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経済同友会の調査で大企業の3/4がLGBT施策を実施していることが明らかになりました
2月7日、経済同友会が実施したダイバーシティと働き方に関するアンケート調査の結果が発表され、約4割(大企業では3/4)の企業が性的少数者(LGBT)に関する何らかの施策を行っていることが明らかになりました。
日本経済団体連合会、日本商工会議所と並ぶ「経済三団体」の一つである経済同友会は、約1,400名の経営者が個人の資格で参加しており、一企業や特定の業種・業界の利害を超え、個人として国内外の経済社会のあるべき姿や課題の解決策を考え、時代の先を行く政策提言・意見書を発表しています。
経済同友会は、「生産性の革新が強く求められる中、解決の鍵となるのは“人財”に他ならない。日本と世界各国との人事制度・労働慣行等の違いに対して、折り合いをつけつつ、人財の多様性を活力とすることで、それらをイノベーションの創出や生産性向上に結び付け、競争力を向上させる必要がある」として、これまでも「ダイバーシティや働き方改革に向けた経営者としての行動宣言、先進企業の事例をベースにした企業の具体的なアクションプランを提示」してきましたが、「会員所属企業の女性や外国籍人財等の登用・活用といったダイバーシティに関する取組状況、および多様で柔軟な働き方の促進に関する調査を実施し、ダイバーシティが進む中での働き方の現状と各社の取り組み状況等を広く共有」するねらいで、会員に対して「ダイバーシティと働き方に関するアンケート調査」を実施してきました。すでに5年目となるそうですが、今回、初めてLGBTに関する項目が追加され、同会の会員となっている企業がどの程度LGBT施策を実施しているのかが明らかにされました。
調査結果によると、回答があった131の企業のうち、何らかのLGBT施策を実施している企業は39.7%(52社)に上りました。属性別の傾向を見ると、製造業では38.0%、非製造業では40.7%となっており、従業員規模5000人未満の企業では21.8%、5000人以上では75.0%となりました。時事通信の記事では「海外展開している大企業を中心に、LGBTへの理解が広がりつつあることの表れとみられる」とコメントされています。ただ、今回の「ダイバーシティと働き方に関するアンケート調査」では、約1400の会員(企業)の中で回答したのは1/10以下で、すでにダイバーシティ施策を実施している(意識の高い)企業が積極的に回答していることも考えられ、約4割(大企業では3/4)という数字の高さは、少し割り引いて見る必要もあるのかもしれません。
具体的な対応策(自由記述で回答)としては、「相談窓口の設置」(相談窓口を設置したほか、個別相談があった場合の対応の考え方や体制を整理し、人事対応方針としてまとめ社内に周知した。相談を受けやすい人事担当者に研修を実施)、「社内研修・勉強会の実施」(新任管理職研修、全社員を対象としたeラーニングのダイバーシティに関する研修にLGBTを盛りこんでいる。社内のイントラに「LGBTハンドブック」を掲載)、「差別禁止規定の明文化」(基本方針を明文化し、就業規則やコンプライアンスマニュアル等に記載)などが挙げられました。
また、「当会では、社会全体の生産性向上に資する日本企業全般(中堅中小企業を含む)の雇用慣行のあり方を検討しています。どのような改革が必要で、それはどのようにすれば実現できるのか? 忌憚なきご意見をご記載ください」(自由記述)という質問に対して、「社会全体として多様な人財を活用する事により質・量ともに労働力の幅を増やしていく事が必要不可欠である。ダイバーシティをビジネスに直結する経営課題だと捉えジェンダーのみならず、クロスカルチャーや障がい者、LGBTなど多様なバックグラウンドを持つ方達にとって働きやすい環境を整え、経営リーダーからメッセージを伝え続けることで、「異なるが故に時間がかかる」のではなく、「異なる事が故に、よりイノベイティブな成果をだせる」ことが当たり前になるようにマインドチェンジしていく必要がある」という回答が寄せられていました。
多くの企業に対してLGBT施策を行っているかどうかをアンケートする調査としては、東洋経済『CSR企業総覧(雇用・人材活用編)』が先行しています。2017年版掲載の1408社に対する調査では、LGBTに対しての会社の基本方針(権利の尊重や差別の禁止など)で「あり」と回答した企業は207社(14.7%)に上りました。2013年調査(『CSR企業総覧』2014年版)に初めて調査票にLGBTの項目を入れた際は、多くの企業から「CSRに関係するのか?」といった質問を受け、LGBTに関する何らかの取り組みを「行っている」と回答した企業は80社にとどまっていましたが、毎年着実に実施する企業が増え、当初の2倍以上となりました。
また、昨年、海外の指標のような本格的なLGBT施策評価指標となる「PRIDE指標」が初めて策定され、企業が申告する形で調査が行われ、何らかの施策を行う企業が80社以上、5つの指標全てを満たすゴールド(最高得点)を獲得とした企業が50社以上に上りました。
それぞれ調査対象や調査方法は異なっていますが、LGBT施策を行う企業(LGBTフレンドリーな企業、アライ企業)が毎年着実に増えており、すでに「ごく一部」の企業がやっていることではなくなってきている、経済界の時流として「LGBTのことに取り組むべきだ」という流れになってきていることが多面的に明らかにされてきている、ということは言えるのではないでしょうか。
参考記事:
4割の企業がLGBTに対応=大企業は75%-経済同友会調査(時事通信)