選択することができる」「あらゆる分野の活動においてともに参画し、責任を分かち合う」ことを基本理念としています。今回の取り組みも、こうした理念に合致するものと言えるでしょう。

 
 
参考記事:
全区立中、制服選択自由に=性の多様性尊重で検討—東京都世田谷区(時事通信)
制服選択自由に 世田谷区の全区立中、LGBT配慮で検討(東京新聞)
全区立中学で性別問わずスカート、ズボンが選べるよう検討へ 東京都世田谷区教委が見解(ハフィントンポスト)


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