アウト・ジャパン通信Vol.1
OUT JAPANからの案内
◎はじめに
アウト・ジャパン通信 事務局です。
今回、アウト・ジャパン通信という不定期(3か月に一度くらい)でのメールマガジンを新に発行させて
頂く事になりました。
アウト・ジャパンからは毎月、LGBTにまつわる様々なニュースなどをお伝えする
『OUT & PROUD』を発行しております。
ただ、アウトジャパンの活動やメンバーについて情報もほしい、という声を頂く事が増えてきましたので
こちらのアウト・ジャパン通信では、アウト・ジャパンのメンバーの日々の活動をYoutubeでの動画
とあわせて発信すると共に毎回、さまざまなゲストにコラムを寄稿頂き様々な視点からLGBTにまつわる情報
を発信していきたいと思います。
『OUT & PROUD』と共にたまに送られる『アウト・ジャパン通信』も楽しんで頂ければ嬉しいです。
また、こちらの内容はHPにもアップしていきます。
ゲストコラム
はじめまして、「りぃな」です。
私はLGBTQ+のうちのひとつ"レズビアン(女性同性愛者)"であり、日々会社員として頑張っている25歳です。
こちらのコラムでは、私がLGBTQ+の若者のための居場所「名古屋あおぞら部」を運営してきた経験から、日本に住むLGBTQ+当事者の若者のいまに関連したトピック
をお届けできればと思っています!
「名古屋あおぞら部」とは、LGBTQ+当事者またはLGBTQ+かもしれない若者向けの居場所です。
2016年秋にスタートし、それからコロナ禍の影響で一時中断しつつも、今日まで約7年間続いている居場所になります。
活動の拠点は、愛知県名古屋市にある公共施設・イーブルなごや。
ここに2ヶ月に1度、10〜30代のLGBTQ+当事者、または、LGBTQ+かもしれない若者が50名ほど集まって、趣味のことを話したり、学校/職場での近況を話したりした
り、時にはLGBTQ+当事者としての悩みを語り合ったりするなどして、交流を深めています。
こうした居場所を私が作ろうと思ったのは2016年、私が大学生になったばかりの18歳の頃でした。
当時から名古屋近辺では、LGBTQ+当事者向けのお店やイベント・サークルなど、LGBTQ+当事者が集まって心置きなくお喋り出来る空間はいくつかありました。
しかしその多くが、20歳以上の大人向けで、お酒やタバコがある空間でした。
そのため、高校生など未成年が参加しづらい/参加できない空間がほとんどであり、当時未成年であった私はとても困っていました。
また、「ゲイ限定サークル」「レズビアン限定イベント」といったように、セクシュアリティごとに空間が分かれていることが多く、「自分がゲイかバイセクシュ
アルか悩んでいる」や「自分がレズビアンかトランスジェンダーか悩んでいる」「自分がトランスジェンダーかそうではないか悩んでいる」などといった、
セクシュアリティが曖昧な状態である人が参加できる空間も、あまりありませんでした。
加えて、「身近にLGBTQ+当事者がいる」や「教育・福祉関係の仕事をしている」などの理由で「LGBTQ+について知りたい」「LGBTQ+当事者と話してみたい」
という人が参加できる空間も、ほとんどありませんでした。
そういった事情から、
・未成年が安心して参加できる
・セクシュアリティが曖昧な状態でも参加できる
・「LGBTQ+当事者ではない」と自認した上で、「身近にいるLGBTQ+当事者のことを理解したい」と考えている人も参加できる
環境が必要であると思い、設立しました。
名古屋あおぞら部では、高校生・大学生など若者たちが参加しやすい・居心地が良いと感じる空間を作ることを1番の目的として、活動を行ってきました。
また、話したいことだけを話してもらえるように、参加者に対してセクシュアリティや本名、学校名(または職場名・職業名)などについて、名乗ることを強制
しないようにしてきました。
参加者同士の交流を1番の目的としていますが、一方で必要に応じて、講師を呼んだ講演会・勉強会なども企画し、参加する若者たちにとっていま欲しい情報を
少しでも提供出来るように取り組みを行っています。
「LGBTQ+当事者の若者の悩み」と聞いて皆さんは何を想像されるでしょうか?
