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キリンがトランスジェンダー社員の支援策として、性別適合手術などのために最大60日の有休を取れるようにすることを発表
ビール大手のキリンホールディングス(以下HD)は3月29日、トランスジェンダーの社員を支援する制度を設ける方針を明らかにしました。HD傘下で国内事業を統括する「キリン」は今夏にも、性別適合手術などのために最大60日の休暇を有給で取れるようにするとのことです。性別適合手術やリハビリは長期休暇が必要なため、こうした制度を設けることにしたものです。
性的マイノリティの就労支援に取り組むNPO法人ReBit(リビット)によると、性別適合手術を受けるためには(現状、日本では健康保険の適用対象外であるため)数百万円ほどの費用がかかり、1回の手術に1~2カ月の休暇が必要となります。経過が不調なら再手術を受けるなどし、働けない期間がさらに長期化することもあります。
キリンにはもともと、不妊治療などを対象に過去に使い切れなかった有給休暇を通算で60日まで積み立てられる制度があり、この制度にトランスジェンダーのホルモン治療や性別適合手術を加えることにします。60日に通常の有給休暇(勤続5年以上で年20日、翌年までは繰り越し可能)を合算することもでき、休みを拡大できるそうです。
さらに、同性カップルに男女の夫婦と同等に慶弔休暇などを付与するようにし、採用試験担当者に性的マイノリティへの理解を促す制度も設けるとのことです。
キリンの広報は「実際に取得する人がいるかどうかではなく、制度として整えることで多様な人材に活躍してもらいたいという会社の姿勢を示したい」と語っています。
また、キリン多様性推進室は「社内にいるとみられる性的マイノリティが力を出しやすい環境にすることは業績にプラス」と語ります。好みが多様化する業界に対応できる多彩な人材を確保する狙いもあるそうです。
ReBitの薬師実芳(みか)代表理事は、「必要な休暇を有給で確保しやすくなるだけでなく、制度化自体が性的マイノリティに『会社が支える』という明確なメッセージを送ることになり、就労定着につながる」と評価しています。
支援団体によると、国内大手企業では珍しい先進的な取組みです(欧米では、会社の健康保険制度を利用してホルモン治療や性別適合手術などを受けることができるようにする=福利厚生でカバーする企業が多くなっています)
参考記事:
キリン 性別適合手術に有休 多彩な人材確保へ最大60日(毎日新聞)
キリンHD、性別適合手術に有給休暇 性的少数者を支援(SankeiBiz)
性別適合手術に有給休暇 キリンが最大60日制度化へ(東京新聞)