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東京都杉並区と世田谷区が、職員採用の申込書から性別記載欄を削除
東京都杉並区と世田谷区が、一部の職員採用選考の申込書から性別記載欄を削除する対応を実施しました。戸籍上の性別と生活上の性別の不一致ゆえに困難に直面しがちなトランスジェンダーの方などに配慮したものです。
東京23区の職員採用は大部分が全区共通となっているため、今回の措置は区独自に選考・採用を行っている職種に限られますが、当事者は「他の区市町村にも広がってほしい」と話しています。
杉並区は昨年から、世田谷区は今年8月以降の募集から性別欄削除を実施しました。杉並区が対象としたのは、正規職員のうち事務系(社会教育)、福祉系(心理、保育士など)、一般技術系(学芸研究)、医療技術系(栄養士、看護師など)、技能系(運転手、用務員など)5職種と非常勤職員です。世田谷区は「検討開始の時点で間に合わなかった」として、非常勤と技能系のみ実施しています。
両区とも「任用時は健康保険などに必要なので性別を確認するが、少なくとも選考の段階では必要ないと判断した」としています。2004年施行の性同一性障害者への配慮を求めた特例法を根拠に、住民票の交付申請書など他の書類からも削除を進めています。
自治体職員の選考については、すでに福井県越前市(今年度から)や横浜市などが同様の理由で性別欄をなくしています。
東京23区の事務職員など大部分は、特別区人事委員会が全区共通の採用試験を実施しており、申込書には性別欄が残っています。ただし、上記の5職種は、特別区人事委から委任を受けて各区が独自に選考・採用し、非常勤職員は各区の裁量に任されているため、独自の措置が可能だとのことです。
世田谷区議の上川あや氏は「職員の募集や選考の段階では、性別は行政が収集すべき必要最低限の情報にはあたらない。性差別に敏感であるべき行政が、採用の入り口で性別の記載を求めるのはやめるべきで、大きく広がってほしい」とし、今回の対応を歓迎しています。
上川氏は2003年の初当選時、戸籍上の性別変更が認められず、女性として生活しながら戸籍上は男性だった。「書類上の性別と社会生活上の性別が違うと医療や選挙、不動産などで自分自身の証明が難しい。公的書類の性別表記は命に関わる問題でもある」と語っています。
公的書類の性別欄の削除・廃止は、様々なところで進んでいます。
国においては、精神障害者保健福祉手帳の性別欄の削除や、国民健康保険被保険者証についても、本人からの申し出により、性別を裏面に記載する取扱いが行われています。
印鑑登録証明書の性別欄を廃止している市区町村も31都道府県の183自治体に上っており、東京都は38自治体で最多となっています(2013年の「日本性同一性障害と共に生きる人々の会」による調査。詳しくはこちら)
その他のたくさんの書類について一斉に見直しを行い、性別を区別する必要のない書類から性別欄を廃止するよう取り組んでいる自治体も全国にあります(埼玉県日高市、新潟市、東かがわ市など)
参考記事:
東京)職員採用の性別記載欄を削除 杉並区と世田谷区(朝日新聞)