恋愛のこと、ファッションのこと、トイレのこと、などを思い浮かべられるかもしれません。
もちろん、LGBTQ+当事者またはLGBTQ+かもしれない若者の悩みは、学校生活や家族関係など多岐に渡ります。
ただ、私が何年もの間、LGBTQ+当事者またはLGBTQ+かもしれない若者と関わってきて、色々な相談を受けていてやはり大きいと感じるのは「仕事」の悩みです。
これは正社員だけでなく、アルバイトなども含まれます。
トランスジェンダーの子たちからは、「戸籍の性別とぱっと見の性別が異なっている状態だけど、履歴書にはどうやって書こう」や「希望する性別で勤務した
いことを面接の際にどうやって説明したら良いんだろう」と言った、職場における性別についての悩みが多くあります。
また、希望する職業に就くためには高校・大学・専門学校に進む必要があるけれど、「希望する性別の制服を着たいが学校で理解を得られない」「戸籍の性別と、
自認し社会的に生活している性別のどちらで学校生活を送るべきか」など、実際に働く手前の段階での悩みも多く聞きます。
レズビアンやゲイの子たちからは、「同性パートナーがいることを職場で隠したくないが、隠さざるを得ないのが疲れる」「異性の恋人がいる前提で会社の制
度が出来ているので、自分みたいな人はこの会社に想定されていなくて働きにくい」と言った、異性愛の夫婦を前提に作られた会社の仕組み(福利厚生など制度
や社内でのコミュニケーション)に関する悩みが多くあります。
「他者に対して性的欲求・恋愛感情を抱かないセクシュアリティ」であるアセクシュアルの子たちからは、「恋人がいないこと・恋愛経験がないことを職場で
悪いことかのように言われる」「結婚はまだかと周囲から声掛けをされる」と言った、恋愛至上主義なコミュニケーション・価値観についての悩みが多くあります。
「職場でプライベートの話をしなければ良い」「仕事をする上でプライベートなことは関係ないからカミングアウトは不要」と思っている方もいらっしゃるかも
しれません。
しかし、残念ながらそうは言えません。
例えばランチタイムに「週末、妻と〇〇に出かけて」と話している男性社員を見かけたことはありませんか?
もしくは、女性社員に対して「女性の目線でこの商品についてどう思う?」と質問している男性社員を見かけたことはありませんか?
「〇〇くん男の子だから、あの仕事やっておいて」と指示している女性社員を見かけたことはありませんか?
その他にも、「〇〇歳まで未だに独身のあの人は性格に何か問題があるかもしれない」という言い方をする社員を見かけたことはありませんか?
そして、制度のことを考えると、「仕事をする上でプライベートなことは関係ないからカミングアウトは不要」とは言えません。
例えば、皆さんの勤務先の忌引き取得のルールはどのようになっているでしょうか?
多くの企業では「3親等まで」などの制約がついていると思います。
じゃあ、いま日本の法律上"家族"になることができない同性パートナーが亡くなった場合、忌引きは取れるでしょうか?
他にも、同性パートナーの母親が倒れて介護が必要になった時、その社員は介護休暇を取れるでしょうか?
もちろん法律に関わる分野のため、一企業では対応しきれないことも多くあります。
しかし、企業の努力によって多様な社員のさまざまなライフスタイルを今よりも、そして他社よりも、社員のことをサポートしていくことは可能です。
企業としてどんなことが出来るのか、どんな労働環境ならLGBTQ+当事者の若者が安心して就職して、のびのびと働きそれぞれのスキルを発揮することが出来る
のか。
私も日々悩みながらではありますが、このコラムを読んでくださっているような、社員がより活躍できる労働環境にしようと考えている熱意ある企業の皆さま
と、今後も一緒に考えていけたら嬉しいです。
最近の小泉の活動
大阪観光局、東京観光財団のLGBTQのアドバイザーとしての活動
●最近の小泉について
・大阪観光局、東京観光財団のLGBTQのアドバイザーとして活動をしています。IGLTA世界総会2024大阪開催が決定し、多くの地域からLGBTQツーリズムを通して、日本の観光を推進したいという動きが始まっています。
・スペイン政府観光局からの要望でコンベンションに参加しました。
・7月末から3週間ほどで、ブラジル、プエルトリコ、アメリカに行く予定です。
こちらは、大阪観光局からの依頼や自分自身がLGBTQのコンベンションに出るために海外に出向いております。
●小泉へ質問
質問1
IGLTAとは
回答1
日本語で『国際LGBTQ+旅行協会』と呼ばれる団体の名称です。
1983年から、「LGBTQツーリズム」を普及するために作られたアメリカの旅行業団体で、全世界80カ国2000名以上のメンバー(旅行会社・ホテル・観光局・インフルエンサー・メディアなど)によって構成されています。
この団体のメンバーに参加することにより、「LGBTQフレンドリー」であることを表明する場にもなっています。
残念ながら、この世界の中には「同性愛者である」ということで差別・偏見を超え、殺されてしまう国もあり、どのようなセクシャリティを持つ人であっても安全・安心に楽しめる場所を広げていくというのが、この団体の使命です。
私、小泉はこの団体のメンバーであり、アジア全体のアンバサダーとして
「LGBTQツーリズム」を広げ、その地域をプロモーションする役割を任命されています。
質問2
2024IGLTA総会が大阪開催になった経緯と効果は?
回答2
IGLTAの総会とは、年に1度、世界で唯一行われている「LGBTQツーリズム」の旅行博です。
開催場所については、例年、アメリカで開催して、次の年は海外で開催し、次の年はまたアメリカ…というようにローテーションによって毎年行われています。
総会には、約500名から1000名ほどのIGLTA会員や「LGBTQツーリズム」に興味のある方が参加し、
開催される都市はおのずと「LGBTQフレンドリー」と認識され、その中にはメディアやインフルエンサーも多く含まれるため、その地域についての外部発信が多くされていきます。
そのため、各都市が誘致委員会などを設置し、「IGLTA総会の開催誘致」を積極的に行っています。
今回、大阪に開催が決定した経緯としては、5年前から計画的に開催誘致を行っていたからです。大阪には、LGBTQに限らず、ダイバーシティとして誰が来ても楽しめる観光都市・大阪を作っていきたいという目標があります。
その中には「大阪万博」「IR」などもある中で、ロードマップを敷いて目標を掲げ、「IGLTAの総会をこの年に持ってきたい」という確固たる信念がありました。
5年間の中で、他の都市がどのように誘致したのかをしっかりと勉強し、小泉自身もIGLTAとの話し合いを重ねてきました。
金融情勢や、受け入れ体制整備のために年に数回セミナーを開催したり、メディア・インフルエンサー・旅行会社の方を大阪に招待しプロモーションを行ってもらうなど、さまざまな角度から誘致に必要な条件を積み重ねていき、最終的にはスペインと大阪の一騎打ちで大阪への誘致が決定いたしました。
誘致できた細かな要因としては、アジアでの初開催を皮切りにIGLTA自身が、IGLTAの名前をアジアへ広げたいという想いなどもありましたが、一番の決定打になった要因は、大阪がIGLTA総会を誘致したいという強い想いがあったことだと思います。
質問3
LGBTツーリズムとは
回答3
世界的に見ても、LGBTQの当事者(当事者カップル)は旅行に行く頻度が高いと言われています。
全世界の旅行者の割合でもLGBTQが占める割合は10%程で、何度も旅行に訪れるリピーターも多くいて、数字としても旅行が好きであるという結果が出ています。
その理由として挙げられていることの中に、LGBTQの当事者はダブルインカムノーキッズ(子どもを持たない共働きカップル)が多く、自分たちにかけられるお金や時間が多いと考えられています。
また、マーケットとして、通常のお客様よりも1.5倍のお金を使う層(富裕層)であるという統計も取れています。そのため、世界中の地域からそのマーケットを取りたい、IGLTAの総会を誘致したいという流れになっています。
動画もぜひご覧ください。
最近の屋成の活動
LGBT-Allyプロジェクト、過去最高の40社が参加
●最近の屋成について
・ LGBT-Allyプロジェクトでは、過去最高の40社が参加しました。4月に京都と東京、6月に名古屋のレインボープライドにて、パレード参加やブース出展などを行いました。また、今後は9月札幌、10月大阪、11月福岡のレインボープライドに参加予定です。
・6月のプライドマンスにて、過去最高の30回以上の研修・トークイベントを企画しました。多くの企業でのLGBT研修、映画鑑賞後のトークイベントなどを行わせていただきありがとうございました。
・7月からは申込みがはじまったPRIDE指標に関して、問い合わせやサポートなどに加えてLGBT理解増進法や最高裁判所の判決に関しての企業での取組みについての問い合わせが増えている。
●屋成へ質問
質問1
LGBT施策(相談窓口)サポートってどんな風に行っているの??
回答
大きく分けて2つの機能を設けています。
・社外の相談窓口として、従業員の方から直接相談を受ける窓口としての機能
・企業側の担当者からLGBTの方へ配慮した制度や設備について相談を受ける窓口としての機能
を行っています。
最近、多く相談を受ける内容は、
「(パートナーシップなどに対して)何を持って、証明とすれば良いのか」ということや、
「LGBT当事者に寄り添った制度・設備を作りたいが、何から始めれば良いのかわからない」
という相談が多くあります。
今までに培った知識・経験をお伝えしつつ、一つ一つの企業の業種や業態などに合わせて、また悩みを抱えながら働く従業員の方の気持ちに寄り添いながら、一緒に制度や設備を整えるお手伝いをしています。
質問2
研修のゲストスピーカーについて
回答2スピーカーとして出ていただく方は、LGBT関連のイベントで出会った方やご紹介をしていただいた方を中心にお声がけさせていただいています。
当事者として、学校・社会の中でどのような経験をしてきたのか、どのような想いを抱いていたのかなど、経験の度合いなどを踏まえて、お話していただくようにお願いしています。
もちろん、研修を行う企業側の要望・目的に合わせて、スピーカーをコーディネートしておりますので、ぜひ一度ご相談ください!
質問3
新たに取り組もうとしている事
回答3
LGBT-Allyプロジェクトを拡充していきたいと考えています。
例えば、近々でいうと、コラボイベントを企画しています。
今回ゲストとしてコラムを書いていただいた「りぃな」さんが運営に携わる、LGBTQ+の若者のための居場所「名古屋あおぞら部」とコラボをして、若い人たちが抱える「就職活動の不安」をAllyプロジェクトに参加している企業と一緒に解消していこうという内容です。
このように、Allyプロジェクトに参加する企業の方と一緒に何かをやることでみなさんがより働きやすい、より過ごしやすい社会になるための一助となればと考えています。
動画もぜひご覧ください。